
| 1 Can't Help Lovin' Dat Man |
| 2 Water Is Wide |
| 3 Loose Bloose |
| 4 Never Will I Marry |
| 5 Tanha |
| 6 Amazon |
| 7 On Second Thought |
| 8 Down Snake Hollow |
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●コロンビア/Denon/COCB53532
●Musicians
Ts.Ss.Bob Berg
Key.Jim Beard
G.Jon Herington
B.Will Lee/James Genus
Ds.Dennis Chambers
Perc.Vo.Arto Tuncboyaciyan
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1970年代から1980年代にかけてのテナー・サックス・シーンは、ほぼ天才Michael Breckerの一人勝ち状態と云っても過言ではなく、Bob MintzerやBill Evans、そして本作の主人公であるBob Bergも、その並大抵ではない実力とキャリアの割には、決して正当に評価されてきたとは云い難い。BergにしてもMiles Davisグループに加わって以降はまだしも、1970年代、Horace SilverやCedar Waltonといったベテラン・ピアニスト達のグループでの音源も、今ではなかなか手に入れる事が難しく、そしてMilesグループを侍して後、意気投合したMike Sternとの活動もSternのAtlanticでの4作品はまだしも、Verg名義でのDENONレーベルでのアルバムは、長く廃盤の憂き目にあっていた有様で、2006年春に全5作品が完全限定生産ながら復刻されたのはファンにとって大変に嬉しい出来事であった。このDENON時代の5作品のうち1枚目から4枚目はSternとのコラボレーションが収められた物だが、本作は89年〜91年にかけて精力的なライヴ活動を行った後の、実質的にコンビを解消し抵抗初めてのアルバムという事になる。 正直言ってSternをフィーチャーした前4作品に比べるとかなり趣の異なるアルバムと云っていいのかもしれない。実際一枚目の「Short Stories」から4枚目の「Back Roads」にしても、その全てがStern〜 Bergの協力なインプロヴィゼーション/インタープレイをフィーチャーした楽曲ばかりだった訳ではない。コンテンポラリーなエレクトリック・ジャズにハードな即興演奏の要素を大胆に持ち込んだ側面とは別に、大らかでヒューマンなBerg独特の「歌」を感じさせるトラックが必ず収められていた。そしてその二つの要素が拮抗してきたのが4枚目となる「Back Roads」で、Miles Davisとの想い出を込めたこの作品がグラミー賞にノミネートされた事も本作への伏線となっていたのかもしれない。そしてもう一つはBerg〜Sternグループとして目指してきたスタイルは、ほぼ当初目指した地平に到達し、Bergが新たな方向性を模索するための第一歩だったのかもしれない。というのもBergとの双頭バンドでの演奏スタイルはその後もSternが継承し、Bergはこの後Chick Coreaとの活動やStretchレーベル出新たな道を歩み始める事になるからである。面白いのは別々の道を歩み初めて以降の二人ともが、引き続きJim Beardの協力の下アルバム制作を続けている点だろう。Sternの音楽は従来路線を整理し洗練させる事から「歌」へと迫るアプローチを、そしてBergにはよりヒューマンでストレートな形の「歌」へのアプローチを提案した、その陰にBeardの存在を意識してしまうのが至極当然ではないだろうか?そしてある意味Sternとは対照的なギタリストJon Heringtonを起用しているあたりも非常に興味深い。何故ならMichael Breckerも、復活Brecker Brothersも、Sternの後任としてHeringtonが参加しているからである。 本作にはBeardの他、すっかりお馴染みのDennis Chambers(Ds)やWill Lee(B)に加え、復活Brecker BrosでブレイクしたJames Genus(B)、そしてユニークな個性を持つパーカッション奏者Arto Tuncboyaciyanの参加も大きな役割を果たしている。ちなみにこのTuncboyaciyanはBergのStrechレーベルからの2作目となる「Riddles」や、2000年代に入ってからのSternの「Voices」、「These Times」といったワールド・ミュージク指向の作品にもフィーチャーされている人物であるのだから、またこれもなかなか今日深い人脈と云わざるを獲ない。 1.Tuncboyaciyanのユニークなヴォイスとパーカッションをフィーチャーし、ゆったりとした大らかなリズムに乗せて朗々と歌うBergのテナー。いわゆるジャズやフュージョンのそれとは一種異なるシンプルなサウンドに包まれて、ただひたすらにメロディに想いを込め、自分の歌世界を作り上げていくBergの姿が大きくクローズ・アップされる。シンプルに、しかしその中に大らかで逞しいBergらしい豪快な味わいをしっかり残しているのもまた見事。Heringtonのギターは決して個性的とは想わないがナチュラルで伴奏にはうってつけの人選だったのかもしれない。全体に控え目ではあるがBeardのツボを心得たアレンジ&バッキングやバンドのグルーヴ感もしっかりと感じられるのも良い。 2.これまたゆったりとしたテンポに乗せたメロディスアスなナンバー。普通テナーでこういったメロディを吹くとR&B調のファンク・バラードみたいに聞えてしまう事が多いのだが、まるでアコースティックなロック・バラードを謳い上げている様な味わいに驚かされる。そして間奏部分でフィーチャーされるHeringtonのギター・ソロもパワフルでありながらドライなリズム感覚、そしてアコピ&ハモンドの響きを巧く活かしたBeardのキーボードも一つの方向を目指している感じがとてもよく伝わってくる。終盤にかけて盛り上がりを見せるBergのテナーも、決してテクニカルなプレイには走らずにストレートに謳い上げるプレイに徹しているのがまた功を奏している。正直云って、最初はあまりピンとは来なかったのだが、聴き込めば聴き込む程に味わい深さが滲み出てくる演奏だ。 3.ゆったりとした大らかな4ビートかと思いきや敢えてスウィング感を抑えた不思議なグルーヴ感を感じさせる、これまた不思議な感覚を放つナンバー。ブルージーなメロディをBergとHeringtonのギターのユニゾンで聴かせた後にフィーチャーされるBergのテナー・ソロは一見伝統的なJazzやR&Bスタイルを踏襲したアプローチと聞えルのだが、この不思議なロックされたようなグルーヴ感の上ではある種独特の雰囲気を醸し出してしまうのだから面白い。続くブギウギやラグタイムといったオールド・スタイルを思わせるBeardのピアノ・ソロもその空気をしっかりと持続しているのがなかなかいい。ごくごく短いChambersのドラむ・ソロを挟んで再びテーマにと戻っていくのだが、このリズム感覚を演出しているChambersとGenusのリズムの存在がとても大きなトラックと感じた。 4.ようやくかつてのBerg〜Sternバンド的なエレクトリック・ジャズ的なナンバーかと思わせるが、Chambers〜Leeのリズム・コンビのグルーヴ感は確かにそうなのだが、非常に淡々とした感じでBergをそのグルーヴから敢えて隔離するかの様なキーボード&ギターのサウンドが印象的。もちろん途中でフィーチャーされるBeardのエレピ・ソロも決して熱くなったりはしない。しかし、次第にグルーヴに反応して熱くなりはじめるあたりでテナーに持ち替えさせて、終盤のブロウで溜めていた物を一基に噴火させるかの様な演出と見た(笑)。キーボードのサポートも前半と後半では全然異なって聞えルからだ。そしてテナーに持ち替えてからも一気に大爆発せずに徐々に演奏をピークへとコントロールしていくBergのプレイにも、以前とは決定的に異なり、改めてBergの秘めた決意の様のものを感じずには居られない。 5.再び静かで穏やかに、しかしどことなくエキゾチックでパワーを秘めたメロディがBergのテナーで演奏されるナンバー。スパニッシュ的な感覚にも聞えたり、また忠勤投擲な香りも感じたりする部分もあたりするが、決定的にそちらの方向へ走り出すという訳でもないあたりが、以前とは決定的に違う所で、最初は少々ジレッタクも感じてしまうかもしれない。ここではBeardのアコピが先発ソロを聴かせているが、それにしても決定的にスウィングする4ビートへとは走り出さず、それはBergのテナー・ソロへと引き継いでからというのも、また実に凝った仕掛けではないだろうか?そしてBergのテナー・ソロでもやはり伝統的な4ビートのスウィング感とは微妙に異なる感覚を漂わせているあたりもまた非常にユニークだ。どうも一味違ったJazzのスウィング感、グルーヴをわざと狙っている様に思えてならない。そしてここでも非常に抑制の効いた、それでいて十分にオアワフルなBergのテナーの新たな魅力を感じさせられてしまうのである。 6.この同期リズムを決してそれ臭く感じさせずにさりげなく使いこなすあたりのテクニックはさすが名手Beardの仕事といった感じだ。ヒューマンなグルーヴを意識させながらも決してヒート・アップしたりせずに何処かクールなサウンドに仕上げてしまう事に関してはこの人はピカイチのプロデューサー/アレンジャーと云っていいだろう。ここでは珍しくたっぷりしたサイズでのかなりRockタッチのHeringtonのギター・ソロがフィーチャーされていてなかなかの好演ぶりを聴かせている。そして終盤はロックから解き放たれたかの様に煽りまくるChambersのドラムに呼応してストレートにハードなブロウへと突き進む「熱い」Bergが蘇ってくる。 7.パーカッションとベースとテナーを中心にJazz風な様で、そうでない様な不思議な感覚のメロディと幻想的で透明感のある、ややスムース・ジャズっぽい雰囲気を漂わせるという、Jazzとスムース・ジャズの微妙な境目を感じさせる演奏が展開されていく。ここでは玩具っぽい音色のBeardのエレピ・ソロもそんな雰囲気を十分に意識させてくれるし、テーマはテナーで、ソロはソプラノでと異なるニュアンスを意識的に吹き分けるBergのプレイも非常にクールだ。そしてここではじわじわとエネルギーを蓄積していく様なパーカSッヨンのリズムが演奏に非常に大きく貢献しているように聞えてならない。 8.これも決してJazz的というナンバーではなくポップ的、ロック的な楽曲の雰囲気を強く感じさせるメロディ・ラインが印象的なナンバーだ。そしてBergという人はこういったメロディでも全く違和感なく自分のモノにしてしまう類稀な才能を持っている人なのだろう。終始Bergのテナーはヴォーカリストの様な表現を意識している様にも感じられてならない。ここではソロはHeringtonのロック・タッチの間奏に任せ、自らはメロディ&フェイク的なプレイに専念しているあたりからもそういった意気込みが伝わってくる。そしてそういった意図を汲み取って決して煽り過ぎず、引っ込み過ぎずといった絶妙の匙加減を感じさせるリズム・セクションが実に見事だ。地味ながらとても職人的な味わいを感じさせる好サポートと感じた。 新しい方向性を強く打ちだした作品ではあるが、本作を最後にDENONレーベルを離れたBergは、その後Jazz回帰を強く印象づける作品「Enter The Spirit」をStrechレーベルからリリースする。しかしStretchレーベルの方向性もイマイチ定まらず2枚目の「Riddles」では再び本作の路線へと回帰した様なサウンドを聴かせたり、はたまたスタンダード作品を吹き込んだりと、如何にもBergらしい風の吹くまま気の向くままといった自由なスタンスの活動が続く。結局Stretchには3枚のアルバムを残しただけで、結局Bergが何処へ行こうとしていたのかは謎のまま彼は旅立ってしまう事になる。次は一体いつになったら復刻するやも知れぬこのDENON時代の作品、ファンならば是非とも早いうちのご購入をお勧めする。ただし、熱いBergじゃないとBergじゃない、と云う方には正直決してお薦めのアルバムとは云えない作品かもしれない。 |