
| 1.LOVIN' YOU |
| 2.MUCH TOO MUCH |
| 3.SUDDENLY |
| 4.JUST FOR YOU |
| 5.THE ONLY REASON LIVE |
| 6.JUST WHAT I NEEDED |
| 7.LET ME SHOW YOU |
| 8.BE MY LOVE |
| 9.COULD IT BE YOU |
| 1983年作品 |
●ワーナー・パイオニア/WPCP-3570
●Musicians
B.G.Key.Bcl.Prg.Vo.Marcus Miller
Ds.Buddy
Williams/Yogi Horton/Harvey Mason
Perc.Ralph McDonald
G.Nicky Moroch
As.David Sanborn
Vib.Mike Mainieri
Vo.Luther Vandross/Yvonne Lewis/Tawatha
Agee/Brenda White
●コメント●
今や忍も押されぬエレクトリック・ベース界のトップ・ベーシストMarcus
Millerの1stソロ作が本作です。80年代に入り復活を遂げたMiles Davisの片腕的な存在として、またBrecker
Brothers Bandの最後のベーシストとして、またDavid Sanbornのバンドの中心的存在として、はたまたソウル、R&Bのスーパースター:ither
Vandrossのバンドのメンバーとして1980年代に入って一気にブレイクしたMarcus Miller、その独特な切れ味を感じさせるチョッパー奏法/Slap奏法はしれまでのチョッパー奏法とは明らかに違った洗練された奏法としてスタジオ・ミュージシャンや若いアマチュア・ベーシストを中心に圧倒的な支持を受ける存在となっていました。しかしMarcus
Millerというミュージシャンは単なるベーシストという狭い範囲には飽き足らず、作編曲をはじめ、ギター、キーボード、バス・クラリネットを始めとする様々な楽器を自ら演奏し、プログラミングまで自分でこなすというマルチぶりを発揮し、ポップ/ロックからJazz/Fusionに至るまで様々なミュージシャンのアルバムでプロデュースやアレンジを担当するようになっていました。特にDavid
Sanornの6th「夢魔へ」8th「Backstreet」等にそのサウンドの指向性を見て取ることができるでしょう。
そして本作は突然に、しかしある程度私の予想の範囲内にとどまるポップなブラコン/R&B指向を前面に出したアルバムとなっています。ほとんどの曲では打込を駆使したMarcusのワンマン・プレイが中心になっていますが、Buddy WilliamsやYogi HortonといったDavid SanbornバンドやLuther Vandrossのバンドの同僚ドラマーを迎え、またボーカルもMarcusを中心にLuther Vandrossの周辺の実力派がコーラスを務めるという贅沢な顔触れ、そして曲によってはDavid SanbornやMike Mainieriといった第一線のミュージシャンのソロをフィーチュアするといったMarcus Millerのアレンジャー/プロデューサーとしての手腕を前面に出したボーカル・アルバムになっています(インストは9のみです)。しかし随所にMarcusの若々しいベース・プレイがフィーチュアされていて、決してMarcusのベース・プレイを期待したファンの期待も決して裏切らないような仕上がりも心憎いほどですね。しかし当時まだ24才だったMarcusだけに新しい流行の音作りに腐心するあまり、普遍性というか、永続性という所にまでは気が回らなかったのでしょう。今聴くとたはりかなり古くさくも聞こえますし、Michael Jacksonをはじめとする当時流行のブラコン・サウンドの影響をモロに受けていて曲によっては「パクリ」と言われても不思議のないようなフレーズが満載(笑)に聞こえます。しかし、その素直な曲作りのセンスはメロディー・メーカーとしての非凡な才能も感じさせてくれます。
1.ギラリとしたザラッとした感触の独特のスラップ・ベースを活かしたミディアム・テンポのボーカル・ナンバーです。ハンド・クラップやコーラスを使ったダンサブルなビートを強調していますが、やはりMarcusのスラップ・ベースに耳が要ってしまうのは仕方のないことでしょう。ボーカルは決してお世辞にも巧いとは言い難いながらも健闘していると言っていいでしょう。しかし私がやはり気になるのはRay Bardaniによる加工された音の不自然さです。
2.なかなかよく出来たバラード・ナンバーです。Marcusのボーカルはさておき、Luther周辺のコーラス隊の威力は流石ですね。ゴージャスな趣のしっとりしたコーラスとMike MainieriのVibが実によく聴いています。私は個人的にはMarcusのチョッパーも決して嫌いではないのですが、この当時からセンスのいいベース・ラインで光っていたMarcusの指弾きベースが好きなんです。ここではピッコロ・ベースでのソロがフィーチュアされていますが、センスのいい指弾きだけでも十分聴かせられる人なのになあ、そう思えてしまうナンバーです。それにしてもMainieriをこんなに勿体ない使い方しかしないというのはプロデューサーとしてはまだまだといった感じもしますね。
3.当時のボス、David Sanbornのアルトがイントロからシャウトするダンサブルなナンバー。決して曲も悪くないのですが、やはりMarcusのリード・オーカルが弱いですね。それにDavid Sanbornのアルトもオブリガート的に時々出てくるのがやや耳障りに感じてしまう部分もあります。イントロならイントロ、ソロソロならソロと凝縮した方がSanbornはより活きてくるのに、ソロかなと思うとボーカルが絡んできて十分Sanbornのソロにも耳を傾ける事ができないというのは明らかにプロデュースの失敗としかいいようがありません。
4.NarcusのピアノとSanbornのアルトによるしっとりとしたイントロからMarcusのボーカルが滑り込んでくるバラード・ナンバーです。ここでのSanbornのなきのアルトはなかなかの演奏なのですが、またもやボーカルとかぶさってしまっているのが残念。いっそイントロの部分だけとか、ソロ・スペースを別に取るとか言った工夫があってもいいような気がするのですけど、Sanbornの絶妙の間を活かしたよく歌うソロの威力が半減してしまっているのは、やはりプロデューサーMarcus Millerの力不足といったところでしょうか。
5.Marcusのいかにもメジャーを意識したかのような作りの打込を中心にしたダンサブルなナンバー。シンセベースとスラップの音を重ねたりと細かい工夫は随所に見られるものの、せっかくYogi Hortonを起用したナンバーの割には彼の本領ともいえるような跳ねるような躍動感を生みだすようなナンバーでもないし、何かチグハグな印象を受けてしまいます。LutherバンドでのYogi/Marcusのコンビのグルーブが好きな私としてはちょっとガッカリのトラックでもあります。
6.何処かLuther Vandrossのアルバムに通じるような粘っこいグルーブ感が感じられるバラード・ナンバーです。ドラムのグルーブ感とMarcusのグルーブ感がいい感じでマッチしていて極上のグルーブ感を生みだしています。さすがHarvey Masonのドラムです。粘っこいハイハットのグルーブとシンセベースやMarcusのチョッパーの生み出すグルーブは極上の味わいです。ここに名人芸のギターのカッティングやピアノなんかが絡んだらもう最高にご機嫌なナンバーになっていただろうと思います。少なくとも個人的にはHiram BullockのギターとRichard Teeのピアノしか考えられないと思っているのですが(笑)
7.5同様の今一つ方向性のはっきりしないリズムの処理に何かすっきりしない印象が残ります。ポップな感覚、ダンサブルな感覚は十分に出ているとは思うのですが、何かどの曲でも似たり寄ったりのキーボードやギターの使い方、煮たような録音処理が耳につきます。しかしそんな今一つ吹っ切れない気分を吹き飛ばすかのようにMarcusの十八番とも言えるパターンのスラップ・ソロが出てくるとニッコリしてしまって許していたのはまだ私も若かった頃の話で(笑)、今はその程度じゃだまされないんだな(爆)。
8.同じダンサブルな路線を狙うにしても、ちょっと跳ねた感じのこういうリズムの方が誤魔化しが利きやすいですよね(笑)。でもいっそソロを前面に出すなら思い切ってスラップでビシバシ決めてくれたほうがファンは喜ぶでしょうにねえ。シンセベースにスラプを絡ませるのはちょっとこの当時流行したように思いますけど、だったらシンセベースの音の存在感をもっと上げないといけないような気がしちゃうんですよね。ボーカルやアレンジを利かせたいんなら思いっきりベースを持たずにやる位の思い切ったチョイスがあってもよかったように思います。
9.ラストになってようやくMarcusらしい曇ったトーンの指弾きのベースによるメロディー&ソロが堪能できるナンバーです。こういう曲をやると妙に成熟したプレイを聴かせるMarcusだけにアルバム全体の作りをもっと緻密に考えるプロデューサーさえいたならもっと素晴らしい違った出来栄えのデビュー・アルバムになっていたでしょう。個人的には6と並んでこのアルバムのベスト・トラックじゃないかと思っています(プレイ面から)。Buddy WilliamsやNicky Morochといった腕利きが達が実に繊細に暖かくMarcusをサポートしているのもいいですね。
その後発表される2nd「Perfect Guy」、Jamaica Boysの2枚のアルバムも基本線はこのブラコン路線を継承、強化しています。しかしこの1980年代のリーダー/コ・リーダー作に共通しているのは打込をメインとした先端のブラコン・ミュージックだったのでしょうが、やはり流行という抵抗しがたい荒波の前に、今となってはすっかり色褪せてしまっている点にあります。そういった経験を踏まえたうえでの90年代以降の諸作も評判の割には大きくそれまでの殻を破った作品になっているとは思えません。Milesミュージックの継承者、Jacoの後継者として注目を浴び続けるMarcusだけに、そろそろ大人のミュージシャンとしての本格的で創造的な作品作りを期待したいものです。
ただこのアルバムで感じるグルーブというのは「ファンク」というのとは違うように思います。独特のドライブ感とうねるようなグルーブはまだここにはありません。ブラコン/ソウル/R&Bといったディスコ感覚のダンス・グルーブの延長上にある感覚です。正直言ってグルーブと曲の良さだけならCHICとかのディスコ・ミュージックの方がはるかに上だと思います。つい最近CHICのアルバムを引っ張り出して聴いてましたけど、1978年のCHICの方がカッコよく感じちゃいました。Marcusの1stアルバムという期待とSanbornの参加という期待の大きさの割にはめったに聴かないアルバムになってしまいました。