Tom Scott & The L.A.Exoress/S.T.
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Tom Scott
Joe Sample
Larry Carlton
Max Bennett
John Guerin

1.Bless My Soul
2.Sneakin' in the Back
3.King Cobra
4.Dahomey Dance
5.Nunya
6.Easy Life
7.Spindrift
8.Strut Your Stuff
9.L.A. Expression
10.Vertigo

1973年作品


●Epic/Ode/77021(LP)●
●Musicians●

Ts.Ss.Key.Tom Scott
G.Larry Carlton
Key.Joe Sample
B.Max Bennett
Ds.Perc.John Guerin
●コメント●
 
私も学生当時はSax吹きの端くれでしたから、人気Saxプレーヤーの一人として一通りコピー等もしてみたのですが、その音遣いや間に独特の個性があるというタイプではないように思います。音色はブライトで伸びやかなストレート・トーンで、強いて言えばそれが彼の最大の特徴かもしれません。そして「Blow It Out」を聴いたときに、この人の魅力がいわゆる「B級音楽の魅力なんだ!!」と思ったのをはっきり憶えています。この人の音楽には「暗さ」「陰鬱」とか「内省的」「シリアス」とかいう言葉がまるで当てはまらないような気がするからです。少なくとも初めて聴いた「N.Y.Connection」や「Blow It Out」にはエンターテインメントに徹した彼の姿が鮮明に鬱出されていたように私には思えたものです。芸術音楽だけが音楽の全てではありませんし、受けての存在抜きにしてしまえば、それは単なるマスターベーションになってしまうことをTomは十分に私達に伝えてくれます。私の大好きなDavid SanbornやMichael Breckerといったプレーヤーのアルバム以上に聴く頻度は高いかも知れません。彼の音楽には素直に「美しい」「陽気で」「ハッピーな」と感じる物が多く、またリズム的にも決して重すぎず軽すぎず、そしてグルーブのある物が多いようですね。ですから私個人としては非常に親しみを覚えるミュージシャンでもあるのです。

 1960年代にはJazzの名門レーベルImpulseからアルバムを発表したものの、あまり評判にはならなかったものの、この1973年に録音された本作では、Crusadersとはまた違った感性を打ちだして見せたのです。CrusadersがJazをベースにしたファンク・サウンドを売りにしていたのに対し、同じJazzをルーツに持ちながらもあまりそれを感じさせず、ファンクというよりもRock的な感覚を、このL.A.Expressには感じるのです。また興味深いのが、このアルバムのメンバー5人のうち3人がCrusadersのメンバーもしくはサポート・メンバーであるという点です(当時)。Joe Sample(Key)は結成以来のメンバーですし、Larry Carlton(G)とMax Bennett(B)はレコーディング&ツアー・メンバーとして参加しています(後にCarltonは正式メンバーになりますが)。ライブの名盤「Scratch」にはこの3人がすべて参加していますね。そんな部分からもサウンドに確かに類似点はあるものの、受ける印象は全くといっていいほど違ったものになっています。プログレッシブ・ロックや新しいJazzムーブメントの影響を巧みにエンターテインメント的に表して見せたのはこのL.A.Expressが最初のバンドだったのかもしれません。少なくともこの時点ではCrusadersよりも高い革新性/創造性を発揮していたように思います。そしてStuffやLee Ritenour & Gentle Thoughtsがブレイクする前に既にTomのサウンドの方がその形を提示していたことを忘れることはできません。常に時代を意識し続ける彼ならではの磨ぎすまされた感性の旅は、このアルバムから始まったのだと思います。

 1.最初の音色を聴いただけでCarltonと判る音色と、今では古臭く感じる8ビートのリズム、何かとても懐かしい響きを感じるナンバーです。少しCrusadersに似たメロディー・ラインもありますが、そこはJohn Guerinの活きのいいドラミングで違いを明確に打ちだしています。Joe Sampleのエレピのノーン&プレイはCrusadersの物とほとんど一緒なのですが、CarltonはかなりRock色を出しているようです。Tomのテナーは伸びのある高温を活かしたシンプルなプレイで、現在も変わらぬそのスタイルには驚かされます。

 2.ブルージーでやや陰のあるメロディーを持ったジャジーなテイストを持ったナンバー。Sampleのエレピ、Tomのテナー、Carltonと各々がソロを取っていますが、Sampleの訥々とした味わいも、Tomのファンキーなブロウも、そしてCarltonのR&Bテイスト満点のプレイも30年前に既にしっかりと形作られていた個性なのが十分わかる個性的なソロで、とても興味深く耳を傾けてしまいます。

 3.どこかオリエンタルなムードを漂わせたナンバーですがJazz的な要素とポップなRock感覚が交互に顔を除かせるリズミカルなナンバーです。ここではCarltonの自由奔放なCrusadersでは見せないテンションの高いスリリングなプレイが印象的です。続くSampleのソロもなかなか気合いのは行ったエレピ・ソロですが、ここでは圧倒的にCarltonのソロの存在感が勝っています。Tomはここではテーマを吹くのみで全くソロをとっていません。バンドを意識した音作りがとてもよく伝わってきます。

 4.テナーの巨人John ColtraneのナンバーをRock/R&B/Funkテイストなアレンジで全く違った味わいの曲に聞こえる程です。ブルースを基調にしたナンバーで、Sampleのブルージーでジャジーなソロが先発です。Sampleにしては珍しくかなり熱く燃えるようなソロを聴かせてくれます。ここでもTomはソロを取っていません。

 5.いかにもTomらしい軽快なテンポのナンバーです。ここではTomの根性の入ったテナー・ソロが大きくフィーチュアされています。特に前半のGuerinと二人だけでのスリリングな展開はCrusadersにはちょっと見られない展開ですね。ここでもSampleのエレピ・ソロがフィーチュアされていますが、リズミカルでブルージーなフレーズの繰り返しを多用しながらもJazzっぽい展開を聴かせてくれます。他の曲でもそうですがGuerinの攻撃的でRockな感覚のドラミングがバンドのカラーを示しているように感じます。

 6.CrltonのギターとSampleのエレピが作り出すドリーミーな空間にTomのソプラノが滑り込んできて絶妙にブレンドされた極上の味わいを感じてしまいます。短いナンバーですが、実にいいです。ただドラムとベースのプレイはちょっと平凡な感じがしてしまいます。

 7.このナンバーも小気味のよいリズムに乗せてとても美しい響きを伝えてくれるナンバーです。軽快で故じゃれた雰囲気のCarlton & Sampleのバッキングに乗せてフルートやピッコロを使ったアンサンブルを聴かせてくれています。これといったソロはフィーチュアされていませんが、延々と繰り返されるパターンの繰り返しにバンドのグルーブを伝えようというTomの意図が表れているのかもしれません。曲によって色々な聴かせ方を十分に考えているTomのサービス精神を感じてしまいますね。

 8.とてもCrusadersに近い雰囲気を感じるのですが、やはりポイントはドラムの違いのようですね。ここではCarltonの短いながらとても切れ味の鋭いブルージーなソロに先導されてTomがファンキーなブロウを聴かせてくれますが、ちょっとおどけたようなリズムとメロディーは彼等ならではのものでしょう。

 9.ジャジーで幻想的な雰囲気から、Rockしているハードボイルドな感覚へと移り変わる不思議なナンバーです。ここでもTomのガッツ溢れるテナー・ソロがフィーチュアされていますが、その後ろで強烈にプッシュするGuerinのドラムがしっかりとTomを煽っています。続くSampleのエレピ・ソロはフレーズ的にもかなりJazz的な雰囲気に満ちていて、Crusadersでのプレイとは一味違ったテンションの高さを感じます。とにかく凝ったアレンジとGuerinのドラミングが印象的なナンバーです。

 10.軽快に疾走するリズムにのせていかにもTomが好みそうなフレーズの繰り返しによるテーマを基調にした、スリリングでパワフルなRockを感じさせてくれるナンバーです。曲の構成も変化に富んでいますし、幻想的なメロディー、アグレッシブなドラミングはどこかBilly Cobhamを意識しているかのようにもきこえて面白いですね。局の中に全く雰囲気の異なる二つのモチーフを用いる手法はこのL.A.Expressのお家芸ともいえる物ですね。ここでもTomは豪快なテナー・ソロを聴かせてくれますが、どんなに盛り上がっていっても決して難解な雰囲気を与えるようなモダンなスケールは使わないのがこの人のプレイの特徴でもありますね。

 この「L.A.Express」「Tom Cat」のL.A.Express名義のアルバムと「New York Connection」といったTom名義の作品の間には随分と違いがあるように感じられますが、基本的な彼の演奏スタイルは今日に至るまで、ほとんど変わる事はありません。様々サウンド・フォーマットやミュージシャンを使って、あの手この手と私達を楽しませてくれています。そして数々のセッション・ワークでも聴かれるように、他のミュージシャンの作品でも伸びやかで艶やかな音色で歌心十分なブロウを聴かせてくれるTom。魅力的で聴き手を飽きさせないアルバム作りの巧さはホーン・プレーヤーの中では群を抜くセンスと才能を持ったミュージシャンです。Max Benettのベースは時代のせいか、ちょいと古臭く感じるのもあるのですが、ややワン・パターンなラインの作り方が気になってしまいます。それと早いテンポの曲では構成がかわる時のアンサンブルにやや乱れがあるのですが、Benettがややモタついているようにもきこえてしまうのですが・・・・。



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