野球中継と知的財産権
USA TODAYがAPの配信として"Web broadcast rights limited"を伝えています。プロ野球のメジャーリーグがテレビ・ラジオのサイトでのインターネット中継やハイライトシーンの送信は、著作権の侵害であって、全国的にインターネット中継を止めるように求めているというものです。
"Major League Baseball has cried ''Foul!'' -- and copyright infringement -- forcing the station in West Palm Beach, Fla., and others around the country to stop broadcasting on the Internet. "

まず、テレビやラジオでの送信権を持っている放送局がインターネット上でそのまま中継する権利があるかが問われます。しかし
Michael Mellis (New media counsel for Major League Baseball Enterprises, the licensing division.)が云っているように試合の映像について著作権によって保護されており、その知的財産権は価値があるものです。
"Our game footage is copyrighted, and our intellectual property is valuable."

"Baseball contracts go a step further and include a clause that specifically bans Internet broadcasts, even Internet broadcasts of highlights. "
野球の契約には特にインターネット放送を禁止する条項はないし、ハイライトの放送を禁止する条項はなおさらのこと存在しないのは事実でしょう。

しかしだからと云ってインターネット上の放送権はテレビ・ラジオの放送権の中に含まれ、別の権利を構成しないとは言い切れません。放送局との契約にインターネット中継に関する条項がないのは、元々テレビ・ラジオに関する契約だからインターネットについて規定していないのでしょう。また、インターネットが登場する以前の伝統的な契約にインターネット中継に関する条項がないのも当然とも言えます。従って契約で禁止していないから通常の放送契約でインターネット中継ができるというのはやや無理があります。大リーグの知的財産権からすれば、当然、別の契約が必要です。
"I'm really surprised that it became an issue because it's not a revenue-driven thing at all here," said Al Forist, the station's operations manager.
というようにインターネット中継が儲かるかどうかというのは、単なる感情的な問題に過ぎず、それが利益をもたらさないとしても知的財産権を侵害することには変わりません。また直接的利益はもたらさないとしても、間接的な利益の存在は否定できないでしょう。

そうは云ってもこれまで当たり前のようにインターネット中継が行われていましたから、ここに来て突然ともいえる大リーグの要求には違和感があるかもしれません。しかし、技術先行でインターネット中継が事実上行われていただけで、契約の解釈・著作権の保護の見地からは大リーグ側の要求のほうが合理的です。法的には、放送局もインターネット中継について新たに条項を付加すれば良いのであって、特にむずかしい問題でもありません。

しかし、今このような点がクローズアップされるのは、インターネットがメディアとして確立してきたと評価すべきでしょう。

まず、インターネットのスタート以来大リーグだけでなく様々な情報ソースが、新しいメディアへの参加実験的な発想から対価を求めることをしてきませんでした。しかし、インターネットはすでに実験でも普及促進段階でもなく、ごく当たり前のメディアになっています。従来のメディアと同じように著作権料(中継料)を支払うべき時期に来ているのでしょう。

伝達範囲に限界がある電波と異なり、インターネット中継は全世界で見ることが可能であって従来のメディアを超えていることとも考えなければならないし、さらに高速回線の普及・サーバの処理能力が向上すると、近い将来、アナログメディアに取って代わる可能性すらあります。これを放置しておくと大リーグは新しいメディアについてビジネスチャンスを失いかねないのであって大リーグの要求はこの見地からも合理的です。それでは、その費用をどのように捻出するかとなるとテレビなどに比べると広告収入もそれほど潤沢ではありませんから問題は残ります。

ここで問題になっているのは試合の映像であって、単に試合の結果を流しているだけのわが国で、直ちに同様の問題が生ずることはありません。そうは云ってもわが国のインターネットでも映像による試合中継やハイライトの送信が始まる日もそう遠くはないでしょうから、そのときには当然考えなければならない問題として登場するでしょう。

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