◆Grover Washington Jr./Mister Magic◆
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Grover Washington Jr.
→⇒Bob James
Eric Gale
Gary King
Harvey Mason
Ralph MacDonald

1.Earth Tones
2.Passion Flower
3.Mister Magic
4.Black Forest

1975年作品(1974年11月録音)


●Motown Jazz/Kudu/31453-0103-2
●Musicians
Ts.As.Ss.Grover Washington Jr.

Key.Bob James
G.Eric Gale
B.Gary King(2/3/4),Phil Upchurch(1)
Ds.Harvey Mason
Perc.Ralph McDonald
& Horns & Strings
■コメント■
1971年の「Inner City Blues」のヒットで一躍CTIレーベルの名だたるスター・プレーヤーの仲間入りを果たしたGrover Washington Jr.でしたが、そのGroverの不動の地位を築くきっかけとなった大ヒット・アルバムが本作です。1974年11月に録音された本作は,Bob JamesのアレンジによるCTIサウンドの一つの雛形ともいえるサウンドの集大成といった趣も感じられるアルバムです。わずか4曲という収録局数からもわかるように、長尺の演奏が収められており、単に耳障りのいいサウンドという印象ではなく、かなりモダン・ジャズやインタープレイの要素も多分にちりばめられたGroverの代表作といっても過言でない出来栄えを示しています。そして本作の参加メンバーで目を引くのは、新たにCTI/Kusu傘下に加わったPhil Upchurch(B)と、Herbie HancockのHeadhuntersのオリジナル・メンバーだったHarvey Masonの参加でしょう。Upchurchは基本的にはギタリストなのですが、セッション・ワーク等ではベースも弾きこなす名手ですし、MasonはこのN.Y.時代にはBrecker Bros.の初代ドラマーとして参加等、数々のセッションに参加していますが、CTIでのセッションは珍しいのではないでしょうか?CTI/Bob Jamesの作品では定番のEric Gale(G)Gary King(B)Steve Gadd(Ds)Richard Tee(Key)Ralph MacDonald(Perc)という布陣のリズム・セクションもいいのですが、Harvey Masonのしなやかなドラミングが一味違ったニュアンスを与えているのは間違いのないところでしょう。

実はかねがね思っていたことなのですが、この1974年〜1975年あたりがCTIサウンドの一つの分岐点ともいうべき時期なんじゃないかと思えて仕方ありません。70年代前半のソウル・ジャズ路線から、いわゆるブラック・ファンクの要素を多分に意識したリズムへの変化が顕著になってきているように思えます。本作はそういった意味からは過渡期的な作品と言えるかもしれませんね。おりしもR&B/ソウルがディスコ・サウンド・ブームに取って代わられようとしていた時期でもあり、またHerbie HancockのHeadhuntersの成功以来、Jazzシーンでもファンク・リズムを積極的に取り入れる風潮が強くなり始めた時期ということもあって、CTI/Kuduレーベルも時代に即した模様替えを行っていたとも考えられますね。そういった意味からもHarvey Masonの起用はじつに当を得たものといえるでしょう。そしてR&B/ソウル路線が本領と思われていたGroverですが、実はこのブラック・ファンク/メロウ・ファンクのリズムとの相性が実にいいんですよ!独特のサブトーンを駆使したもたるような黒っぽいフレージングとシンプルでメリハリのきいたファンク・ビートとの絶妙な相性、バランスのよさに目をつけたあたりは、さすがCreed Taylor/Bob Jamesの眼力は大変なものといえるでしょう。ジャジーな1.豊かなストリングス・サウンドに包まれたメロウなバラード作品の2、ポップなメロディ・ラインとブルージーなR&Bテイストとファンク・テイストのリズムがうまく噛み合った3、重いファンク・ビートとブルージーなメロディ・ラインがいい感じにマッチした4と、タイプの異なる楽曲ながらもアルバムとしてのトータルなイメージはすっきりと統一がとれているあたりも流石といった印象ですね。

1.Bob Jamesのオリジナル。一見、Herbie Hancockっぽい感じのするメロディ・ラインで、ソロ・スペースの自由な構成等もHancockを意識しての作りを感じさせられますね。イントロからRalph MacDonaldのカラフルなパーカッション・サウンドとUpchurchのハーモニクスを使ったベース・ワークが光ります。全体にかなり自由でジャジーな作りを強く意識させられますが、Masonのたたき出すファンク・ビートとUpchurchのジャジーなベース・ラインが見事なマッチングを見せます。ソロはソプラノ→エレピ→テナー→ギターと受け渡されていき、Galeのギター・ソロの途中でフェイド・あうとしていきますが12分を越える大作となっています。ワン・コードのシンプルなソロ・スペースながらGroverのソプラノ、Jamesのエレピが、かなりモーダルでテンション感の高いソロを展開しています。特にピアニストとしてはモダン派のJamesのソロはかなり気合いの入ったものとなっています。GroverのテナーとGaleのギターはブルージーな持ち味を存分に活かしたソロで、ソプラノ/エレピのソロとは好対照をなしていますね。ワウワウを使ったGaleのギター・ソロは、この時期、あの個性的なギター・スタイルが既に確立されていたことを示していますね。それにしてもHeadhuntersで手慣れているとはいえ、ソロイストのプレイに応じて俊敏に反応し、プッシュするMasonのドラミングは、なかなかスリリングですし、相棒を務めるUpchurchのベースもなかなかのものです!こういったJazz/Funkのアプローチは、ある意味理想的といえるのではないでしょうか?個人的にはベスト・トラックはこの曲で決まりです!!

2.Billy Strayhornの美しいジャズ・バラード作品。ゴージャスなストリングス・サウンドに包まれてGroverのソプラノが切々と歌い上げるメロウなバラードに仕上げられています。正直言ってJamesのストリングス・アレンジは、やや押し付けがましさを感じてしまう部分があって、あまり巧いとは思わないのですが、こういった、やや甘さ過剰なシチュエーションでも、しっかりとそこにハマるプレイを聞かせてしまうGroverの順応性の高さには敬意を表したくなってしまいます(笑)。Masonのブラシを使った繊細なドラミングも、いわゆる4ビートでのプレイではないのに、なかなかジャジーな雰囲気を醸し出しています。まさに夢見心地といった中でGroverのソプラノ・ソロはなかなかいい出来栄えといえるのではないでしょうか?

3.Ralph MacDonaldのオリジナル。イントロのエレピ&ギターのパターンで、すぐそれとわかるGroverの代表的ナンバーの一つですね。さんざん耳に馴染んだナンバーではありますが、やっぱり覚えやすいメロディというのはヒット曲の絶対条件ですからね。テナーによるブルージーなテーマに続くGaleのギター・ソロは、これぞまさに「泣きのGale節」の真骨頂でしょう!!耳にタコができる程聴いて食傷気味になってしまったGale節ではありますが、その愛すべきスペシャル・ワン・パターンがこれほど格好よく決まっているのはそうそうはないでしょう!続くGroverのテナーも負けず劣らず部るーージーな雰囲気いっぱいに乗ったソロを展開していますね。Groverのプレイもかなりアクが強い方なのでアルバムを通して聴くと結構飽きてくるのですが、さすがCreed Taylor、同タイプながらGaleのギター・ソロを挟むことで目先を変えて聞きやすくしているのはさすがですね。David Sanbornのアルバム・プロデュースにこういう気のきいたプロデューサーがかんでいたらなあ、とつくづく思ってしまいます(笑)。それにしてもこの曲は懐かしい!!「Winelight」ヒット後の羅イヴ映像でも演奏していますので是非!!Gadd/MacDonaldのアンサンブル・ソロやAnthony Jacksonの協力グルーヴ等、見どころ、聞きどころ満載ですよ!

4.Grover Washington Jr.自身のオリジナル。いかにもBob Jamesらしいストリング&ホーンの使い方ですねえ。それにしてもベース・フレーズをそのままリフにしたようなどうってことない曲なんですけど、一発モノのソロになると、これがなかなかどうしてずっしり重たいファンク・ビートとGroverのブルージー&ファンキーなテナーのブロウが絶妙のブレンドで迫ってくるのに聞き入ってしまいます。延々と、そして淡々と続くファンク・リズムに乗せてGroverのテナー・ソロだけが延々とフィーチャーされています。1stソロも地中でフェイド・アウトする2ndソロもさして大きなアプローチの違いがあるわけじゃなし、できればここでJamesもしくはGaleのソロをフィーチャーしてくれてたら、最後まで気を抜かずに聴けるんですけどねえ(笑)。ここでのMasonは、あまり自由度を与えられていない感じで、ちょっと窮屈そうに聞こえてしまいますね。

このファンク・ビートの台頭と機を一にするかのようにBob JamesはCTIから離れ自己のレーベルTappan Zeeを立ち上げ、CTIはJoe Beck/David Matthewsをその後任に据えることになります。しかしながら、これ以降のCTIは有能な才能をシーンに送り出しはするものの、急激にシーンの中心としての求心力を失うようになっていきます。そして本作の主役であるGrover Washinto Jr.は本作以降、水を得た魚のように快進撃を続け、「Winelight」の空前の大ヒットへと向かうことになるのです。


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