◆Victor Bailey/Low Blow◆
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Victor Bailey
Bill Evans
Omar Hakim
Dennis Chambers
Jim Beard

1.Low Blow - 3:11
2.Sweet Tooth - 5:58
3.City Living - 6:11
4.Do You Know Who/Continuum - 5:15
5.Knee/Jerk Reaction - 7:25
6.She Left Me - 5:03
7.Graham Cracker - 5:40
8.Baby Talk - 5:50
9.Feels Like a Hug - 5:26
10.Brain Teaser - 7:20
1999年作品


● Victor/ ESC/VICJ-60412
●Musicians
B.Key.Vo.Victor Bailey
Ds.Omar Hakim(1/2/4/6)/Dennis Chambers(3/5/7/8/9/10)
Key.Jim Beard/Michael Bearden/Henry Hey
G.Wayne Krantz
Ss.Bill Evans/Kenny Garrett
●コメント●
1989年の1stリーダー作「Bottom's Up」(Atlantic)から10年の時を経て発表されたVictor Baileyの2ndアルバムです。Weather Report以来、どちらかというと硬派なJazz路線を歩む本格派エレクトリック・ベース奏者として多くのミュージシャンからその力量を高く評価されてきたBaileyもスムース・ジャズ全盛の1990年代はリーダー作を発表する機会になかなか巡り合えないという、在る意味不遇な時代を過ごしてきたわけですが、ようやく念願かなっての2ndリリースとなったわけです。Bill EvansやMichael Breckerといったサjックスのビッグネームのバンドやレコーディング等でもいいプレイを聴かせてくれていましたし、「Bottom's Up」もお気に入りのアルバムであっただけに10年間待ちに待った新作のリリースでした。そして嬉しいことに、相変わらずの硬派な路線を頑なに守り続け真摯に音楽作りに邁進するBaileyの姿勢は嬉しいかぎりです。そして集まったメンバー達も御馴染のOmar Hakim/Dennis Chambers(Ds)Jim Beard(Key)Bill Evans/Kenny Garrett(Ss)といったBaileyと親交の深い実力派が顔を並べ、意欲的なアルバムを作り上げています。

特にWeather Report以来の長いつき合いとなるOmar HakimやBill Evansグループでの同僚Dennis Chambersというタイプの異なる二大ドラマーとの共演は、その個性的なグルーブ、プレイに応じて使い分けていて、その二組のリズム・コンビを聴き比べてみるだけでもなかなか興味深いですね。そしてポップな顔もチラチラ海馬店ながらもアルバム全体を貫いているのはこまやかな音楽に対する配慮とJaco Patoriusへの深い敬意です。Weather ReportでBaileyの前任者であったJaco Pastoriusは天才肌の狂気すらはらんだミュージシャンでしたが、実直そのものといったBaileyのJacoへの敬愛の念は4でのJacoの名曲「Continum」に歌詞をつけての演奏にとてもよく現れています。美しく暖かみに満ちた豊かなそのベース・トーンと確かなテクニックとJacoへの想いに満ちた素晴らしいトラックでなかなか感動的な演奏を聴くことが出来ます。その演奏スタイルでJacoを真似ようとするベーシストが多い中、Baileyは音楽する心を継承しようとする正統派の、本物の姿を感じさせてくれるベーシストといっていいのではないでしょうか?身体の奥底から迸るような強力なファンク・グルーブも個性的ですが、スリリングなジャズのスピリットを忘れない、そんな気骨の在るミュージシャン魂のようなものを感じさせてくれるBaileyのスタンスにはもろ手を挙げて賛成、というのが私の正直な気持ちです。

1.いきなりOmar Hakimのキレのいいドラムスに乗せてVictor Baileyのベース・ソロ風のテーマ&スキャットのユニゾンの淀みないプレイが翔びだしてきて、落ち着いた美しい響きのコードと対照的なスリリングな雰囲気を醸し出してきます。これにはアルバム冒頭からやられた、といった所です。ハッタリでも何でもなく、実にしっかりした見事なセンス&テクニックで聴かせてくれます。OmarとBaileyの唐見方も緊張感があって、アルバム全体に対する期待感も否が応でも高まっていきますね。まだまだ余裕すら感じさせる流麗なテクニックには、Baileyの測りしれない実力を感じさせられてしまいますね!メチャメチャさりげない、でも超・カッコいいオープニング・ナンバーです。

2.Omar/Baileyの弾力感に富んだしなやかなリズムが爽快なファンキーなナンバーです。この曲ではテーマからKenny Garrettのソプロノが大きくフィーチュアされています。モーダルな響きのテーマと心地よく弾むビートのとりあわせが実にいい感じです。アルト以上に音を選びながら、しかしColtrane的な音色・フレーズを巧みに織り交ぜながらのよく歌うソロはGarrettの実力を遺憾なく発揮したものといえるでしょう。そしてそれを引き継ぐのはOmarのドラムス!グルーブをしっかりと保ちながらも、Omarならではのキレ味抜群のソロ・プレイで遺憾なくそのテクニシャンぶりを発揮しています。ここではBaileyはグルーブ・メイクに徹していてなかなか渋いですね。

3.ポップなメロディーをワウを使ったBaileyのベースがリードを取っています。ミディアムの弾むリズムなのですが、重量感を感じるのはDennis Chambersの重量級ドラムのためでしょう。ここではBill Evansのソプラノがフィーチュアされています。Garrettとは一風違った、Evansの個性がよく現れたプレイを曲によってうまく使い分けるBaileyのセンスもなかなかのものですね。Jim Beardのジャジーなエレピ・ソロもちょっとHancock的なアプローチでかなかカッコいいですよ。そしてWayne Krantzのギターもなかなかの健闘を聴かせてくれています。

4.Jaco Patoriusの「Continum」に歌詞をつけてBaileyがベースとユニゾンで歌っています。静かに心からのJacoへの敬意、感謝の気持ちがこめられた素晴らしい演奏が収められています。Jacoに大きな影響を受けながらも常にJacoの幻影と各党死続けることを運命づけられたWeater Reportでの日々から約15年の時を経て、Baileyの心の中のJacoの位置や大きさはどのように変わっていったのでしょうか?繊細なドラミングでBaileyを引き立てるOmarのドラミングも実に素晴らしいですね。静かにその聞きなれたメロディーに包まれながら、JacoとBaileyの顔が交互に脳裏に浮かびます。ほのぼのとした気持ちに浸りながらもじーんと目頭が熱くなるのを感じてしまい舞います。未聴の方には是非とも聴いていただきたいトラックです!

5.Jacoを彷彿とさせるフレーズでぐいぐいとドライブ感を感じさせるナンバーです。軽快にテクニシャンぶりを発揮するChambersですが、やはりそのずっしりとした重量感を感じさせるドラミングは「柔」のHakimと「剛」のChambersといった印象を強く感じてしまいます。Baileyの繰り出すベース・パターンはいかにもJaco的なのですけれど、決して押し付けがましくないのは、きっとBaileyの個性から来ているのでしょう。ここでもBeardがエレピで見事なソロを聴かせてくれます。弾むリズムに乗せて実に躍動感溢れるChick Corea的なソロを展開していて聴き応え十分です。そしてKrantzのソロも3以上に伸び伸びと歌い上げていていいですね。エンディング近くのKrantz/Beardの掛け合いもなかなかスリリングですよ!4とは対照的ながら、やはりJacoを感じるナンバーになっています。

6.再びEvansのソプラノをフィーチュアした美しいバラード・ナンバーです。Baileyの和音を巧く活かしたバッキングがとても印象的です。そしてここでのブラシを使ったOmarのバッキングもなかなか見事です。しかし何と言ってもBaileyの暖かい伸びやかなトーンでのギターライクなプレイです。フレットレスをまるでクラシック・ギターのように弾きこなし、それに歌心をしっかり込める、なかなかそう簡単にはいくものじゃないでしょう!ソロらしいソロというのはないのですが、EvansもBaileyも実に見事な素晴らしいプレイを聴かせてくれています。

7.Chambersのたたき出す思いビートに乗せて、これも重く粘っこいBaileyのスラップが活躍するファンク調のナンバーです。ここではKenny Garrettのソプラノがフィーチュアされています。この人、ソプラノだと派手で単調なブロウをあまりしなくてとてもいいですね。よく歌うとても知的なプレイがとても印象的な素晴らしい演奏です。Baileyのスラップというのは、結構派手目のあざとい音色で演奏していても決して気気疲れしないのは本当に不思議な気がしますね。何処かBeatlesの「Come Together」を連想させるベースのフレーズで、アルバムでこの曲を取り上げているMarcus Millerのプレイを思い出しちゃいましたが、プレイも雰囲気も全くと言っていいほど対照的なBaileyとMarcus、ほぼ同年代のベーシストとしてこれからも一層の活躍を期待したいものですね。

8.Chambersがブラシで繊細に4ビートのリズムを刻み、Beardのエレピがスムース・ジャズ系の4ビートを思わせる音色ながら、しっかりとJazz特有の「歌」を感じさせるプレイで一線を画しています。Baileyのベース・プレイは一体何をどうしてプレイしてるのか、とても不思議なトーンでアコースティック的な4ビートのソロを聴かせてくれています。「スムース・ジャズ的なストレートな物はやりたくなかった」とBailey自身が行っているだけ在って、その深いJazzへの愛情、愛着をしっかりと感じさせてくれるプレイで、ここでのバンドのプレイは落ち着いた中に男のダンディズムを感じさせるようなカッコ良さが感じられますね。

9.ゆったりした大きなリズムの上に、とても優しさを感じるテーマが乗ったメロウな雰囲気を持ったナンバーです。Bill Evansのソプラノが叙情的な旋律をクールに、しかし豊かな表情を持ったプレイで歌い上げています。この人のソプラノの美しさは他のプレイヤーとは際立った何か知的なものを感じさせられますね。そしてBaileyはここでもまるでギターのように楽器を操って、とんでもないプレイを聴かせてくれます。にもかかわらずそれがイヤミにもならず決して押し付けがましくもなく、さらっと自然に聞こえてしまうのがBaileyというベーシストの際立った個性のように感じられますね。

10.ラストはChick Coreaを思い起こさせるようなスパニッシュ感覚溢れるナンバーです。テーマからBaileyのベースがリードを取っています。Baileyのベースの物凄いプレイに唖然としているとKrantzの実に豊かな発想のギター・ソロが翔びだしてきて、やはりこのとんでもないメンツと一緒にフィーチュアされているだけのことはありますね!かなりのつわものです。そしてその後スキャットとのユニゾンでのBailleyの超絶技巧&歌心満点のプレイにただただ唖然呆然としているうちにアルバムは幕を閉じていきます。後半でのChambersのドラム・ソロもこれ、かなりの聴き応えで、その後すべりこんでくるBeardのエレピ・ソロでのバックでのインタープレイもまた素晴らしいです!アルバムのラストにふさわしい聴き所満載のトラックです。

プレイ・スタイル同様、派手に表舞台で活躍するMarcus Millerとはとても対照的な存在に感じるBaileyですが、その熱いミュージシャン魂はMarcusに一歩もヒケをとらないどころか頑固一徹信じた道を突き進むひたむきさにはとても交換のもてるミュージシャンです。Will Leeとはまた違った意味で物凄く職人気質を感じさせてくれる大好きなスーパー・ベーシストの一人です。1stの「Bottom's Up(1989)」、3rdの「That's Right(2001)」同様、長く愛聴盤となるだろうすばらしい出来栄えのアルバムです。



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