北の宿から
 
〜都  はるみ〜
 

  
 
 女心の未練でしょう....
 
 
演歌の常識だと、  
後ろに「か」が入り、  

女心の未練でしょうか....  

となるそうだ。  
その方が力を込めて伸ばしやすいから。  

しかし、この歌は、「か」抜き。  

「か」が付くのとつかないのでは、主人公の自立意識がまるで違ってくる。  
ともに未練を感じている意味では同じなのだが、  
前者は誰かに向かって答えを求めているのであり、  
後者は自分自身が捨て切れない未練を、いくらかいやがっている。  

なるほどね。  
ついでに、「北の宿」ではなくて「北の宿から」となっているのも意味があるとそうだ。  

この歌に出てくる主人公は、  
もう少しで、「あなた」と決別できそうなところまできているのだ。  
 

 
あなた死んでもいいですか...
                 
ここのところで、情念の深い恐い女という評価もあるそうだが、  
アンパンはこれは「あなた」に対する「最後通告」のようなものだと思う。  

死ぬ気など毛頭ない。  
「これでいいんですよね」と問いかけている。  
もちろん、言葉として届ける意志もその必要もないけれど..  
 

着てはもらえぬセーターを
寒さこらえて編んでます
 
そう考えると、このセーターは、未練たらしく編んでいるのではない。  
阿久悠さんは、  

ひとりの宿での、若い女性の儀式のようなもので、  
セーターも完成させることでケリをつけたかったのだし..  

と解説している。  
アンパンは、  
「捨てるために編んでいる」  
と思う。  
できあがって、紙袋に入れられたセーターは、街角のゴミ箱に無造作に捨てられる。  
で、この女の人は、決して振り返ることなくポロポロ涙を流しながら歩いていく。決別のとき...  

そんな情景が目に浮かぶ。  

この歌は、演歌演歌しているがとても力強い。  
しかし、その分異様にエネルギーを吸い取られるようだ。  

アンパンは、カラオケにはほとんどいかない。  
演歌も好きではない。  
でも、都はるみは別格だ。  

小学4年生くらいのときだったか、クラスメートの「はるなちゃん」  
が転校するとき、不覚にも「好きになった人」を聴いて涙してしまった......おとなだったのよーーーーん!