「福祉政府」への提言 6,7章
報告:大辺
 
第六章 地方分権的税財政システムの構築を     
− 新しい地方税原理・分権型財政ヴィジョン
第一節 地方分権的税財政システム
1 問題の所在
・国と地方で600兆円長期債務が累積。GDP比では120・9%に
・地方財政の危機も進行 91年の71兆円から99年の176兆円に急増
・箱物問題
・先進国間の比較 図6−1 公共投資偏重の国家
2 地方分権的税財政システム
・集権的分散システムから分権的分散システムへの転換が必要
・財源(税源)の拡充が欠かせない
・国庫補助金、負担金の整理と地方税の拡充が車の両輪となるべき
要点  
@住民は共同作業でセイフティネットを維持する A個人住民税の拡充
B財政調整の改革  C補助金の整理  D地方債:共同管理機構を作る
 
第二節対人社会サービスと地方所得税の論理
−「ワークフェア」
1 対人社会サービスの重要性
・地域社会では共同作業が欠かせない。労働提供義務を負う
・住民税が労働の代替物となる
・サービスの主体は地方政府
地方税改革では住民税を所得比例税に近づけ拡充する
2 対人社会サービス拡充の焦点
@多彩な生涯教育  A高齢者向けの介護などのサービス B保健医療、清掃
 
3 地方所得税の論理としての「ワ−クフェア」
・どのような地方税が構想されるべきか?
・財産税と人頭税がふさわしいか?
イギリスの例、逆進性 財産税だけでは不足する
原則 対人社会サービスに住民が等しく貢献すべき
労働に従事したならば失ったであろう私的利益を税金として
・再分配が目的ではないから、比例税率で・・
・21世紀の協力原理としての「ワークフェア」
サービス←→労働提供義務
 
第三節 個人住民税の拡充を中心とする地方税改革 41
1 地方所得税としての個人住民税の拡充
 
・自己決定権の確立のためには「歳入の自治」を
・住民税の基礎の上に築く
・「独立税」でなくてもいい
・国税(所得税)の税率をさげて、住民税の税率をあげる
2 事業税の所得型付加価値税化
・所得の発生の時点でも課税する 事業税の拡充、転換 所得型付加価値税
3 地方消費税の改革
・消費税は地域の税源としてふさわしい p245
・住民がコントロールできことが望ましい:負担感
4 課税自主権の拡大
・一括法により、2000年から 法定外目的税が可能に。
国の同意がいるが・・・
 
第四節 財政調整の必要性と地方交付税の改革248
1 財政調整の必要性
・幸福の追求、環境の保全は共通の願いでもあり、一体感の根元でもある
・地方交付税 ナショナルミニマムの実現のために
2 現行の地方交付税制度
・一般財源として重要。諸外国にも同様の制度がある
3 問題点とその解決の方向
・問題点  @地方債絡みの動的算定の廃止 A算定が複雑 B合併を誘導する
C自己決定できる仕組みを
 
第五節 国庫補助負担金の一般財源化へ向けて
・補助金の分類 国庫負担金:共同で責任を負う事業への支出 
国庫補助金:特定事業促進
委託費:事務代行料
・原則廃止で、一般財源化を
第六節地方債発行の規制緩和 258
・住民が負担するのに、大蔵省と自治省に関与して決定してきた
・監視は地方の負担を増やした
・分権一括法 2006年から協議制へ転換する
・発行には住民への説明が必要 住民投票も考えられる
 
第七章 三つの福祉政府と公的負担 265
第一節「三つの福祉政府」体系へのアフローチ
1 三つのサブシステムと財政
2 生活点と生産点における自発的協力の吸収
・政治システムの問題点も意識されていた。エリザベス救貧法16世紀後半
・教会など社会システムの役割が大きかった
・しかし、市場経済の拡大によって衰退した
・生産の場における共同組織が生まれて来た
共済活動+政治システム=社会保障基金 1893年 ビスマルク健康保険
自治が芽生える。賃金保障に注目すべき。
3 現金給付による生活保障
・現代システムは貨幣給付が特色になる
・現金給付は所得税と法人税を基幹税とする租税制度によって裏付けされた
 
第二節「三つの福祉政府体系」による生活保障
1 福祉国家型租税体系の動揺
・1980年代のセイフティネットが綻んできた原因 先の基幹税制度が揺らいだこと
*大辺:それは随伴した現象でしかなかったのではないか?
・スタインモの指摘:負担率が高いと経済が停滞する
・原因は・・・グローバル化 資本が逃避するからである。。(p275)
強者への課税ができなければ、弱者への給付ができない
 
2 地方政府による現物給付へのシフト
・セイフティネットが補修されてないと競争の領域も活性化しない p276
・補修の方向は ○現物給付の重視 ○社会保険を賃金代替に純化させる  ことが
望ましい。
・地方政府が現物給付を行わざるをえない。地方分権も必要である
日本の地方分権は中央の「財政再建」の一環でしかなかった
・曲がりなりにも地方分権がいわれるようになった原因はゴールドプランの策定がある
転換の象徴 現金→現物(サービス)
 
3 賃金代替としての現金給付
・現金給付を連帯の基金から・・・
・社会保障基金は生産の場の連帯の現れでもあり、賃金代替給付をすべき
・日本の現実は 現金給付縮小をめざした
・社会保険は正当事由で失った賃金の保障でなければならない
・日本では著しく動揺している
 
4 生産点における「協力の政府」の確立
・改革を構想するには 社会保障基金の原点を大事に・・
・「自治」が重要である
・新たな公共空間の設計でもある
・日本では 企業内福祉に「転化」している
・社会保障基金は中央政府と結びつくべきであった p282
・年金は賦課方式が望ましい
・日本における「税法式」の提案は社会保障基金の基金の否定にもつながる
・介護、医療保険にも現金給付があってもいい p284
 
5 「三つの福祉政府体系」の確立
・地方政府がになうべき給付は家族とコミュニティが担ってきたもので立地点サービスと
配達サービスに分類できる
立地:ケア付き住宅  配達サービス:ホームヘルプなど
*大辺:分類の意義は?
・現物給付の財源と自治が必要 *日本ではサービスの過小供給傾向にある
・財政力格差と中央政府の役割・・・財政調整制度(交付税)
・補助金は地方政府が自己決定権を持つ地方税に置換されるべき
・中央政府は社会保障基金にミニマム保障をする責任がある p288
 
第三節「三つの福祉政府体系」の公的負担
1 ユニバーサル・サービスとユニバーサルデザイン
・「三つの政府」は財政需要は激増する
教育、医療、福祉、
・共同作業による生活保障インフラの整備も責任がある
汚水処理、塵芥、ゴミ処理など
・ユニバーサルデザインに基づく安全と快適の保障
こうしたことが財政需要を激増させる
・地方税改革もこのことを考慮して描かれなければならない p291
 
2 税源移動性基準と政府機能基準
・地方税拡充のシナリオは悲劇でおわる・・・ 入退自由がそうさせる
・税源の移動可能性と配分論 国と地方:従来の議論 移動するものは国へ。
・利益原則が前提となっている議論でもあった
・応能負担論は政府機能の基準とする議論を導いた p292
ミーケルの改革で定式化
国税:能力原則  地方税:応益原則
政府機能による配分原則
・世紀末になって国もボーダーの管理ができなくなってきている
新しい税源配分論の構築が問われている p294
 
3「労務提供」代替としての地方税
・準公共財の供給の財源は「労務提供」の代替としての租税を充てる
準公共財:福祉、医療、教育
・比例所得税を基幹税に。転換も容易である  10%の比例税ではどうか。
・3兆円が移動する
・格差の問題も縮小する
4 協力原理に基づく地方税体系
・財源としては比例所得税だけでは不足する
・公共サービスの受益者である働きに来る人、経営者も納税すべきである
・所得型付加価値税が適当である→事業性を転換させる
・不足する税金は消費活動をする人々にも求めうる
・消費に比例した負担を 地方消費税の拡充で   
*大辺:住民の消費がもっとも大である
・生産、分配、支出という局面で課税する必要がある
5 賃金代替を支える社会保障負担
・社会保障負担は基金への拠出である
・代替給付とすれば比例税率の労働所得税となる
・資産所得は除外される←社会保障給付がないから
・消費税を社会保障の財源とする議論に関して
○企業の負担を減ずるだけ
○自主性がなくなる
○徴収の便宜性重視は自立性を弱める フランスの例
 
6 ミニマム保障を支える国税
・中央政府はミニマム保障が任務となる
・累進的な租税が相当である 国税としては課税最低限をあげる
・課税ベースは資産の増加分+消費 としたいが現実性に欠ける。
・経済力は、フロートストックの混合物である
・結論:フローとしての所得、消費。ストックしての資産に 累進税率で課税する
・法人税と所得税の調整問題
法人に留保分にも課税。税負担分は差し引く。
・消費税の増税分は地域福祉の財源とすべき
 
おわりに
・社会保障への協力がなくなると「競争原理」に「協力原理」が屈服する
・社会保障の縮小は市場の萎縮させる
・自治が可能な政治空間が欠かせなくなっている
 
あとがき
・進行するリストラ ・労働市場の分断化、階層化
・2025年を想像すると・・・ p316