毎年この時期にチェーンストア労組のOBと現役の懇親会がある。今回の会場は新幹線掛川駅が最寄駅の静岡県の袋井市のホテルである。いつも当日朝から出掛けて途中下車してどこかを観光することにしている。同じ会議に出席予定の三田在住の友人を誘った。懇親会当日の今日、友人とJR車内で合流して、今回の途中下車観光の目的地・近江八幡駅に昼前に到着した。駅の北口観光案内所で千円の「近江八幡・観光パスポート」を購入し、ぶーめらん通りと名付けられた大通りを観光の中心スポットを目指して北に向う。
 晴れ渡った初冬の穏やかな日差しの中を30分ばかり歩くと、白い板壁の昔ながらの校舎の風情を残した建物が見えた。正門の石柱には「近江八幡市立八幡小学校」の看板が掛けられている。すぐ近くの通りには「池田町洋風住宅街」があり、テレビカメラを抱えた撮影クルーが住民らしき人をインタビューしていた。この地に住みついた米国人・ヴォーリズが大正年間に米国式モデル住宅として設計した赤レンガ塀の街並みである。その西方の広大な敷地に建つ本願寺八幡別院の表門前を通り、東に折り返す。郷土資料館横は南北に情緒豊かな見事な通りが走っている。近江商人発祥の地の面影を今にとどめる商家や白壁土蔵の残る「新町通り」である。その一角の江戸期の商家である「旧西川家住宅」を見学する。
 新町通りが八幡堀で途切れた右側に昼食を予定していた「郷土料理店・喜兵衛」があった。昔の商家をそのまま使った店内の客間に案内される。おすすめの「喜兵衛御膳」(2,625円)を注文する。味の沁み込んだ「鯉の煮付け」の後、地元の食材が満載の「御膳」が運ばれる。しゃぶしゃぶ風近江牛、赤コンニャク、丁字麩、でっち羊羹などが赤い塗り箱に色鮮やかに盛り付けられている。ちなみに観光パスポート持参者は5%割引である。
 テレビや映画の時代劇の舞台としてしばしば登場する八幡掘の風情を楽しみながら次のスポットに向う。時間さえあれば手こぎ船での水郷めぐりを体験したいところだが今回はパス。
 千年以上の歴史を誇る日牟禮八幡宮を参拝し、すぐ北のロープウェー乗場に行く。15分おきに出発するロープウェーで標高270mほどの八幡山山頂に約4分で一気に運ばれる。山頂には豊臣秀次が築いた八幡山城の遺構があり、奥には遥か琵琶湖の絶景を遠望できる西の丸祉と北の丸祉がある。石垣跡をめぐりながら正面に出ると、本丸跡に建立された秀次の母を開基とする尼寺・瑞龍寺がある。参拝を済ませロープウェー駅に向う。途中の展望台から東の彼方に安土城祉のある小山が見えた。
 ロープウェーを降りた時、時刻は14時30分近くになっていた。ヤバイ!近江八幡駅を15時2分発の新快速電車に乗車しなければならない。駆け足で「かわらミュージアム」を見てまわり駅に急いだ。途中でどうにも間にあいそうもないとあせりだした。ぶーめらん通りに出てようやくタクシーを掴まえ、何とか予定の電車に乗車した。  
 米原で新幹線に乗換え、掛川駅に17時に到着。改札口を出た所で懇親会の幹事役の現役労組の役員と合流。遅参の参加者を待って送迎車で会場ホテル「葛城・北の丸」に着いたのは18時過ぎだった。日本庭園に囲まれた武家屋敷を思わせる純和風の格調高い建物である。ゆっくりと大浴場で汗を流した後、19時から懇親会が始まった。年1回の懐かしい顔ぶれとの再会の場である。時を忘れテーブルをめぐりながら旧交を温める。カラオケと酒席に分かれての二次会を終え、ベッドに入った頃には日付はとうに変っていた。