福島ゼミで『希望について』を読む10月に始まった福島智さんのゼミで、立岩真也著「希望について」を読んでいます。僕が感じたこと、発言したことをまとめてみました。 11月16日 パート3「境界について」をめぐる討議この日の福島ゼミでは、立岩真也著『希望について』のパート3「境界について」をめぐる討議が行われました。 このパートで最も長文の「限界まで楽しむ」には、「医療保険−保険制度でなくともよいから、公的医療制度−を世界大に拡張したらよいのだという案も示される」との記述があり、また「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」に関わる取り組みも紹介しています。 なので、上記の問題意識と対応する内容を含んでいる市野川容孝著「社会」の203pに始まる「分配的正義と租税国家」の節を紹介しました。具体的には206pの「第二に、シュムペーターは」で始まる文節から208pの最初の文節までには、やはりこのパートに含まれる「市民は当然越境する」とも対応しています。 また、福島さんから、世界規模の公的医療保険構想や世界基金について説明を求められたので、次の二点を話しました。
この日のレポーターのコメントには、「現在の所有のあり方を疑い、境界を疑い、オルタナティブな価値を提示する立場は、マルクスを現代に読み替えた立場ではないだろうか」ということもばもあって、時ならぬマルクス理論と立岩理論比較論が始まりました。 僕自身は、1970年代末の学生運動に関わっていた体験から、以下のことを話しました。
※ 市野川容孝著「社会」岩波書店 1,680円 フランス、ドイツの憲法にある「社会的な国家」とは何かを出発点に、社会主義と民主主義の関係、思想史的な問題整理を通した今後への見通しを論じています。 国際協力、国際的な公共について考える際にも参考になる論考だと思います。 11月30日 「希望について」を読んで、これまでと違った視点を得たとの発言この日の福島ゼミでは、立岩真也著「希望について」のパート8「死なないこと」をめぐる議論が行われました。 レポーターからは、主としてALS患者の人工呼吸器装着問題をめぐる短文4つのこのパートでは十分に触れられていない射水市民病院事件、尊厳死、脳死・移植に関する情報提供・問題提起を含むコメントが出されました。 関連して、法科大学院で「生命倫理と法」を論じるゼミに参加しているというゼミ生、学部で「死ぬ権利」に関する講義を受けたことのあると言うゼミ生から、コメントがありました。 法科大学院での議論の出発点は、積極的安楽死は刑法に触れるが、消極的安楽死を尊厳死として認めるのは妥当ではないか、というものだそうです。コメントを行ったゼミ生自身は、「福島ゼミに参加して立岩さんの議論に触れるまでは、積極的な医療行為を行わない消極的安楽死を肯定的に捉えてきた」と語っていました。 「死ぬ権利」に関する講義の記憶をたどってくれたゼミ生からは、「医師たちの死なせないための努力をするという義務に対して患者の死ぬ権利があるという文脈の話を聞いた時には、それなりに納得していた。今日の議論に触れて、患者の死ぬ権利に対応するのが患者の死ぬ義務であるのであれば、問題だと思う」との発言がありました。 12月7日 経済成長がなければ技術革新はありえないか?この日の福島ゼミでは、「希望について」のパート4「不足について」を検討しました。 レポーターは、「希望について」の後に出された対談「所有と国家の行方」および広井良則著「持続可能な福祉社会」(ちくま新書)も参照しながら、「経済成長は不要」という立岩さんの主張に疑問を投げかけていました。 僕自身は、「少子・高齢化社会はよい社会」にある以下の記述をめぐって思い浮かんだことを発言しました。 ゼミでの発言を振り返って整理してみれば、「経済成長がなければ技術革新はありえないか? いやそんなことはないだろう」という主張に尽きます。 他の参加者の発言を聞きながら、以下についてまとまった発言をしました。
【付記】 上記で紹介した南ア西ケープ州におけるエイズ治療開始の経験がまとめられたレポートを日本語にしました。以下で読むことができます。
http://www.ajf.gr.jp 2007年1月25日 立岩さんスペシャル・セッション1月25日の木曜日、福島さんの要請にこたえて、立岩さんが本郷まで来てくれました。一昨年も同じ時期に福島ゼミで立岩さんスペシャル・セッションが開かれています。 今年は、教育系研究科在籍の院生のゼミ参加者が少ないこともあり、この日は特別にという参加者が多数を占めていました。 あらかじめ、ゼミ参加者が出した質問に立岩さんが答えるという形でゼミが行われました。 質問は、僕なりに整理すると以下の内容でした。
立岩さんは、主として「希望について」の該当する文章・記述を紹介しながら、現時点でいうことのできることを改めて繰り返していました。 具体的には、「介護」という財の不足を指摘してた。また、世界規模で考えるというとき、世界の財をすべてあわせて集計して分配するというアプローチではなく、まずは技術移転などで必要な財をいたるところで生産できるようにするといった漸進的なアプローチを丁寧に考えるべきだろう、とも語っていました。 その後、以下の質問が出されました。
6.の問いについて、以下のことを語っていました。
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