◆Don Gtolnick/Hearts And Numbers◆
〜Featuring Michael Brecker〜

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Don Grolnick
Michael Brecker
Peter Erskine
Hiram Bullock
Will Lee
Marcus Miller

1.Pointing at the Moon
2.More Pointing
3.Pools
4.Regrets
5.Four Sleepers
6.Human Bites
7.Act Natural
8.Hearts and Numbers

1985年作品

●ワーナー・パイオニア/アルファ/HIP POCKET/WHP-28033(LP)
●Musicians●

Key.Don Grolnick /Clif Carter
G.Hiram Bullock/Bob Mann/Jeff Mironov
B.Tom Kennedy/Will Lee/Marcus Miller
Ds.Peter Erskine/Steve Jordan
Ts.Ss.Michael Brecker

●コメント●

 1970年代からJames TaylorやCarly Simon、Linda Ronstadt等々といった大物シンガー達のサポート・ミュージシャンとして、またDreams〜Brecker Bros.、David Sanbornのバンド、80年代に入ってからはStepsへの参加で知られるキーボード奏者Don Grolnickの1stリーダー作が本作「Hearts And Nimbers」です。80年代前半には多忙なセッション・ワークからいったん身を退き、そのインターバルの後に満を持して制作したのが本作です。ライナー・ノーツによると何とこのアルバムGrolnickの自主制作との事で、おそらくは自らの指向する音楽を商業ベースに左右されず表現したいというGrolnickの強い意志の力が働いての事と思います。そしてそのGrolnickの心意気に感じたかのように、かねてより親交の厚いNYの腕利きミュージシャン達が集結、非常に充実した内容を持つアルバムに仕上げられています。

 本作はGrolnickのとても個性的な楽曲を、親友Michael Breckerをフロントに据えて聴かせるという形をとっています。基本的にはJazzの方法論をベースにしながら、編成やリズム等は4ビートという枠から介抱され、シーケンサーをはじめとする日進月歩の進化を続けるデジタル・テクノロジーも積極的に取り入れた、いかにも80年代半ばの作品らしいエレクトリック・ジャズのスタイルをとっています。とはいってもこれ見よがしに打ち込みのダンス・ビートを強調するような音楽ではなく、極力自然な形で、そう、自らの表現したい音楽の境界線を踏み越えない、枠組みといった感じの遣い方がなされています。とてもナチュラルなコード進行の上に、如何にもGrolnickらしいユニークなメロディが乗り、類型化されたリズムとは一風異なるニュアンスを感じさせるリズムが一体となって、時にはほのぼのとした味わいだったり、時には陰影を感じさせる雰囲気だったりと、Grolnickの心象風景を映しだしているかのようです。

 参加している腕利きミュージシャン達も、個々の持ち味は残しながらも、しっかりとGrolnickの表現したい音楽に向けて、実に脇役に徹したプレイで貢献しています。それはフロントマンのMichael Breckerについても同様の事が言えると思います。楽曲の持つ狙い、雰囲気を表現するために細心の注意を払いながらのプレイといった感じがとてもよく蔦わってきますね。ただGrolnickの作品集としての完成度の高さとは裏腹に、Jazzの持つライヴ感というか、バンドの空気感というか、そういった空気はとても稀薄になってしまっている気がします。別にポップできゃッちーなナンバーがなくても、この空気感だけはもっと残しておいて欲しかった気がしてしまいます。

 本作の後Grolnickは、作編曲、プロデュースといった活動に力点を置き、従来に比べるとかなりJazz寄りにシフトした活動を展開していく事になります。

1大きく立てに揺れるリズムを強調したパートと内省的雰囲気のストリングスの響きのパートが交互に顔を出してくるナンバー。生々しい感じの録音の割には、とても抑制のきいたサウンドといった所でしょうか?テナーとギターのユニゾンでテーマが演奏された後、Michaelのテナー・ソロがフィーチャーされています。重めのレゲエのリズムに乗せてのMichaelのテナー・ソロは、これといって目新しいアプローチが見られるわけではありませんが、音色や抑揚に気を配ったプレイといった印象がしますね。リズムが代わってからのエンディングにかけてのブロウの方がいい感じですが、すぐフェード・アウトしてしまうのが残念ですね。

2.スチール・ドラム風の打ち込みパターンに乗せてのMichaelのフリー・ブロウイングから始まるナンバーです。終始リズム楽器は入ってこずにシーケンス・パターンに乗せてのプレイではありますが、ここでのMichaelのモーダルなアプローチは後のソロ・キャリアをスタートさせてからのプレイとかなり重なる印象を受けます。シーケンス・パターンとのバランス、折り合いを考えながらのプレイが意外と新鮮に感じられたりしますね。

3.これはたゆたうようなゆったりとしたグルーヴに乗せて、Stepsでも取り上げられているナンバーが演奏されています。聴き鳴れた曲ではありますが、幾分フュージョン風ではありますが異なった雰囲気を感じる事ができます。ここではGrolnickのアコースティック・ピアノ・ソロがフィーチャーされていますが、そのタッチ、粒立ちの良さ等からも、Steps以来のGrolnickのピアノに対する取り組みが透けて見えるようなプレイを聴く事ができます。ここではMichaelはテーマを吹いているだけでソロはとっていません。

4.ゆったりとした静かでアコースティックな響きが印象的なナンバーです。ここではGrolnickのアコースティック・ピアノとMichaelのテナーが大きくクローズ・アップされています。表情の豊かさを増したGrolnickのピアノが描き出す美しい世界は、もはやJazzであるとかないとか、そんな地平は完全に超越してしまっているかのようです。Michaelの情感豊かなテナーのトーンとアコースティック・ギターの響きも、あくまでもGrolnickのピアノの引き立て約二徹している感じですが、その抑制のきいた美しさがまた何とも言えなく良かったりするんですよね(笑)。本当に美しい音世界に心が洗われるような気分にさせられますね。

5.訥々とした感じの如何にもGrolnickらしい雰囲気のJazzピアノから浮かび上がってくるシンセ&ギターのサウンドが違和感なく溶け合っている美しいナンバーです。ここではMarcus Millerのスラップ・ベースをフィーチャーしたフュージョン仕立ての演奏となっていますが、この楽曲の雰囲気はMike MainieriやStepsのサウンドの雰囲気とかなり共通点を感じますね。とてもいいメロディ・ラインを持ったナンバーなのですが、リズムとのかねあいでちょっと通俗的な感じになってしまってるのが惜しいですね。ここでのMichaelのテナー・ソロも冒頭は面白いのですが、次第にパターン化されたいつものプレイになってしまっている感じなのが残念ですね。

6.アルバム中最もテンポの速い、ドラマチックな雰囲気/構成を持ったナンバーです。テーマ武はSteps〜Steps Aheadのサウンドとかなり重なり合う部分も多く見受けられますが、ドラムだけをバックに荒々しいブロウを聴かせるMichaelのプレイは彼のソロ2作目を彷目「Don't Try This At Home」を彷彿とさせる様なエキサイティングな演奏となっています。短いHiram Bullockのギター・ソロもフィーチャーされていますが、このトラックは完全にMichaelのソロで決まりです!ここでのErskine&JordanのドラムもMichaelのプレイをとても触発するようなプレイで素晴らしいですね。

7.今となってみるとここでの打ち込みのドラム・サウンドは、まるでデモ演奏でも聴いているような感覚ではありますが、当時は無機的な不意気を演出するのによく使われたものです。しかしメロディはとても素晴らしく、ポップな雰囲気も十分に漂わせていて、より歓声された形での演奏を是非とも聴いてみたかったですね。こういったちょっと翳りの或る感じのメロディを更かせるとMichaelはもう天下一品ですね。テナー・ソロ自体はごく平均的な出来ですが、唐突に翔びだしてくる感じの、如何にもHiramらしいギター・ソロがここではアクセントの役割を果たしていますね。

8.ラストは再びGrolnickのアコースティック・ピアノを大きくフィーチャーしたナンバーです。SE的にシンセの音画使われていますが、基本的にはGrolnickのソロ・ピアノ・パフォーマンスです。雰囲気的にはJazz的というよりも、所謂ニュー・エイジ的な雰囲気が強いかもしれませんが、明らかにピアノ二夜表現力が飛躍的に向上しているのがわかりますね。この手のクラシック的なアプローチは、かなりのピアノの腕があっても案外陳腐になってしまったりするものですが、ここでのGrolnickはしっかりとアルバムの最後にふさわしいエピローグを奏でています。

 個人的には、決して名盤等と持ち上げるつもりもありませんが、過去においてキーボード奏者としての実績を罪ながらも、Stepsでは正直格違いといった印象さえ持ったGrolnickが、ここまでピアノと本気で向かい合ってきた姿勢にとても感動させられたアルバムです。1996年、まだまだこれからといった時に他界してしまったGrolnickの人柄を偲ばせてくれる、そんなアルバムで、時折無性に聴きたくなるアルバムでもあります。



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