◆Tom Schuman/Extremities◆

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Tom Schuman
Bob Berg
Will Lee
Dave Weckl
Eddie Gomez

1.Extremities
2.Mood Swing
3.Palisades Parkway
4.Loving You
5.Skywriter
6.To B.E.
7.Crystal Lane
8.Front Seat Reservation

1990年作品


GRP/GRD-9625

●Musicians

Key.Tom Schuman
G.Steve Love
B.Will Lee/Eddie Gomez(5/6)
Ds.Dave Weckl/Terry Clarke(5/6)
Perc.Roger Squitero
Ss.Jay Beckenstein(4)
Ts.Bob Berg(5)
Tp.Jon Faddis(2)


■コメント■

 Tom Schumanというキーボード奏者については、かつて人気を博したフュージョン・グループSpyro Gyraのメンバーとして活躍していた事くらいで、正直ほとんど知らないに等しい。1980年代後半から1990年代初頭にかけて私がデジタル・シンセやサンプラー、シーケンサー等を購入して色々なキーボード奏者の音楽を三校にして色々と試行錯誤を繰り返していた頃に購入したアルバムの一枚が本作という訳なのだ。正直リリース当時の印象はほとんどノコっておらず、次々と現れては消えていくフュージョン・サウンドの中の一つ、といった位にしか捉えていなかったのだろう。まあ、そう言ってしまえば確かにそうなのだが、今改めて久しぶりに聴き直してみると、これはこれでなかなか面白く聴ける部分も結構あったりするのだからわからないものだ。基本的にはデジタル・キーボード、シーケンサーを使っての同期サウンドなのだが、クレジットを見ると私のお気に入りミュージシャンの名もちらほら。Will Lee(B)やDave Weckl(Ds)は色々な所に顔を出しているのでそう珍しくはないものの、Eddie Gomez(B)やTerry Clarke(Ds)、そしてJohn Faddis(Tp)、Bob Berg(Ts)といった所謂Jazz畑のミュージシャンの名前まで見えるのだからちょっと意外な感じで驚かされる。

 アルバムとしては、あれもこれも詰込んだような印象は拭えないが、Schuman自身のキーボード・プレイはなかなかどうして、しっかりとしたテクニックに裏打ちされたものだ。シンセサイザー、オルガン、アコースティック・ピアノと多彩なキーボードを実に安定したプレイで弾きこなしている。惜しむらくは一本しっかりと芯の通った個性/ポリシーのようなものが感じられない分、とりとめのない「あれもこれも」的な感じになてしまっているのが残念だ。あくまでも音から感じた印象ではあるが、プログレッシブ・ロック系のキーボード奏者に多くみられるクラシック音楽への傾倒、そして「超絶技巧主義」(笑)がそのプレイの端々から見てとれる。いっそアルバム全編をそれで通してもらった方が聴き手としてはすっきり納得しやすいのだが、そこは理解していても止められないミュージシャン気質の成せる業なのか(爆)。とにかく難しいことを考えずに聴いている分にはなかなか楽しめるアルバムだと思う。特に同期サウンドでのドラミングには定評のあるDave Wecklや、同期リズムにファンキーなグルーヴを吹き込むWill Leeのベース・プレイの貢献度は大だ。そして数多くのセッション・ワークをこなしているもののソロをフィーチャーされることは極めて稀なJon Faddisのトランペット・ソロ、Mike Stern(G)との双頭バンドでまさに絶好調期にあったBob Bergのテナー・ソロがフィーチャーされているのも見逃せない。

1.決め事バシバシで、いかにもデジタル鍵盤を駆使したサウンドに彩られたファンク調のナンバーだ。楽曲もアレンジもなかなかカッコいいのだが、もう一つ何かが穂強いところだ。オルガン音色のシンセのプレイもやはりギターの音圧には劣勢で、やはりここは本物のハモンドで勝負して欲しかった所だ。音色、特にベンダーの使い方は如何にもChick Corea的な部分が強く出ていて面白い。Weckl/Leeの協力リズムと、終盤にフィーチャーされるSteve Loveのギターもなかなかいい!

2.ドリーミーな雰囲気を持ったいかにもフュージョン的な感覚のナンバー。全体を通じてずっしりと重量感のあるWillのベースが効いている。ここではSE的にも、そして4ビートに転じてのFaddisのソロがフィーチャーされている。この人の本来の実力を知る者としては、もう少し大きくフィーチャーして欲しかった気がする。やはりここでの最大の聞き所はSchumanのシンセによる超絶技巧ソロ(笑)だろう。とにかくメチャメチャ巧いというのは十分に判るが、作編曲もソロも決して悪くないのにイマイチ食い足りない感じがノコってしまうのが残念だ。

3.Spyro Gyra的というか、これまた「如何にも」といった感じのフュージョン・ナンバーだ。フュージョンが悪いという訳ではなく、そこにJazzを感じたり、バンドのバイブレーションを感じる物が存在していれば、例え類型化された音楽でも構わないのだが、少々子細工に走りすぎてそういった部分が稀薄になってしまっているように思える。アコースティック・ギターの響きを活かしたアレンジも悪くないのだが、何処か「CASIOPEA」的な感じがしてしまう。Schumanのピアノ、シンセ・ソロも健闘してはいるがLoveのアコギ・ソロの方に軍配を挙げざるを獲ない。ただ、ここでもWeckl/Leeのリズムはメチャメチャ格好良いのは言うまでもない。

4.故ミニー・リパートンの永遠の名曲「Loving You」だ。イントロでは一瞬「オヤ?」と思わせる部分もあったが、基本的には非常にシンプルに原曲に忠実なアレンジが施されている。BeckensteinのソプラノによるメロはやはりSoyro Gyraの顔だけあって特徴はあるが、音色にそれほどの魅力は感じないし、終盤のソロもそれっぽ過ぎてあまりにも平凡な感じがする。昼間部でのSchumanのピアノ・ソロも決して悪くはないが、やはり楽曲の協力さ故か、その枠内でこじんまりまとまってしまっているのが惜しまれる。

5.他の楽曲でもChick Coreaからの強い影響は随所に見てとれるが、ここでは楽曲だけでなくサウンド全体、はたまたソロの構成にまでその強い影響が現れている。それが良くないというのではない。個人的にはアルバム中でこのトラックが一番のお気に入りなのだから(笑)。如何にもGaddライクなWecklのドラミングといい、Gomezのランニング・ベースといい、Chickの独特の雰囲気まで感じてしまうから驚きだ。Schumanのピアノもなかなかパワフルでいい。Bergのテナー・ソロもエキサイティングで本領を発揮している。意外にも思えたのはTerry Clarkeのドラミングが終始とてもGadd的なプレイである点だろう。クレジットを見るまではてっきりWecklが叩いているとばかり思っていた位だ。ともあれアルバム中ノベスト・トラックはこの曲だ決まりだ。

6.今度はScguman/Gomez/Clarkeによるピアノ・トリオ演奏だ。クラシカルなソロ・ピアノ・パフォーマンスの後、軽快にスウィングするワルツのリズムに乗せてのプレイは明らかにEvans〜Coreaの系譜を感じさせるプレイだ。ただ若干残念なのは5でもそうだったが、かなり録音によって助けられている感は否めない。しかし、まさかこのアルバムで名手Gomezのベース・ソロが聴けるとは思わなかった(笑)。Schumanのチャレンジする姿勢がとても感じられるトラックだ。

7.正直言ってこの時期巷に溢れていた陳腐な同期サウンドの典型とでもいった楽曲/演奏で、アルバム中もっとも面白みに欠けるナンバー。Jan HammerやPhilippe Saisse等の作りだす様なサウンドを狙っているのかもしれないが、はっきり言って足下にも及んでいない。個人的には中盤から翔びだしてくるWillのスラップ・ベース、そしてSchumanの気合の入ったシンセ・ソロ位の物だ。はっきり言ってMIDIを使っての終盤のピアノ・ソロは蛇足といった感じがする。アルバムの印象同様にアレコレ詰め込み過ぎて失敗している印象だ。

8.ちょっぴりTom Scottを彷彿とさせるようなメロディも表れてくるファンキーなフュージョン・サウンドのナンバーだ。全編を通じてWillのスラップ・ベースがとても効いていて、Wecklとのコンビネーションもなかなかいい感じに決まっている。ほんの少しだけだがWillのスラップ・ソロがフィーチャーされているのも嬉しい所だ。ここでもLoveのギターがなかなか見事なソロを聴かせていて、Schumanのシンセ・ソロを食ってしまっている感じだ。エッジの効いた存在感のあるプレイはさすがだ。

 必ずしも名盤という訳でもなく、ネットで調べてみると結構リーズナブルな価格で手に入るアルバムだが、聞き様によっては色々と豊富な聞き所を持つアルバムの様にも思えるアルバムだ。同期サウンドの使い方もイヤミはないし、アレンジやソロのアイディアにもSchumanの拘りが感じられる作品だ。




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