◆Hank Crawford/Wildflower◆
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Hank Crawford
Bob James
Joe Beck
Richard Tee
Bob Cranshaw
Idris Muhammad

1.Corazon
2.Wildflower
3.Mr. Blues
4.You've Got It Bad Girl
5.Good Morning Heartache

1973年作品


●CBS/CTI/ZK 40709
●Musicians
.As.Hank Crawford

P.Org.Richard Tee
G.Joe Beck
B.Bob Cranshaw
Ds.Idris Muhammad
Perc.Ralph McDonald/George Devens/Dave Freedman/Arther Jenkins/Phil Kraus/Runems Nassini
& Horns & Vocals
■コメント■
R&B/ソウル系アルト奏者として当時すでに確固たる地位を築いていたHank Crawford、60年代に活躍したAtlanticを離れCTIに移籍した後も、「I Here A Symphony」等の大ヒットアルバムを放ち、CTI/Kuduレーベルにとって欠かせない存在となっていました。そのCrawfordとポストDeodatoとして「はげ山の一夜」で一躍脚光を浴びるようになった新進気鋭のキーボード奏者/アレンジャーBob Jamesが組んだ一昨です。Jamesの華やかなブラスの響きを駆使したシンフォニック・ジャズ的なサウンドとCrawfordのR&B/ソウル路線を組ませるというのは、ちと無理があるようにも思われるのですが、そこは当時飛ぶ鳥を落とす勢いのCTI/Kuduですから、不可能すら可能に変えてしまう魔法でも持っていたのかもしれません(笑)、決して派手さのあるアルバムではありませんが、Jamesのアレンジの面白さとCrawfordの歌心をきちんと両立して聞かせてしまう手腕はこの二人を組ませたCreed Taylorの眼力、そしてアレンジばかりでなくプロデュースにも当たっているBob Jamesの手腕には舌を巻いてしまいます。

David Sanborn(As)がKing Curtis(Ts)と並びアイドルとしていたCrawfordだけに、そのファンキーでソウルフルな歌心は、特に歌物/バラードで真価を発揮するのですが、Carole KingやStevie WonderのナンバーでのJamesの巧みなアレンジに溶け込んでのプレイやR&Bテイストのプレイにと、艶っぽいプレイを聴かせてくれます。Crawfordというプレーヤーはとても歌を大事にするプレーヤーですから、決して自己の個性を突出させるといったタイプではありません。楽曲やアレンジと違和感なくどう歌心を表現するか、といったタイプだけに、ややJamesのアレンジの陰に隠れてしまうような部分もなきにしもあらずですが、それも含めてこの人の個性の一つと理解したほうがいいのかもしれません。1970年代後半以降はディスコ・ブームの台頭によってR&B/ソウルがかつての勢いを失い、Fusionムーヴメンとの隆盛から、Grover Washington Jr.(TS)やMichael Brecker(Ts)David Sanborn(As)等の陰に隠れた存在となってしまった感のあるCrawfordですが、今日Sanbornが確立したアルト・スタイルのかんり多くの要素は、当時すでにCrawfordが切り拓いてきたものを推し進め発展させたものといって過言ではないでしょう。King Curtisと並び、今日のJazz/Fusionサックス・スタイルの開祖といっていい存在と思います。頑固で不器用なまでにR&B/ソウルをベースにした音楽を追究し続ける姿も今日としては非常に珍しい存在ではありますが、その職人気質には胸を打つものがあるんですよね。

本作に参加しているミュージシャンはCTI/Kuduではお馴染みの面々といったところではありますが、その組み合わせの巧さにはいつもながら関心させられます。うなり声をあげながら地味にグルーヴ・メイクに徹する職人Idris Muhammad(Ds)とSonny Rollins(Ts)との共演などで知られるBob Cranshaw(B)のいかにも16ビートといった饒舌なフレーズの組み合わせといい、キーボードにファンキーな個性派Richard Teeを起用したかと思えばギターには新進気鋭の白人ギタリストJoe Beckを起用してみせたり、カラフルなラテン・パーカッションを大きくフィーチャーしてみせたりと実に芸が細かいんですよね。

1.Carole Kingのナンバーを派手なブラス・アンサンブルとずっしりと重量感のあるR&Bテイストのリズムで見事に料理したBob Jamesのアレンジが冴えわたっています。そんな整ったおぜん立てに乗ってBob Jamesのエレピガ、Crawfordのアルトがソロをとっています。クールな表情でテーマを吹くCrawfordのプレイはSanbornのプレイの原点となっていることを十分にうかがわせてくれます。決して言葉数は多くないもののジャジーな展開を見せるJamesのソロ、はいトーンを駆使しての直情的なCrawfordのソロはとても好対照といった感じですね。とにかくCrawfordの歌い回しの至る所に、今でいうSanbornフレーズがこれでもかという迄に折り込まれているあたりはやはりとても興味深い点ですね。やはりSanbornのお師匠様だったんですね(笑)。

2.ミディアム・テンポのコーラスを効果的に使ったバラード・ナンバーです。アコースティック・ギターやパーカッションを巧みに使ったアレンジと華やかなブラス・アンサンブルも、さすがBob Jamesといった感じですね!とにかくこういったメロディアスな歌物はCrawfordのもっとも得意とするところですから、凝ったアレンジなしでも十分にいける所ですが、さこはある意味完ぺき主義のJamesならではといったところでしょうか?とにかくメロディアスによく歌いまくるCrawfordのアルトの世界を感じさせてくれるトラックに仕上げられています。アルバム・タイトルにふさわしい名曲&名演です。

3.このブルースのリフはいかにもCrawfordといった感じですね。1959年のAtlanticでのデビューから今日に至るまで'Mr.Blues'との異名をとる程のBluesの達人Crawfordの持ち味/個性がぎっしりと凝縮されたブルース・ナンバーとなっています。ここでの先発十六はイントロがわりの先発ソロはJoe Beck。かつてMiles Davisとの共演経験も持つ実力派Jazzギタリストとしての力量をいかんなく発揮したジャジーなプレイを聴かせてくれています。そして主役のCrawfordはというと、もうこれは水を得たさ魚の如く貫録のブロウを展開しています。ファンキーなブロウとBe-Bopのイディオムを絶妙の匙加減で聴かせるそのソロ構成の巧みさはさすがMr.Bluesですね!Beckの2ndソロはイントロでのソロよりもかなりブルージーな感覚を前面に押し出していて、これまたなかなか充実したソロとなっています。Blue Noteでのセッション等でお馴染みのCranshawのベースも、ファンキーな唸り声をあげながらのMuhammadのドラムも実にグルーヴィーでいいですねえ。

4.「Talking Book」に収められているStevie Wonderの名曲を原曲のよさを十分に生かした形でBob Jamesが見事に料理しています。特徴的なブラス・アンサンブルもしっかり聴かせながら原曲の良さをしっかりと浮かび上がらせる手腕は見事です。ここでの先発ソロはワウワウを使ったJoe Beck。Rock、Jazz、R&Bの要素を実に上手く融合したソロはCTI/Kuduの新しい息吹を感じさせるに十分な内容を持っています。ここでのCrawfordは中盤までは抑制のきいたメロディに徹していますが、終盤ではギターやホーン・アンサンブルとうまく対比させながら、シンプルでストレートなブロウを炸裂させています。絶妙のメロディ・プレイといい、ソロでのストレートなブロウといい、Sanbornのお手本/ルーツをしっかりと披露してくれています。

5.再びCrawfordのよく歌うバラード・プレイがビッグ・バンド仕立てのスウィンギーなアレンジに乗って聴き手に切々と訴えかけてきます。やはりCrawfordの真骨頂はこうしたミディアム・スローのバラード・プレイにあるのでしょう。途中でいかにも Bob Jamesらしくコンテンポラリーなリズムにチェンジしてのソロ・スペースでフィーチャーされるCrawfordのアルト・ソロは、抑制の利いた中にもブルージーでファンキーな味わいが感じられますね。ここでのプレイもSanbornへの大きな影響を感じさせるものです。最大の魅力である絶妙のバラード・プレイとファンキーなソロのどちらをも楽しめる贅沢なトラックでアルバムは締めくくられています。

バラードの名手、Mr.Bluesの本領、そしてファンキー・アルトの開祖という異なる魅力をこの1枚のアルバムにすべて詰め込むという欲張りなアレンジ/プロデュースをBob Jamesが見事に実現させていますね。ただやはりBob JamesやJoe Beckのモダンな感覚とCrawfordのある意味泥臭いプレイの間には多少の温度差が感じられることも事実です。そういったあたりをファンは敏感に感じ取っていたのか、CTIの看板Sax奏者としての座は次第にGrover Washington Jr.に脅かされるようになっていくのもこの頃からですね。R&B/ソウルからファンクへのまさに過渡期におけるプロデュースとしては、かなりよく練られた内容を感じることのできるアルバムです。


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