|
個人情報保護の動きが徐々に高まる中、その過渡的段階を象徴するようなケースをCNETが伝えています。
教育用ビデオソフトを制作している Universal Image という会社は、Broadcast.comに対して"chalkboardtalk.com "としてビデオソフトを供給し、その見返りとして Broadcast.com はその登録ユーザーの個人情報を Universal Image に提供する契約を結んでいました。ところが Broadcast.com は今年、Yahooに買収され、その後個人情報を提供しなくなってしまったため、 Universal Image がYahooに対して40億ドルの損害賠償を求めて訴えたものです。
米国でprivacy policyの格付けをしているenonymous社のレイティングでは最低ランクの1つ星しか得ていないYahooですが、"Yahoo has a policy posted on its Web sites, stating that it generally doesn't share personal information with its partners unless it has the user's permission."として個人情報をユーザの承諾なしにビジネスパートナーに分配しないことを明らかにしています。 Broadcast.com はこれに基づいて個人情報の供給を停止したものです。
このケースで注目すべきは Universal Image が個人情報を得られないことによる損害として40億ドル(30億ドルは懲罰的損害賠償)と高額な賠償を請求していること及び Universal Image の代理人であるLarry Friedmanは個人情報について"It's gold, it's currency."と云っているように個人情報がマーケティングの世界で高い経済価値を持っていることです。
次に契約といえども次のような最近のプライバシー保護の潮流の中では維持できないことも注目すべきでしょう。
Privacy has become more and more of an issue for consumers who worry about how personal information is used by companies on the Internet. Many companies such Yahoo, Excite@Home and Lycos require users to register some basic information such as name, age and occupation to receive free email, post messages in chat rooms or conduct transactions.
More and more individuals and consumer-advocacy groups have rallied for public disclosure about how companies use the information. Yahoo has a policy posted on its Web sites, stating that it generally doesn't share personal information with its partners unless it has the user's permission. (rally:(勢力を)もり返させる〔返す〕;奮い立たせる;(力を)集中する) Yahooは Universal Image との契約に反してでもユーザの個人情報を保護せざるをえないほどプライバシー保護が強く要請される状況になっていると見ることもできます。 また、企業としては Universal Image との契約違反による損害賠償よりもプライバシーを侵害することにより受ける損害賠償、企業イメージの低下などのダメージのほうが大きいという利害判断があったとも考えられます。 しかし、さらにコンプライアンス・マネジメントの視点で考えるならば、YahooはPrivacy Policyについて比較的遅れていると評価されていました。もし、ずっと以前からPrivacy Policyを意識したマネジメントをしていれば、Broadcast.comを買収する際に当然Universal Image との契約に気付いていたはずであり、その時点で適切な処置が可能であったとも考えられます。つまり、Privacy Policyが遅きに失したために損害賠償請求を受けるはめになったということもできるでしょう。 CNETでは早い時期に判決が出るだろうとしています。法的には契約とprivacy policyとの矛盾をどのように調整するかが問題になります。米国法ではどのように扱われるか分かりませんが、Yahooのprivacy policyは米国商務省の個人情報保護のガイドラインであるprivacy policyをベースにしているわけです。わが国の民法の解釈としてもむずかしいところですが「契約は守られなければらない」という私的自治の原則を公的なガイドラインが一種の公序(民法90条)として制限すると解釈できる可能性はあります。 いずれにしても個人情報を自由にマーケティングに使用できた時代が終わろうしているこの時期の過渡的な訴訟と云うことができます。 |