
| 1 Second Sight(B.Berg) |
| 2 Snapshot(C.Corea) |
| 3 Promise(C.Corea) |
| 4 Nature of the Beast(B.Berg) |
| 5 Sometime Ago(S.Mihanovich) |
| 6 No Moe(S.Rollins) |
| 7 Night Moves(B.Berg) |
| 8 Blues for B辿la(B.Berg) |
| 9 I Loves You, Porgy(G.Gershwin) |
| 10 Angles(B.Berg) |
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●Stretch/STD 1105
●Musicians
Ts.Ss.Bob Berg
P.Chick Corea(2/8/9)/Dave Kikoski(3/4/5/10/7)/Jim Beard(1/4)
B.James Genus
Ds.Dennis Chambers
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1993年、古巣DENONレーベルを離れChick Coreaの主宰するレーベルStretchへと移籍したBob Bergの、通算8枚目となるリーダー作が本作「Enter The Spirit」だ。盟友Mike Stern(G)との双頭バンドを経て少々スムース・ジャズ的な路線へと方向を転換したかに見えたBergだが、本作では想像以上に骨っぽいJazz指向のサウンドを聴かせてくれている。参加メンバーも実に凄腕揃い。Berg〜Sternグループ以来の付きあいであるDennis Chambers(Ds)に前作「Vertual Reality」にも参加しているJames Genus(B)の二人は、当時、復活を遂げたBrecker Brosのメンバーとして参加、もっとも乗りに乗っているリズム・コンビと言っていいだろう。そしてピアノにはRandy Breckerクインテットの同僚でもあり、長くBergの片腕として活躍することになるDavid Kikoskiを中心にプロデューサーでもあるJim Beard、そしてレーベルの主宰者でBergを自己のカルテットにBergを迎えることになるChick Coreaと、実に豪華な顔触れだ。お得意のコンテンポラリー感覚の強いナンバーから、オーソドックスなスタンダード・ナンバーまで、実にバラエティに富んだシチュエーションでBerg本来のJazz魂を炸裂させているのも実に嬉しいところだ。 Bergにとって久々のJazz作品という点がやはり最大の関心事だ。正直DENON時代の5枚のアルバムにしても、Sternのリーダー作にしても、Berg〜Sternグループのライヴ音源の様な、豪快でふっ切れた様に拭きまくるBergの本領はイマイチ見えて来なかった。Niels Lan Doky(P)の「The Truth」やRandy Brecker「Live At The Sweet Basil」、そしてBerg〜SternグループのBootleg音源の「Games」といったライヴ演奏にこそBergというミュージシャンの本領が表れているのかもしれないが、本作でのBergも想像していた以上に素晴らしいプレイを聴かせている。まさに新天地での再出発とも言える手応え十分のプレイを満喫させてくれる。James Genusのアコースティック・ベースはさほどとも思わないが、とにかくChambersのドラミングが実にいい!Pワー・ドラマーというイメージが先行していた感のあるChabersだが、十分にJazz感覚を持ったしなやかなドラミングが印象的だ。そして何と言っても珍しいChick Coreaとの共演が2曲で聴く事のできるのもまた非常に興味深い。また、Beard、Kikoski、Coreaの三人の実に的を射た起用も見事だ。そして、やはりChick Coreaの存在感の大きさが、中でも際立っているのはさすがだ。 1.オープニングは最初、「ん?DENON時代後半のアコースティック版か?」といった、如何にもBergらしい何処か牧歌超とでも言う様な雰囲気の楽曲だ。しかしながらChambersのかなり自由に動き回るドラミングはそれとは確かに一味違っている。ただ楽曲のメロディがなかなか個性的であるため、かなりBergのソロ自体も楽曲に縛られてしまっているというか、完全にソロ空間を構築する所まで至っていないのは少々残念な点だ。続くBeardのピアノ・ソロも確かに巧いし、美しいとは思うが、決してJazz的ではなく、フュージョン仕立てのアルバムのカッチリした構成の中で聴いている様な印象で、これまた少々物足りない。決して悪い楽曲、演奏とは思わないが、アルバム冒頭としては少々インパクトに欠ける気がしてならない。 2.一聴してChickのオリジナルと判るナンバーだ。Chambersのドラムスからユニゾンでテーマが提示され、Berg〜Coreaとソロが受け渡されて再びテーマという構成だ。BergのソロではBergの呼吸は百も承知とばかりにChambersが果敢なプSッユを見せる。Bergのソロは必ずしもそうエキセントリックという訳ではないが、低域から高域までフルに駆使して慌てず騒がずフレーズを組み上げていく、実に堂々たるプレイといった印象だ。Chickもリズム面のみならずBergを度々誘う様にソロを巧みにプッシュする。Chickのソロはその流麗なテクニックもさることながら、リズム面においても音遣いの面においても完全に独自の世界を極めているのを再認識させられる。ChickのソロではさすがのChambersも呼吸が掴みきれないのか、さほど派手な動きは見せてはいないが、さすがに抜群の運動神経でさりげなくインタープレイを聴かせている。ChickのMichael Breckerを迎えての名作「Three Quartets」を思い浮かべてしまう、なかなかの名演と思う 3.一転して非常に優しく美しいメロディを持つ、これまたChickのオリジナル・ナンバーだ。一件スタンダード・ナンバーかと思わせる曲調ながら、随所にChickらしいメロディ・センスがちりばめられた佳曲だ。こここではピアノはChickではなくKikoskiが担当している。先発ソロを取るBergは、なかなか緻密なソロ構成を聴かせている。テナー本来の男性的な逞しいフル・トーンでありながら、しっかりと曲調を把握して、緩急自在のアドリブを展開している。ここでのKikoskiはリリカルなプレイからモーダルでテクニカルなプレイまで、実に見事なプレイを聴かせているが、やはりChickのプレイの直後というのはキツい(笑)。こういう落ち着いた4ビートにおいてもChambersのドラミングはしなやかに適応していて決して違和感を感じさせないのはさすがだ。ここれはアコピの反復パターンをKikoskiが、そしてエレピでの自由なプレイはBeardが担当している。しかし演奏自体は非常に自由な即興空間が展開されていて、かなりスリリングでエキサイティングな展開を見せる。かなり自由な絡みを見せるChambersとBeardのプッシュを受けてBergのテナーもかなりヒート・アップしたプレイを聴かせてくれる。モチーフを繰り返しながら、メンバーの出方をうかがいながら、また自らしけけながら徐々に熱くなっていく様はまさに手に汗握る展開だ。フリーク・トーンまで駆使してのBergのソロはまさに圧巻と言えるだろう。そして続くChambersのドラム・ソロがまた熱い!もうJazzだとかRockだとかFusionだとか、そんな事おかまいなしにメチャメチャに恰好良い!凄い! 4.アルバム中ではもっともコンテンポラリーな感覚の強いナンバーと言っていいナンバーだろう。 5.この曲は正直言って意外な印象を受けた。まさかFrank Sinatraの名唱で知られるこの曲をBergが取り上げるとは・・・。Sinatraの歌を知っている方なら、ここでのKikoskiのピアノ・ソロが単にトラディショナルなジャズ・スタイルをなぞっているのではなく、 Sinatraの歌のストーリー性をピアノで再現しようとしているのが感じとれると思う。Bergのソプラノも一件伸び伸びと無関係にソロを組み立てている様に聞こえるが、やはり原曲の持つ味わいを非常に大切にしたプレイと私には感じられてならない。意外に思われるかもしれないが、個人的にはBergのソプラノのプレイの中ではもっとも印象に強く残るナンバーと思う。 6.テナーの大御所Sonny Rollinsのオリジナルで、ここではGenus〜Chambersとのピアノレスのトリオで演奏されている。もう出だしからRollinsを強く意識した野太いトーンで嬉しくなってしまう。やはりBergのテナーのトーンを聴いて最初に思い浮かべたのがRollinsだっただけに、「ああ、なるほど!」と思う。そしてこのとりオというシチュエーションはVillage VanguardでのElvin Jonesとの共演を連想してしまうのも当然だろう。とにかく豪放磊落なRollinsの味わいに少々モダンな味わいを持ち込んだプレイはなかなか興味深い。ChambersとBergのソロの掛け合いもなかなか面白いが少々Chambersが饒舌過ぎて子供っぽいプレイに聞こえてしまうのが少々残念だ。 7.Kikoskiがエレピをプレイしてはいるものの、決してフュージョン的な演奏とは感じさせない。ここではBergはソプラノをプレイしているが、この人のソプラノ・プレイは基本的にテナーと同様で、ソプラノ=高速でテクニカルなColtrane的なプレイといったイメージはない。あくまでも歌心を大切にした、いかにもBergらしいアプローチと言っていいだろう。楽曲の雰囲気と会わせて、アルバムに変化を持たせるといった配慮はやはり有り難い。ここでの先発ソろはKikoskiのエレピ。アコピでも感じる事ではあるが、この人のソロの至る所にChickの強い影響が見て取れる。フレーズの細かい歌い回しやバッキングでの音の重ね方や響かせ方にも十分その影響が感じ取れて面白い。Genus〜Chambersのリズムも健闘を見せているが、正直Genusのベース・トーンがイマイチに思えてならない。 8.これも2同様Chickのオリジナルかと重い気やBergのオリジナルだが、恐らくアレンジにChickも一役買っているのだろう。ここではChickが先発ソロを取っている。軽やかな入りから次第に盛り上げていく、いかにもChickらしい巧みなソロ構成だが、ここではChambersも遠慮会釈なく果敢なプSッユを見せていてかなりスリリングな演奏を聴かせてくれる。Chickのソロで存分にヒート・アップした所でBergのテナー・ソロに引き継がれるが、エモーショナルにエキサイティングなブロウと店ながらもしっかりと抑制の効いた展開でただのイケイケのソロにしてないのがいい。終盤はChick、BergとChambersのソロの掛け合いがフィーチャーされている。ChickやBergのソロとそのフレーズに呼応したフレーズで応えるChambersのプレイや、フリ=ク・トーンを交えた咆哮一歩手前のBergのプレイにもゾクゾクさせられる。 9.数多くのミュージシャン達に愛され演奏され続けてきたGershwinの珠玉の傑作バラード。ここではBergのテナーとChickのアコピによるデュオ演奏で演奏されている。二人とも純粋なソロを取っている訳ではないもののBergの吹くメロディ、フェイクにChickが寄り添う様に伴奏をつけていく。ただそんな演奏の中でも呼吸のあった静かで穏やかな対話が印象的に感じられる演奏だ。原曲の美しさを活かしながらの実にしっとりした密度の濃い対話は見事だ。 10.8でも感じた事だが、この曲も一瞬Chickの作品かと思わせる様なナンバーで、恐らくBergがChickとの共演を想定して書き下ろした楽曲なのだろう。ここでのピアノもChickではなくKikoski。先発のKikoskiのソロはChickを彷彿とするプレイで、かなり素晴らしいソロだが、Chickのダイナックさにはやはり惜しくも及ばないのは致し方のないところだろう。それにしても音の粒立ちといい、音色の美しさといい、やはりこの人も只者ではない。続くBergはここでも決して高速フレーズやフリーク・トーン、フラジオに依存することなく、実に誠実に、そしてパワフルに音を紡ぎ挙げていく。豪快にして緻密、まさにそんな表現がピッタリ来る様なソロ構成だ。Genus〜Chambersのリズムも十分にパワフルでしなやかな疾走感を感じさせてくれる。 個人的には純粋なBergのリーダー作としては「Another Standard」を筆頭に挙げるが、本作も決して見過ごせない素晴らしい内容を持っているのは確かだ。それにしてもBergの死後、決して数多いとは言えないBergのリーダー作がなかなか手に入り辛い状態となっているのが残念でならない。DENON時代の作品群は完全限定生産ながら2006年4月に復刻となったが、是非ともStretchからの3作品も復刻していただきたいものだ。是非ともBob Bergというテナーマンを追体験してみていただきたいと思う。 |