印象記『中国・江南の春』

第4回 蘇州の名園をめぐって 〔その3〕
旅の第2日目 続き
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【第2日 蘇州滞在・終日市内見学】その3
1999年4月11日(日) 12,136歩〔一日で歩いた歩数〕
【蘇州刺繍研究所】
拙政園を出て14時15分に、景徳路の小運河べりにある蘇州刺繍研究所に到着した。当初の見学予定には入っていなかったが、今日の見学予定がスムースにこなせて、時間に余裕を生じたのでスルーガイドの尤君が添乗員の岩東さんやバスドライバーと相談して立ち寄ることになったらしい。
かねてテレビ番組で、繊細・華麗な中国刺繍を見て、一度は実物を見てみたかったので実にラッキー。
2600年という長い刺繍工芸の伝統を持つ蘇州は、湖南刺繍、四川刺繍、広東刺繍と並ぶ有名な中国の四大刺繍産業の中心地である。
中に案内されると、小体育館とでも形容できるほどの広いフロアに、何台もの大きな刺繍台が配置され、それぞれ若い女性研究員が、手本の図柄を見ながら20〜30cmほどの長さに切られた極細の刺繍糸から色を選んでは針に通し、一心不乱に針を刺していた。
まるで精密に描かれた油絵のような刺繍
案内してくれた所員の説明では、近郷近在から研修に来ているらしく、10年もの研鑚を積んだベテランは、両面異色異物…例えば一つの面は狆、他の面は三毛猫という風な高級な刺繍…に取り組み、初心者は少しく太い刺繍糸で簡単な図柄を刺しているという。向こうが透けて見えるほど薄地の絹織物に、色糸で刺すのだから引きつらないように力加減が難しかろうと思う。
ここのシステムは、私が1998年に訪れたトルコの奇勝カッパドキアで見学した公営の絨毯工場によく似ている…と思い出した。そこでも近郷近在からかなり離れた村からも、若い女性が研修に来ていて、一心に絨毯を織っていた。
前述の「両面異色異物」は最も難しく手間もかかるので、出来あがりは何十万から何百万円もするというが、一つの作品を仕上げるまでに何ヶ月もかかり、時によると2年もの歳月に及ぶと言う。
両面乱針刺異物人物像と並んで、蘇州刺繍の究極の逸品とされている。簡単なものでは単面刺繍、乱針刺繍、両面同一物刺繍などもあるが、蘇州の刺繍は極細の絹糸を使うので表面が平滑で輪郭が整い、繊細緻密。しかも日本の刺繍がデザイン的であるのに対し、ここで見た作品の多くは、写実的、絵画的であるのが特徴。
私がテレビで見て感嘆した、犬と猫を同じ輪郭で刺した「両面異色異物」の他に、南画風の景色や伝説上の人物像なども、驚くほど緻密な色使いであった。
刺繍工房の見学を終えると、作品の展示販売の様子を見学。極めてたくさんの製品が展示されていたが、いずれも私風情では手の出る値段ではなかった。
日本画のようにも見える精緻な刺繍
向こうが透ける薄い絹地に施した牡丹の花の刺繍
やはり唸るほどの作品は蘇州で二泊した竹輝飯店の二階にあった伝統工藝作品を陳列・販売したいた店の方にもあったが、値段も小さな物で日本円に換算して70万円、大きな作品では200万円…とても手の出るものではなかった。
14時55分 刺繍工場を出発。
【 宝帯橋 】
15時25分 宝帯橋に到着。
蘇州から10キロ南に行った所に有る「京杭大運河」(北京から杭州を結ぶ全長1749キロの運河)にかかる石橋としては全長317メートルもあり、中国最長の石橋である。53のアーチ式橋桁が優美。
京杭大運河にかかる宝帯橋
15時30分 宝帯橋を出発。
15時50分 竹輝大飯店に帰着。1077号に入る。風致保存地区の蘇州では建物の高さに制限が有り、高層建築は建てられないが、4つ星ながら結構な建物。
18時00分 ロビーに集合してバスで近くの「南国賓館」という三ツ星ホテルのレストランに行き、江蘇料理の「松鼠桂魚」などで夕食。蘇州の有名な家庭料理だという振れ込みだが、なんだか「名物に美味いものなし」なんていう言葉が頭の片隅をよぎるのだった。
【宿泊:竹輝飯店】