◆Mike Stern/Upside Downside◆
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Mike Stern
Jaco Pastorius
David Sanborn
Dave Weckl
Mark Egan
Bob Berg
Mitch Forman

1.Upside Downside
2.Little Shoes
3.Goodbye Agein
4.Mood Swings
5.After You
6.Scuffle
1986年作品(Rec.1986.03〜04.)


●Atlantic/7-81656-2

●Musicians

G.Mike Stern
B.Jaco Pastorius(4)/Mark Egan/Jeff Andrews(2)
Ds.Dave Weckl/Steve Jordan(4)
Perc.Dr. Gibbs
Ts.Bob Berg
As.David Sanborn(3)
Key.Mitchel Forman

■コメント■
1980年代に入って復活を遂げたMiles Davis(Tp)の目に留まり一躍シーンの第一線に躍り出てきたギタリストMike Stern。多くの一流ミュージシャンを輩出した名門グループでかつてのブラス・ロックの雄BS&Tの出身で、Miles Davisグループの後には天才ベーシストJaco Pastoriusとトリオを組んでツアーを行うなど1980年代のJazzギター・シーンの台風の目といった存在でした。Pat MethenyやJohn Scofield同様Jim Hallに強く影響を受けたギタリストの一人として現在のJazzギター・シーンの重要人物の一人ですね。2002年末に交通事故死したBob Bergとの双頭バンドでの活動や90年代の復活Brecker Bros.への参加でも圧倒的なプレイで抜群の存在感を示していましたね。

本作はそのSternがAtlanticレーベルから実質的な世界デビュー作です。参加メンバーもNYのJazzシーンの実力派が顔を揃えていて、緻密なサウンドの中にも高いテンション感がしっかりと保たれているのは見事です。80年代に入り急速に衰退していくフュージョン・ムーブメントとは一線を画すハードでテンション感を前面に押し出したそのサウンドはポスト・フュージョンというよりも確実にその領域を拡げ定着したニュー・スタンダードを感じさせるサウンドを展開しています。Stern以外にソロイストとして大きくフィーチュアされているBob Bergは当時Miles Davisグループのフロントマンとして活躍していたパワフルなテナーマンですが、ここでのプレイはMichael Breckerと間違えてしまいそうな程に酷似したプレイでせっかくの素晴らしいソロなのにちょっと興醒めしてしまうのが残念ですね。1曲のみの参加ですがDavid Sanbornはお得意のバラード・ナンバーで、この時期としては出色の出来栄えの素晴らしいソロを披露していますし、これまた1曲のみの参加ではありますがJaco Pastorius(B)の参加も話題を呼びましたね。また全曲をStern自らのオリジナルで固めたその作曲能力の高さも見逃してはならない注目点の一つでしょう。そして面白いのがこのアルバムのプロデュースにあたっているのが、当時同じくAtlanticレーベルと契約していたギタリストHiram Bullockであるという点です。24丁目バンド等のポップでファンキーなイメージの強いHiramではありますが、なかなかの手腕を発揮しているように思います。Stern同様Jacoとの共演をこの時期積極的に行っていたという共通点もあって実に興味深いですね。

1.メリハリの効いたDave Weckl/Mark Eganのリズム・チームのグルーブに乗ってニザイク模様のような印象を受けるメカニカルなテーマが印象的なナンバーです。Rockフィーリングとかっ飛んだ感性はMiles Davisグループ在籍時から定評のあるSternですが、その個性を遺憾なく発揮したオープニングにふさわしい演奏が展開されています。それにしてもBob Bergのテナーのトーンは録音のせいだけじゃなくてやたらMichael Breckerの音にそっくりに聞こえますね。幾分Bergの方が野太いトーンではありますが。

2.もうこのイントロのフレーズだけ聴いているとPat Methenyグループのナンバーかと思ってしまいますね。ミディアム・テンポのいい曲だとは思うのですが、ちょっとアレンジがありふれた感じなのが残念です。しかしSternのソロは持ち前のRockフレイバーを強く出していてその歌い上げ方や速いフレーズを巧く組み合わせたソロの構成力の巧みさといい、その非凡な才能を非常に強く感じさせてくれますね。それにしても1でも2でもそのテクニシャンぶりを抑えた比較的シンプルなドラミングに徹するDave Wecklのドラミングがやたら新鮮に響きますね。この曲ではベースは名手Jeff Andrewsが弾いています。

3.透明感のあるギターとパーカッヨンの広がりのある空間から沸き上がってくるようなメロウな美しいメロディをSanbornのアルトが切々と歌い上げています。そして続くSternのソロは非常にしっかりとした構成の上にたった抜群の歌心とJazzセンスを存分に発揮した見事なソロ・プレイです。テーマにソロに持ち前の情感たっぷりなプレイを展開しているDavid SanbornのプレイはSanbornグループのギタリストHiram BullockのSanbornの個性を知り尽くしたプロデュースによって一際輝いているように思えます。SanbornはBob Jamesとの「Double Vision」という名作バラード・アルバムでグラミーを獲得したばかりの時期ですが、ソロの出来はこちらの方が数段上といった印象を受けますね。

4.ベースにJaco Pastorius、ドラムスにSteve KhanのEyewitnessのドラマーSteve Jordanが参加してのナンバーです。音を聞いただけですぐにJacoとわかるその存在感は全盛期ほどでないにしろさすがJacoですね!キメキメの曲構成とドラムの録音がちょっとJacoの個性、存在感を薄めてしまってはいますが、その類いまれな音楽センスはバッキングだけでも十分に光っています。ファンキーなリズムといいグルーブ感といいHiramのこの当時のアルバム「From All Sides」あたりとちょっと似た雰囲気を感じますね。イントロ、テーマ部、ソロの背後とそれぞれ異なったトーンで弾き分けるSternのプレイに合わせるかのようにテイストを変えてプレイするJacoのベース・プレイの真骨頂はBob Bergのテナー・ソロの背後での4ビートの部分でのグルーブ等にもはっきりとした個性を発揮していますね。いかにもBreckerに告示したトーン、アプローチではありますが、Bergのテナー・ソロもまた見事です。

5.どことなくオールド・フォーク・ソングの味わいを持ったスロー・バラードです。こういったバラードの作曲センスにSternのロマンチシズムのようなものがふんだんに込められているように感じます。ギター・プレイのニュアンスとしてはややPat Metheny的な感じもしなくはないですが2ndソロではRockフレイバーあふれるプレイでSternならではの個性もアピールしています。SternにしてもScofieldにしてもJim Hallに心酔しているギタリストですからバラードでは皆何処か類似した雰囲気を持っているのは仕方のないところかもしれませんね。個人的にはここでのMark Eganの透明感あるベース・トーン、結構好きですね。

6.1同様何処かBrecker Bros的な感覚を持ったメリハリの効いたファンク・ビートと不思議な雰囲気を持ったテーマが印象的です。ここでのSternはお得意のRockフレーバー溢れるトーンとテクニカルでメカニカルなフレーズを実にうまくブレンドしたパワフルなプレイで素晴らしいソロを展開しています。そしてこれまたMichael Brecker色を強く感じはしますがBob Bergの豪快なトーンのブロウもまたノリのよさといいソロ構成の巧みさという点でもなかなか出色のプレイでSternに続きます。面白いのは当時Chick CoreaのElektic Bandで売り出し中のDave Wecklのヘビーでパワフルなプレイがとても爽快に感じられること。テクニック・モンスターとしての評判ばかりでない一面をしっかりアピールしています。

実は現在のJazzギター・シーンの中にあってはもっとも私のお気に入りのギタリストはこのMilke Sternなんです。特に90年代に入ってからのスタンダードJazzを演奏した「Standards & Other Songs」は大のお気に入りアルバムなのですが、レコード会社の意向かSternの意向なのかは知りませんが、路線がコロコロと変わってしまって今一つのアルバムが続いているように思います。2004年にはいつものRIncoln Goines(B)Dennis Chambers(Ds)のトリオではなくRichard Bona(B)Dave Weckl(Ds)のトリオで来日、私は聴くチャンスがなかったのですが、次回の来日には是非ともSternの今の音を確認してきたいと思っています。


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