◆日野 元彦/Sailing Stone◆
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日野 元彦
Mike Stern
日野 皓正
Steve Swallow
Dave Liebman

1 Winter Swallow
2 (I Can't Get No)Satisfaction
3 We Got Lost
4 Memories Of Pheonicia
5 Lady Jane
6 I Mean You
7 Angie
8 Slippin' Ioto The River
9.Continental Drift

1991年作品


ファンハウス/FHCF-1180

●Musicians

Ds.日野 元彦
B.Steve Swallow
Org.Harm.Karen Mantler
G.Mike Stern/Marc Muller
Ts.Ss.Dave Liebman
Cor.日野 皓正

●コメント●

 トランペット奏者日野 皓正の実弟であり、1970年代から1990年代にかけて常に日本のJazzシーンをリードする存在であり続けた偉大なドラマー、日野 元彦の1991年のN.Y.レコーディング作品が本作「Sailing Stone」です。惜しくも1999年、この世を去ってしまいましたが、私にとってはとても思い出深いドラマー/ミュージシャンの一人です。と言うのもまだJazzを聴きはじめて間もない頃に聴いた初めてのJazzライヴが日野 皓正の渡米前の「さよならコンサート」で、日野皓 正クインテットに豪華ゲストを加えたラインナップの中で、とてもパワフルにリズムをリードしていた姿が脳裏にしっかりと焼き付いています。当時のドラミングは、かなりTony Williamsの影響を強く受けたスタイルだったように思います。彼のアルバムを特に意識的に聴いていたという訳ではありませんが、日野 皓正クインテットでの作品や、彼のリーダー作としては「流氷」、セッション参加作品では「Dee Dee Bridgewater/Afro Blue」等で彼のプレイに接する度に、学生時代に新宿のPIT INNやタローといったライヴ・ハウスで実際に目にした彼のプレイを思い出します。某Jazz雑誌の読者人気投票では二十数回ポール・ウィナーに輝いた、まさに日本のJazz史にとって欠かすことのできない名ドラマーです。

 自己のグループや、数多くのグループで実に幅の広い多彩な音楽表現を聴かせたミュージシャンでしたから、オーソドックスなピアノ・トリオから、かなりモダンなアプローチのコンボ、そしてフュージョンやラテンと、時期によってそのプレイ・スタイルというか演奏から受けるイメージは若干異なりますが、本作は1991年という時点での、フュージョン的な要素も十分消化吸収したコンテンポラリーな演奏と言って差し支えないと思います。中でも注目に値するのが本作に起用されているメンバーの顔触れでしょう。特に大きくフィーチャーされているDave Liebman(Ss.Ts.)とMike Stern(G)の、なかなか気合の入った硬派なプレイが本作の価値をよりいっそう高めているのは間違いのないところでしょう!そして演奏されている楽曲もかなりユニークですね。構成としてはM.Jagger/K.Richards作のRolling Stonesナンバーが4曲、日野のオリジナルが4曲、そしてスタンダードが1曲といった具合ですが、やはり「Satisfaction」や「Angie」といったストーンズ・ナンバーには驚かされますね。そしてそれらが実に見事に日野流のJazz演奏として料理されているのにも驚かされます。決してイージーなお手軽フュージョンにしていないところが如何にも日野らしいですね。正直なところトラックによってはさほど面白みや新鮮味に欠けるものもあり、残念ながら歴史に残る名盤とは言えないかもしれませんが、日野のドラミング、LiebmanやSternといった私の大好きなミュージシャンのプレイが堪能できるアルバムとして、とても愛着の或る一枚となっています。

1.LiebmanのソプラノとSternのギターのユニゾンによるモーダルなテーマを持つナンバー。シンバル・レガートの粒立ちといい研ぎ澄まされた音色、スネアのロールのシャープな感覚といい、随所にTony Williamsの強い影響を感じるプレイを聴くことができます。そしてLiebamanならではのアウトな感じのソプラノ・ソロ、それに強くインスパイアされてのSternのギター・ソロも、これぞまさしく「Jazz」といった聴き応え十分のプレイです!Swallowの使っているエレクトリック・ベースはどうもナイロン弦が張ってあるみたいですね。でもここはやはりウッド・ベースかフレットレスに徹して欲しかったところですね。それにしても終盤のLiebamanとSternの絡み、そしてそれをもり立てる日野のドラミングはかなりスリリングですね。

2.Stonesのオリジナルをイメージしていると見事にはぐらかされてしまう演奏が飛びだしてきます。ゆったりとした、しかしずっしりとしたリズムの上で、Sternのギターがメロディにソロにと全面的にフィーチャーされています。デリケートなタッチを生かしたプレイに、そして如何にもSternといったトーンを変化させながらのテクニカルなプレイ、そして独特のウネウネとした感覚も存分に堪能できる演奏となっています。曲を通じて日野のドラミングの表情の変化とSternのプレイが際立つトラックですね。終盤に日野のドラム・ソロもフィーチャーされていますが、これ見よがしに叩きまくる様なヤボなこともなく、さすがといった感じを強く印象づける演奏です。

3.不思議なテーマを持つ日野のオリジナル。ここでは日野/Swallowのコンビがなかなかスウィングするグルーヴを発揮しています。欲を言うならやはりベースはウッド・ベースにして欲しかったところですね。ここではテーマからソロとLiebmanのソプラノが大活躍しています。この人、決してポップでイージーなプレイを聴かせる人ではないので、知名度の割には人気は今ひとつといった感じですが、ソプラノ=Wayne Shorterみたいな風潮が主流な中で、決して忘れることのできない人です。まさに「マスター」、「ヴァーチュオーゾ」といった呼称がピッタリ来るプレイをここでも聴かせてくれています。

4.ゆったりとしたたっゆたう様なリズムに乗せてSternのギターがメロディを歌い上げるナンバーです。ここではSternのギターとLiebmanのテナーによる、まるで対話しているかのようなソロの掛け合いが、実に淡々とした感じて繰り広げられています。一時期ソプラノに専念していたLiebmanのテナーが聴けるというのも当時はとても嬉しかったものです。終盤ではLiebamanのテナー・ソロがフィーチャーされていますが、これまたフェード・アウトしていくギリギリまで聴き手を釘付けにするプレイです!そう言えばLiebmanとSternの共演なんていうのも結構珍しかったりもしますね。

5.K.Richards作の有名ナンバーを日野 皓正のコルネットがゆったりと表情豊かに歌い上げています。やはりこの人のプレイにはオーラがあるというか、やっぱめちゃめちゃカッコいいですね!ここでは大スターである兄にフロントを任せて、繊細なブラシ・ワークでしっかりとそれを支える役割に徹したドラミングといった印象です。さすが実の兄弟ならではの絶妙な呼吸を感じますね。*

6.スタンダード・ナンバーを完全にフュージョン・スタイルにアレンジして演奏していますが、正直このアレンジはあまりいただけないですね。メロディを弾いているMarc Mullerのギターも、ありふれたフュージョン・ギターといった感じですし、とにかくアレンジが平凡な上にかなり古臭いんですよね。ここではSwallowノベース・ソロや日野自身のドラム・ソロもフィーチャーされていますが、「焼け石に水」状態といった感じですね(笑)。

7.これまたK.Richards作の大ヒット・ナンバーですね!物悲しく切ない感じの哀愁の名曲メロディを、思い入れたっぷりにプレイするSternのギターがここでも実にいいですね!いつもの高速でのテクニカルなスケール中心のプレイもかなり抑え目に、Sternとしては珍しいくらいにブルージーに歌い上げるソロは、なかなかの説得力をもって聴き手の心に迫ってきます。勿論日野のドラミングも非常に繊細にSternのプレイを浮かび上がらせるプレイを聴かせていて、「流石」のプレイと言ったところですね!単調ではありますがMantlerのハモンドのトーンは、この曲にピッタリですね。細かいトーンの変化にも気をつかっているのがとてもはっきり感じられます。

8.Mantlerのオルガン&ハーモニカをフィーチャーした、如何にも「爽やか系フュージョン」といったナンバー。楽曲/アレンジもMantlerのプレイも極々平凡な感じです。ハーモニカが出てくるとちょっとリー・オスカーを思い出してしまったりもする感じです。これといったソロがフィーチャーされるでもなく、淡々とメロディが繰り返されるといった感じで、個人的には結構退屈してしまうナンバーです。

9.ラストはこれまたK.Richardsの作品です。陰鬱でどこか怪しげな雰囲気は如何にも、といった感じがしますね(笑)。ここでもLiebmanとSternが大活躍しています。ソプラノとギターのユニゾンによるメロディから、とても表現力豊かなプレイを聴かせてくれます。ここではSternがRock調の入りから、何時もノ彼独特のウネウネ為た感じのスケール・プレイへと展開していきます。次第にテンポを速めながらスリリングにエキサイティングに日野のドラムスと共に高揚していく感じが何とも言えませんね!そして最後はLiebmanの熟練のソプラノ・ソロで締め括られているのもいいアイディアですね。Liebmanのソロの背後での日野&Sternのリズムの絡みもまた絶妙です。実にいいアルバムのまとめ方を感じさせてくれます。

 1999年に彼が亡くなって以降、彼自身のリーダー作も随分と廃盤/入手困難といった状況になっているようですが、中古店やネット・オークション等では案外よく出品されているようなので、購入を希望される方は諦めずに根気よく探されれば入手できると思います。Dave LiebmanやMike Sternファンの方にとっては、これ、間違いなく必聴盤でしょう!



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