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米国で Frank Murkowski (R-Alaska) と Robert Torricelli (D-New Jersey) 両上院議員が"the Inbox Privacy Act (S. 759)."を提案しています。この法案が議会で成立するかはわかりませんが、電子メールを使ったダイレクトメールであるSPAM(unsolicited email)対策の法案です。SPAMについては、多くのインターネットユーザーが迷惑を受けており、SPAMに反対する"Coaliton Against Unsolicited Commercial E-Mail (CAUCE)"という民間組織までできています。
この法案は二つのことを定めています。 まず第1にSPAMを出す側にそのメールの中に"their correct name, physical address, Net address, and telephone number "を書くことを要求しています。正直にリアルの世界での住所・氏名・電話番号を書きなさいということです。 第2にユーザーはプロバイダに対してSPAMを拒否するように設定することを要求できるというものです。 第1の点は実は昨年廃案になった法案と同じです。しかし、これに対しては次のような反対意見がありました。 "Antispammers have strongly denounced the provision, saying it actually could have the opposite effect it intends. Instead of deterring spam, they say it could legitimize and encourage junk email because it states that junk email could be sent as long as it is properly labeled and as long as the sender honors requests--after the fact--to be removed from a list. " 要するにこの要件さえ満たせば、SPAMを送っても良いことになり、かえってSPAMを合法化してしまうというのです。たしかにSPAMの問題点は電子メールの内容が詐欺的であると云うことだけではなく、そもそもそのようなメールを受け取ること自体が不快であるという点にもあります。昨年の法案ではこの問題を解決できなかったわけです。 そこで今回の"the Inbox Privacy Act"の第2の点が登場します。 "The most significant difference between this legislation and [last year's] is the addition of a domain-wide opt-out system that allows Internet domain owners to put up an electronic 'stop sign' to signify their desire to not receive unsolicited commercial email to addresses served by their domain," Murkowski said in a statement. これによれば、ユーザーはSPAMを受け取るか拒否するかを選択することができます。但しその前提としてプロバイダはSPAMを拒否するユーザーのリストと拒否した場合に配信しないようにするためにSPAMのリストを用意しなければなりませんし、それに基づいて配信を止めるシステムも必要です。 この法案の問題点はこのようなリストを作ったり、システムを導入する負担を引き受けることをプロバイダーが賛成するかどうかという点及びプロバイダー自身が決めるべきポリシーに政府が踏み込むことになるのではないかという点です。 たしかにこのようなシステムをプロバイダに強いるのは中小の事業者もあることを考えるとやや無理があるようです。 それではいっそのこと広告FAXと同様にSPAMも全面的に禁止してしまったらどうかという考え方もあり得ます。しかしこれに対しては興味深い反対意見があります。 米国の連邦法ではSPAM規制は行われていないのですが、州法のレベルではいくつかの州がSPAMを規制しています。ところがその結果やっかいな事態が生じつつあります。各州がそれぞれ異なる要件でSPAMを規制するとそのすべての要件を満たさないとSPAMを発信することができなくなります。しかし、SPAMが流行るのはそれを必要とする人もいるからです。それを使って物やサービスを購入する人がいるわけで、その人たちが情報を受け取る権利を制限してしまうことになります。 CNETは今年の2月にCAUCEのインタビューを掲載しています。 The Coalition Against Unsolicited Commercial Email (CAUCE) today warned that at least four new antispam statues coming down the pike spell trouble for legitimate online marketers. "The idea of respecting 50 different state laws would be a bit daunting for marketers, even the ethical ones," said CAUCE board member John Mozena. "We don't want to stop online marketing. We just want to keep it from abusing consumers." つまり彼らはSPAMの全面的禁止を要求しているわけではなく、その濫用から自分たちを守りたいだけなのです。これは合理的な考え方です。SPAMの情報といえども欲しい人が受け取る権利は保障しなければなりません。 私は、それに加えて次の理由からこの考え方に賛成です。現在はSPAMというと卑わいなコンテントの購入を勧めるものが多いのですが、電子商取引が活発になるときちんとした商品を扱う業者も出てくるわけです。主婦が新聞に入ってくるスーパーマーケットのチラシを大切にするのと同じことがインターネット上のメールでも起きるかもしれません。また、新しい技術開発によってもっとスマートなメールによる販売が始まるかもしれません。将来の発展の可能性を現時点の全面禁止で奪うのは適当ではないからです。 理論的にはSPAMの問題は実は異なる複数の問題ではないかと思います。 (1)SPAMは詐欺的商法の手段として使われます。 これは、この法案のように発信者のリアルの世界での住所・氏名・電話番号を明示させることでかなり防止できます。それを隠す悪質なケースを如何に取り締まるかという問題は残りますが、クレジットカードの引き落とし契約などの痕跡を残しますから捜査は可能です。また、基本的には消費者保護の問題です。 (2)受信者の情報の取捨選択権です。市民はアクセス権・知る権利があると同時に非アクセス権・知りたくない権利があると言えるかは簡単ではないのですが、情報受信者は自分が受け取る情報を選ぶ権利があって良いはずです。この法案の第2の点はこれに関するものです。また、これはプライバシーの権利とも関連します。つまり、SPAMERがSPAMを送ってくるのは、ユーザーの意思に関わらずメールアドレスを入手しているからです。プライバシーの権利が自己に関する情報のコントロール権だとすれば、メールアドレスという情報の使い方についてもコントロールできると考えることもできます。米国では個人情報を保護する法律がありませんが、きちんとした法的保護ができれば解決可能かもしれないのです。 |