1999年4月 奄美大島、告別式参列
桜島上空「日高君、行ってくれるか?」。形は打診だが実質は命令に近い上司の言葉である。
23日の金曜日の昼過ぎに届いた一通の訃報は、J社と半々出資の子会社取締役であるN氏のご母堂の不幸を知らせていた。問題は告別式の場所である。ナント奄美大島なのだ。自ずと参列者が限定される。子会社を所管する立場にある私への参列指示は妥当な判断。加えてN氏は私の同期入社でもある。労組書記長時代には会社側窓口として渡り合った間柄でもある。かくして突然の奄美大島行きが決まった。日曜日には福知山出張が予定されている。滞在3時間半のとんぼ返りである。
早速、飛行機の便をリサーチ。N氏の上司であるH社長からの連絡。「直行便は告別式に遅刻しかねない。万全を期して鹿児島乗継ぎ便が良い。」
・・で、翌日の伊丹空港20番搭乗口。集まった参列者は4名。H社長、労組のT委員長、子会社のI常務に私である。 鹿児島空港での乗り継ぎの合間に昼食。鹿児島から飛び立ってすぐに、眼下に煙を吐く桜島の勇姿が飛び込む。早速、持参のデジカメが捉える。(上画像写真)
奄美空港からはタクシーに相乗り。50歳代のオバサンドライバーである。高齢者の葬儀でもありおのずと雰囲気も暗くはない。とんぼ返りの顧客へのせめてもの慰めか、オバサンドライバーの観光案内を兼ねた饒舌が続く。
「大島の産業と言われてもネ〜。隠れた産業はハブ捕りかも。推定24万匹ということらしいんデスヨ。どうして数えたんでしょうネ。一匹5千円で売れるんです。(何々、24万×5千円?12億産業ではないか!)夜行性ですから夜しか捕れないんです。夜、車を運転しながら道路脇で見つけて捕まえる人も結構いるとか。何に使うのかって?マングースとの試合があるでしょ。大抵負けることになってるんですけど・・。血清なんかにも貴重なんですよ。皮は色んな皮細工になるし、肉や骨は料理や精力剤だし。要するにハブは骨まで残らずぜ〜んぶ使われるんです。(ナント!ハブは人間様に骨までしゃぶられていたのだッ)」
定刻の2時に始まった告別式は3時前には出棺を終え、約束通り迎えのオバサンドライバーのタクシーに乗り込む。
やけにハブの話だけが記憶に残る、あっという間の奄美旅行であった。

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