
| 1.Wind Blows Your Skin |
| 2.The Wild Lady |
| 3.Big Celebration |
| 4.Free Land |
| 5.Moss on the Rock |
| 6.Lovin' May |
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●/ビクターJVC/VIJ-6002(LP)
●Musicians●
Tp.日野 皓正
G.John Scofield
B.Ron Carter
Ds.Tony Williams
●コメント●
渡米してN.Y.に本拠を移し、新たな音楽活動をスタートさせた日野
皓正の音をLarry CoryellのThe 11th Houseのアルバム「Aspects」で聴いた時は妙にうれしい気持ちになったのを思い出します。その日野にとって、この1977年というのはとても大きな、そして成果を手に入れた年ではなかったでしょうか。ヨーロッパのEnjaレーベルからのHal
Galper(P)のアルバム「Now Hear This」への参加、そしてこの「May Dance」の音には、過去の日本国内の名声をかなぐり捨て、自らの実力で克ちとった自己のポジションに対する自信のようなものが感じられます。Hal
Galperといえば1970年代に入りBrecker Brosの参加を得たアルバムをライブ盤を含め4枚リリースしているN.Y.ジャズ・シーンの俊英(当時)で、Tony
Williams(Ds)Cecil McBee(B)という強力なリズム・セクションを得てのワン・ホーン・カルテットでの溌剌としたプレイはGalperの存在感をはるかに凌ぐもので、まるで日野
〜Tony Williamsの双頭リーダー作かと思うほどの充実した演奏で世界にアピールした一枚でした。そして本作「May Dance」も日本企画/制作のアルバムながら、Tony
Williams/Ron Carterという最強のリズム・コンビに当時Billy Cobham(Ds)のバンドで話題を集めていたギタリストJohn
Scofieldを加えてのやはりワン・ホーン・カルテットでのアルバムです。高校時代から日野のアルバムはラジオやJazz喫茶などでよく聞いていましたし、日本に居たころも実弟、日野
元彦の活きのいいドラムとのスリリングなプレイを聞かせていましたが、何と超大物Tony Williams(Ds)の強力にプッシュするしなやかでパワフルなドラムとの共演ですからこれは凄いです!Tonyとの相性抜群Ron
Carter(B)も絡んでの壮絶なインプロビゼーション/インタープレイのスリルはもうたまりません。そして新進ギタリストJohn
Scofieldのフレッシュなプレイと相まってある種とても新鮮な音楽空間が生まれています。日野のブロウに俊敏に反応するRon/Tony、そして切れ込んでくるScofieldのギターの生み出す音楽は、いい意味の荒々しさを孕んだとてもエナルギッシュでスリリングな、これぞN.Y.のJazzといった雰囲気をとてもよく伝えてくれるアルバムに仕上がっています。
このアルバムの後、日野はポップでコンテンポラリーなFusion路線に走る事になるのですが、ヒットした「City Connection」や「Day Dream」にしてもカッチリした、でもグルーブに満ちたリズムに乗っての日野のプレイ自体はJazzそのものでしたが、本作ではピュアな剥き出しのJazzスピリットがアルバム全体に横溢していて実に素晴らしいアルバムになっています。ですからFusion仕立ての日野 皓正を期待する方にはちょいとキビしいかもしれませんが(笑)、どちらかというとこちらの方が日野 皓正の本質に近いように思います。
1.弓弾きのベースとジャジーなギターをバックに陰影をたたえた日野のペットがイントロを奏でた後、軽快な4ビートのテーマにスバリ込んでいきます。オーソドックスでデリケートにダイナミクスを使いこなす大物共演者達と一歩も退かずに渡り合う日野のトランペットはN.Y.でもその地歩を固めた地震に満ちあふれています。そしてJohn Scofieldのギター・ソロは、私が今まで聴いた彼の演奏の中では最もJazzフレイバーの強い演奏ではないかと思います。Chet Bakerの「You Can't Go Home Again」でもこれほどオーソドクスなJazz感覚は出していなかったように思いますが・・・。でもこれがまた、なかなか素晴らしい見事なソロになっています。日野のソロの時以上に煽りまくるTony Williamsのドラミングが、もうメチャメチャかっこ良いです!そのスリリングなプッシュはV.S.O.P.などで聴かれるプレイ以上の高いテンション感をもたらしています。1
2.日野のトランペットとTony Williamsの対話から始まるゆったりとしたの大きなグルーブを感じのナンバー。決して速いフレーズを吹きまくるでなくゆったりと「歌」を歌い上げる日野がとてもカッコいいです。1に続きJohn Scofieldのジャジーなフィーリングいっぱいのギター・ソロが大きくフィーチュアされています。まだ若いな、と感じる部分もありますがやはりこの頃から既に非凡な才能を感じさせるアグレッシブなプレイを聞かせています。そしてRon Carterの短いベース・ソロもフィーチュアされています。ダイナミクスをとても広く使ったTony Williamsのドラミングが曲に大きな表情の変化を付け加えていて実に素晴らしいです。それにしてもTonyのバスドラは強烈です。我が家のチープなスピーカーでもそのパワフルなプレイは十分に堪能するおとができます。
3.Tonyの細かくハイハットを刻む16ビートのサンバのパターンから快調なテンポで日野がダイナミックでエキサイティングなソロを展開していきます。John Scofieldの冗舌なギター・ソロもなかなか活きがいいですが、しなやかに豪快にそのソロをプッシュするTonyのドラミングは圧倒的です。Ron Carterとのコンビネーションは絶妙としか言い様がありません。この二人が後ろにいるだけでソロイストはとても楽に自然にエキサイティングでアグレッシブなソロへと導かれていくような気がしますね。そしてタムをフルに使ってのTonyのドラム・ソロも豪快かつパワフルで一つの大きな聞き所となっています。とにかくしなやかに自由に展開していくTony/Ronのリズムに乗せて気持ち良さそうにブロウする日野の姿が目に浮かぶようです。
4.Side-Bはボトムのきいたコンテンポラリーなビートを使いながらも、いかにも日野らしいモーダルなテーマを持ったナンバーです。日本を離れる以前から8/16ビートを取り入れたリズムにこういったモーダルなテーマを乗せたプレイはよく演奏していた日野ですが、当時よりもよりいっそう、それはあくまでもキッカケとして自由に展開していくよりジャズの王道をいく演奏を展開しています。もちろんそれに大きく貢献しているのはTony/Ronの強力コンビの貢献が大きいですね。ここではTonyばかりでなくRon Carterも珍しくかなり自由にアグレッシブなバッキングを聞かせています。Tonyもかなり自由に4ビートからLifetimeで磨きをかけた8/16ビートまで変幻自在のプレイで日野をインスパイアしています。良くも悪くも日野はいつもの日野なのですが、こういうスリリングな演奏に乗るとまた一味違ったスケールの大きさを感じますね。
5.一転して軽快な4ビートのリズムに乗せて大らかにオーソドックスに吹く日野が堪能できます。ゆったりと音を選ぶように、時には速いフレーズを紬ながらもマイペースで自分の歌を作り上げる日野のトランペットは、やはり日本にいた自分よりは格段スケール・アップして聞こえます。Scofieldのソロもかなり彼のスタイルに近い演奏を披露していますが、まだ温色やソロ構成は試行錯誤を重ねているといった印象を強くうけます。そういえばこの当時のプレイは渡辺 香津美の演奏ととてもアプローチ、方法論が似ているように思えて仕方がありません。ここでのTony/Ronはリラックスした雰囲気を感じさせつつも演奏に一本太い芯の通ったような、そんな高いテンション感を維持した演奏で見事に日野をバックアップしています。
6.アルバムのラストはいかにも日野らしいどこか哀調を帯びたメロディーを感じさせる静かなバラード・ナンバーです。比較的疎な音空間ながら、静かなインタープレイ空間を感じることができます。各自音を厳選して、ダイナミクスをより自然に効果的に使いながらのインタープレイは、他の楽曲に比べても十分にスリリングな感覚を持っています。日野とRon Carterのベースを軸に、Tonyとジョンスコはデリケートなバッキングがメインですが、その音色やタイミングに並大抵でない卓越したテクニック/センスをふんだんに発揮しています。そんな素晴らしい共演者達に囲まれて主役である日野はそれにふさわしい貫録十分の演奏でそれに応えています。アルバムの最後を飾るにふさわしい成熟度を感じさせる素晴らしい演奏です。
学生時代にはさんざん聴いたこのアルバムですが、だいぶ痛んできたのもあって押し入れの奥が指定席になっていたのですが、Tony Williamsの音を貪り聴くうちにはたとこのLPの存在を思い出して引っ張り出したという訳です。1996年にはCD化されたようですが、2003年12月現在、CDは市場に出回っていないようなのでLPをCD-R化して大事に聴かなければ・・・・。CDでの復刻を切望します。