カリフォルニア州でオンライン投票を検討
個人が自由にその意思を外部へ表現する手段として民主社会においてインターネットの果たす役割は、インターネットの歴史と同時に語られてきましたから、国民の政治的意思の表明である選挙の投票についてもネットワーク利用が議論されるのは自然でしょう。

ニューヨークタイムスによればカリフォルニア州の秘書官である Bill Jones は、24人の技術者、政治学者、選挙管理官を集めてオンライン投票に関する州のレベルでは最初のミーティングを開催ました。州としてはカリフォルニアが最初ですが、それ以外に連邦のレベルではペンタゴンが2000年には海外に居住している軍人・民間人が投票できるようにするテストプロジェクトのガイドラインを開発中ということです。
"The Pentagon is sponsoring another major move toward developing an Internet voting system. The Federal Voting Assistance Program is currently developing guidelines for a pilot project to allow overseas residents of five states -- Florida, Missouri, South Carolina, Texas and Utah -- both military and civilian, to vote via the Internet in 2000. "

このシステムを使えば、家にいて投票できますから、家から出ることが困難な高齢者や身体障害者などの投票を容易にし、また、単なるめんどくさがりやも投票するようになるかもしれませんから、投票率の向上に役立つと考えられます。そこで電子商取引の認証システムなどを活用して簡単にオンライン投票も実現可能とも考えられます。しかし、実際には色々な問題点があるようです。わが国でこれが議論されるのはだいぶ先でしょうが、ここで抽出された問題点について考えておくことは、無駄ではないでしょう。

問題点
  1. 郡がその費用を負担することや20年以上前のIBMの集計機をリプレースしたり、そのオペレータの解雇することの困難さが指摘されましたが、これは他の技術革新でも常に生ずる問題です。
  2. パソコンを持つことが出来る高収入の人は自宅から簡単に投票できて、それ以外の人は投票所まで足を運ばねばならないという不公平を生じます。多人種国家の米国ではヒスパニック系などパソコンの普及が遅れていることが指摘されており、合理性があるが、普及が進めば解決できる問題でもあります。 Jonathan Nagler, a political scientist at the University of California at Riverside, presented this scenario: "People with high incomes can vote from home, and everyone else has to drive to the polling place to vote. You're going to have a policy problem with this."
  3. セキュリティーの問題として幽霊投票者やクラッキングについても指摘されました。幽霊投票者についてはクレジットカードを使う方法も提案されましたが、その場合はさらにプライバシーの問題が生じます。すなわちクレジットカードの個人情報を他に転用することの可否です。また、夫が妻になりすまして投票するといったことを防ぐのはかなりむずかしいでしょう。
  4. 真実投票率向上に役立つか? 投票率の向上を望むのであれば、投票所の会場時間を延長したり、棄権者に罰金を支払わせるというオーストラリアの方法があるというものです。しかし、いずれにしてもそれらの方法に加えてオンライン投票は投票率の向上につながることは間違いないのです。
  5. 不在者投票の導入のときはもっと簡単に決まったのであって、オンライン投票だけこんなにむずかしい議論をする必要はないという意見もあります。しかし、コンピュータリテラシーの現状からすれぱ、不在者投票と同視することはむずかしいでしょう。
オンライン投票を具体的に検討するあたりは米国らしいのですが、尚早の感は否定できません。ただ、問題の大半は将来的には技術的に解決可能なものです。セキュリティーについても、指紋や瞳孔などによる本人確認を取り入れることは可能でしょう。また、リテラシーの問題もいずれは解決するでしょう。したがって、もう少し時間が経てば実現の可能性はあると考えても良いと思います。現在のインターネットが万能という考え方は避けるべきであって、将来の発展を待つべき課題もあるわけです。

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