◆John Scofield/Loud Jazz◆

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John Scofield
Dennis Chambers
George Duke

1.Tell You What
2.Dance Me Home
3.Signature of Venus
4.Dirty Rice
5.Did It
6.Wabash
7.Loud Jazz
8.Otay
9.True Love
10.Igetthepicture
11.Spy Vs. Spy

1987年作品

●GRAMAVISION TD22Y0308●
●Musicians●
G.John Scofield
Key.Robert Aries/George Duke(solo)
B.Gary Grainger
Ds.Dennis Chambers
Perc.Don Alias

●コメント●

 1986年、Miles Davisグループを離れたJohn Scofieldは自己のグループを中心としたエレクトリック・ジャズ路線のアルバム「Blue Matter」をリリース、本作はそれに続く第二弾である。Scodieldのギターの個性は70年代Billy Cobhamグループ時代から異彩を放ってはいたが、80年代Milesグループへの参加で更にそのプレイに磨きがかかった様に思う。Mike Sternとのツイン・ギターや、Bob Berg(Ss. Ts.)との二枚看板での個性的なプレイは、復活後のMilesグループの中でも圧倒的な存在感を示していた様に思う。本作リリース当時はそんな期待感がとても大きかっただけに、トータル・サウンドを重視し、やや退いた感じのプレイは少々物足らなくも感じたものだった。また既にSteve KhanやMike Sternといったあたりがエレクトリック・ジャズの領域で活躍しており、彼等のグループの超強力なメンバーから見ると、ほとんどがそれまであまり馴染みのなかったメンバーによるScofieldグループは魅力薄といった感じだったのも事実だ。しかし、驚異的にこの2枚の作品、そしてバンドは注目を集める存在となっていった。そう、Deenis Chambers(Ds)がブレイクするキッカケとなったのはこのScofiledグループだったのだ!超重量級の度迫力と抜群のテクニックで瞬く間にトップ・ドラマーの仲間入りを果たす存在へと上り詰めていくのである。

 サウンド的には「決め事」を多用したアレンジと、如何にもScofieldらしい怪しげな旋律が交錯するものとなっている。しかし、ややリズム面を強調した決め事の嵐が前に出過ぎている分だけ、楽曲やScofieldのギターのアクの強さは緩和されてしまっている様な印象も受ける。実はリリース当時「やたら重くて怪しげなCASIOPEAみたいなサウンド」といった印象を受けた。しかしCASIOPEAのサウンドは軽やかな疾走館が身上であり、それにマッチしたアレンジ/ソロで決して流れが途切れる事はなかった様に思う。しかし残念ながらここでのサウンドは決め事重視のアレンジによって楽曲やソロの流れが時に立ちきられてしまう感じがしてしまうのだ。言い換えるとChambers〜Graingerの当時話題のリズム・コンビとScofieldのギターが本当の意味で融合している感じが稀薄なのだ。繊細なタッチやダイナミクスの変化を駆使して独自の表現世界を展開していくScofieldと絡むにはあまりにも直線的なリズムといった印象を受けてしまう。個人的な行けんではあるが、どうもGraingerのベース・トーンや演奏スタイルのあたりに原因がある様に思えてならない。かなりのテクニシャンなのだが、確かにパキパキしたスラップもそれはそれで恰好良いのだけれど、Chambersとのコンビネーションは取れてはいるものの、Scofieldとの絡みが感じられず、ここに大きな壁を感じてしまうのだ。またキーボードのAriesもそれを補う役割は果たしておらず、ただ黙々とバッキングをこなしているだけのプレイに終始しており、個人的にはそこにバンドとしての弱さを感じずにはいられない。ちなみにGraingerがスラップを使わずにプレイしている比較的ゆったりとしたナンバーでは随分と印象が異なり、Scofieldらしいサウンドを堪能できるので、やはりそのあたりに原因があるのだと思う。

 4人によるレギュラー・バンドに加え、本作ではGeorge Duke(Key)とDon Alias(Perc)がゲスト参加している。ScofieldとDukeは一見意外な顔合わせにも思えるかもしれないが、かつてScofieldがBilly Cobham(Ds)グループに在籍しており、Cobham〜 Duke Bandのメンバーとしてツアーも行っている間柄。ポップでダンサブルなサウンドというウメージの強いDukeではあるが、シンセを中心としたソロ・ワークはさすがの存在感を発揮していて、本作の大きな聴き所ともなっている。また、Aliasのパーカッションも、直線的なリズムを補う様な空間的な広がりを演出するプレイで、さすがに百戦錬磨の腕っ達者と唸らされる。

 主役のScofieldが退きまくっているという印象ではないが、メロディにソロにと、その表現力や存在感は並大抵のものではない。比較的聴きやすいポップなサウンド仕立となっているので、Scofieldのプレイへのとっかかりとしてはうってつけのアルバムかもしれない。もう一つの難点は11曲と曲数が多く、その分だけソロ・スペースが短い点だろうか?

1.重量級リズムを強調したファンク・リズムが印象的なナンバー。しかし個人的には指弾き部分を除くベースとドラムのパターンがイアマイチ融合しきれておらず、パターンが変わる度に流れが断ちきれてしまう様な印象を受けてしまう気がしてならない。正直Scofieldのギターってそうファンキーなタイプではないだけに、リズム面ではもう少し練り込んで欲しかった所だ。ここでは如何にもGeorge Dukeらしいシンセ・ソロが繰り広げられているが、さすがにこの手のリズムにフレーズを乗せるのはメチャメチャ巧い!ScofieldはここではソロをDukeに任したのは大正解といえるかもしれない。

2.1同様メロディはScofildらしいナンバーだが、Chambers〜Graingerのロックされたリズムと揺らぎ感覚のメロディがイマイチしっくりと馴染んでいない。そのせいかここでのScofieldのギター・ソロも少々ありふれたロック〜フュージョン的なソロに終始してしまっている印象だ。また続くピアノ・ソロもストレートにアコ=スティックな響きを前に出していない理由がイマイチ見えてこない。ソロとしてはなかなか恰好良いのにたっちのアタック感が損なわれてしまっているのは単に録音の問題だけではないだろう。

3.これもScofieldらしいメロディのナンバーだが、残念ながらこのトラックもロックしたリズムと浮遊館のあるメロディが最後まで溶け合う事なく進行してしまうのが惜しまれる。せっかくのヘヴィーなChambersのドラムなのに、Graingerのベースのアイディアは全くそれを広げられないまま、単に譜面上での整合性しか表現できていない。これは明らかにミュージシャンとしての「格」の違いから来るものの様に思えてならないのだが・・・。正直あまりこういった印象を持つ事は多くないので、私自身も巧く表現しきれないのだけれど、どうしてもその感覚が払拭しきれないのは事実だ。

4.これもヘヴィーなドラム&ベースのパターンをベースにしたファンク〜ロック的な感覚の強いナンバーだ。このトラックはアレンジ自体が流れというよりもヘヴィーな感覚を優先した様なアレンジなのだが、冒頭から続くイマイチしっくり来ない感覚には変わりはない。ここでもDukeのシンセ・ソロが大きな聴き所となっていて、正直Scofierldのソロはしっかり食われてしまっている。たっぷりとフィーチャーされているだけにリズムがもっとプSッユしていたならと残念に思ってしまう。

5.なかなかカッコいいナンバーと思うのだが、メロディ部分を聴いている限り、パターンが変化する度に何か失速してしまう印象なのはどうも頂けない。不思議なことに先発のキーボード・ソロではその失速館が薄れていて、その勢いのままギター・ソロに突っ込んでいくためか、ソロ部分はしっかりと盛り上がりは見せている。ただし、少々ありきたりなプSッユといった感じで、あまりインテリジェンスを感じるプッシュとは云い難い。少々作為的な録音も若干鼻につく。

6.これまたイージーなリズムと決め事パターンに支えられたファンク・ロック的なナンバー。やはりこういうシチュエーションはDukeの独壇場といった感じで、もう彼のシンセ・ソロの名人芸に強引に納得させられてしまう感じだ(笑)。ここでのScofieldは正直「らしくない」部分とそうでない部分が極端に分かれているといった印象で、個人的には今ひとつピンと来ない。このトラックまでがきっと「セールスを意識した」部分なんだろうな、きっと(笑)。はっきり云ってこの録音処理にはあまり品がないと思う。

7.面白い事にここでガラリとアルバムの空気が一辺する。妙にベヴィーなリズムばかりを強調して、表面的なアレンジばかりをいじっていた1〜6と違い、冒頭からリズム・アプローチの面白さや柔軟性といった本質的な部分がかなり前に出てきている。Jazzファン/エレクトリック・ジャズ・ファンはここからはかなり楽しめるトラックとなっている。Graingerのベースがスラップを使わないというだけでガラリとリズムの印象も変わってくる。少々アレンジに懲りすぎていてCASIOPEAっぽい部分もなくはないが、それはご愛嬌(笑)。楽曲的には似たりよったりといった感じだが、リズムが柔軟性を持った分だけScofieldのギター・ソロにも揺らぎ館が蘇っているのがいい。正直キーボード・ソロの萌芽リズムがプSッユしていい感じに盛り上がって聞えてしまうのはどうしてなんだろう?Chambersのドラムスをフィーチャーした部分はやはりカッコいい!

8.Grainger〜Chambersの元気印リズム・コンビにスポットを当てたファンキーなトラックだ。Graingerのスラップによるベース・パターンにChambersが絡むリズムはもうパワー全開!さりげなくオルガンを使ったサウンドはなかなか恰好良い!ここではScofieldのギター〜Dukeのシンセとソロがフィーチャーされているが、GITA-・ソロの序盤キーボードレスのトリオで演奏される部分はもうメチャメチャ恰好良い!ここでのリズムはど派手ではあるけれど、決め事の嵐という訳ではないので、演奏全体に大きな流れがしっかりと生まれているのがいい。リズムを巧みに取り入れてフレージングがどんどん発展指定草間はなかなかスリリングだ。Dukeのシンセ・ソロはもう少したっぷりとフィーチャーして欲しかったかな・・・。

9.Scifueldにしては珍しくボサノバ感覚のメロウなバラード・ナンバー。特にヒネリをきかさずにストレートにメロディを謳い上げるScofieldのギターというのも決して悪くはない。ただ少々アレンジがベタな甘ったるさを感じさせる部分はあまり感心できない。Aliasのパーカッションを前面に押しだしてChambersを極々控え目にというアイディアはけいいのだが、Graingerのベースが一本調子でしっかりとボトムを支えきれていないのは実に勿体ない感じだ。細かいトーン変化やタッチによる表情豊かなギター・プレイは、さすがScofieldと感心させられる芸の細かさだ。

10.ミディアム・テンポのずっしりと手応え十分のChambersのドラムとGraingerの指退きのベースが印象的なナンバー。どことなくScofieldが参加した当時のMiles Davisグループのサウンドを彷彿とさせる躍動感を感じさせる演奏だ。ここではやたらキメキメではないパターンに乗せてのScofieldのプレイを味わう事ができる。力強いリズムと浮遊館のあるScofieldのギターのマッチングも決して悪くない。難点はやはり我慢しきれずにスラップへ持っていこうとするGraingerのベースが少々耳障りな点だが、Scofieldはそんな事はお構いなしにマイ・ペースにソロを展開していく。Chambers〜Aliasの絡みもとてもよく機能していて、終盤表れるエッジの効いたScofieldのギター・ソロがフェード・アウトしていくのが惜しまれる感じだ。

11.ラストは出だしこそ陰鬱で怪しげな雰囲気ではあるが、Scofieldらしさがよく表れたスローの4ビート・ナンバーだ。いわゆるスウィングするBe-Bopのそれとは明らかに異なるものの、繊細なタッチやダイナミクスを活かしたScofieldのギター・プレイが冴え渡る。ここではChambersもブラシを含むとても繊細なドラミングを聴かせているし、Graingerのベースも悪くはない。ここでのScofieldはテーマとフェイク風のソロに全神経を傾注している印象のプレイだが、不思議な色気を感じさせるプレイと云っていいだろう。

 1〜6と7〜11のサウンド・クオリティの明らかなギャップはりりーす当初からとても気になっていた。「Blue Matter」にしても本作にしても、レーベル&プロデューサーがもっと力を入れていたらと思えてならない。個人的にはバンドの良さも悪さもひっくるめてストレートに反映されている分「Pick Hits Live」の方がはるかに親しみを感じる。



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