竹中平蔵。当節、最も売れっ子の経済学者である。テレビに新聞に雑誌に、この人の名前の出ない日はないのではないか。
時代の息吹の最先端からの、そして日本の政治経済の中枢からの発信だった。それでいてその軽妙な語り口は、60分余りの時間をあっという間に奪ってしまった。
鮮度の乾かぬうちに・・・と、その要旨を筆者のセンスで切り取ったものをアップすることにした。
尚、大意は間違いではないにしても、小見出しや細部の言い回し等は、筆者の責任で著述した。
イズミヤ総研講演会 竹中平蔵「ソフト・パワー経済」講演要旨
2000.07.12
関西経済の感想
・過去、関西は様々なイノベーションの牽引役だった。ITイノベーションでの関西の出遅れ。
・足元だけを見ていたら蛙現象に陥る。

今回の総選挙結果の見方
・国民の選択は問題先送り。森政権は支持しないが存続は認めるという選択。
・政策よりも政治スタイル(閣僚の半数は女性にする等)を競うべき。
・省庁再編のポイントは内閣総理大臣の権限が強化されること。15名の内閣官房、5名の総理補佐官。
・経済財政諮問会議の設置と4人の民間委員の選任。これを機能させるために堺屋経企庁長官が留任した。

日本経済の現状
・二つの国がある。その二つの国のせめぎ合いの状況。
・海の国(競争圧力の真っ只中にありドラマチックに変化しつつある国)。IT革命という追い風が吹いている。
・山の国(政府の保護、規制、バラまきに守られた国)。亀井自民党政調会長は山の国の守り神?
・日本経済の再生策は海の国の成功事例を拡大し、山の国を吸収すること。
・企業の中にも、個人の中にも海の国の部分と山の国の部分があり、せめぎ合いがある。

バブル崩壊の後遺症
・バブル崩壊がなぜ経済成長率を落としたのか。この議論がきちんとできていない。
・どんなに優れたプロジェクトでも不良債権を抱えた会社には銀行は融資できないことの問題。
・不良債権処理を一刻も早く実行すること。

日本の財政赤字
・日本の財政赤字はGDP比12%にものぼる。政府のマイナスの貯蓄を、民間の貯蓄がカバーしている実態。
・いつまでも続かない。団塊世代が老後に入り貯蓄を取り崩し始めた途端、高金利になりインフレが進行する。
・財政健全化に向けて残された期間。日本の人口、2007年がピーク。2005年から労働力人口が減少化し経済成長率がダウン。それまでに財政健全化のメドをつけなければならない。

IT革命のキーワード「プラットホーム」
・インターネットのプラットホーム(接続端末)は、従来パソコンだった。だからその基本ソフトを抑えたマイクロソフトが勝利した。
・今後のプラットホームの多様化。iモード携帯、プレイステーション、デジタルTV等。
・家計簿ソフトも可能性がある。アメリカの税の自己申告での事例。日本でも来年から税のネット申告が可能になる。

日本のIT革命の未来
・村井純氏(慶応大の日本のインターネットの第一人者)の予測。「日本は間違いなく世界有数のインターネット大国になる」。
・ネット端末づくりの技術では、日本は世界で最も優れている。

IT革命と流通業
・IT革命の本質は取引コストを限りなく0に近づけること。
・IT化とはデジタル情報化。デジタルとは情報を数字に置き換えること。ヒトゲノムもデジタル情報化で可能になった。
・注文生産やワンツーワンマーケティングを可能にした。従来型の卸・小売は存続できなくなる。物の流れをプロデゥースする流通業に変身すること。

IT革命と世代交代
・かって日本のビジネスマン達はいいかどうかわからなくてもまず挑戦した。それが日本の成長の原動力だった。
・インターネットは誰でも活用すべきツールだとわかっている。それでも年配の世代は活用しようとしていない。
・50代以上の大企業の部長研修会での会話「我々は幸せだ。パソコンやインターネット等というものを扱えなくてもすむ 世代だから」。20−30代中心のベンチャー企業の会合での会話「我々は幸せだ。パソコンやインターネットを駆使して限りない挑戦ができるのだから」。
・挑戦しない世代の交代が迫られている。

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