EU Vs USA のプライバシーに関する交渉経過
EUと米国の間のネットワーク上のプライバシーに関する交渉が3月16日に米国で開かれました。これについてニューヨークタイムスCNETUSA Todayなどの米国のマスコミがそれぞれ報道しています。

米国側は Commerce Undersecretary David Aaron 、EU側はEuropean Commission Director General John Mogg が交渉に当たり、Aaronは「前進的な日であり、雰囲気も遂行もすばらしかった」と言っていますが、ほとんど進展はなかったようです。

すでにこのホームページでも繰り返し取り上げていますが、問題を要約すると昨年秋にEUが、個人情報の収集について、個人の承諾、収集した情報へのアクセス権、その修正などを定めたプライバシーに関する指令(directive)を実施しました。それには同程度のプライバシー保護がない地域への個人情報の送信を禁止する条項があるため、そのレベルに達しない米国への個人情報の送信ができなくなります。電子商取引では個人情報の送受信が必須ですから米国企業の対欧州の電子商取引が困難になる可能性が生じており、米国はこの条件をクリアするために国内的にも業界の自主規制を整備するなどして交渉を続けています。

今回の交渉に先立って米国の業界団体である Better Business Bureau が"BBBOnline"という自主規制のプログラムを提案しており、NewYork Timesのようにそれを大きく報道しているところもありますが、交渉の実質には影響はなかったようです。具体的な争点について、Mogg が次のように言っています。
Even so, Mogg added, the concept remains unproven. For one thing, he said, it still isn't clear how U.S. companies will enforce self-regulation, nor how many companies must sign up to a program before the U.S. can be held in compliance with EC rules.
Furthermore, European laws require companies to give consumers rights to review information held about them, provided requests for information are not "frivolous and vexatious."
米国がEUのルールを守ることができるかどうか以前に、米国の自主規制をどのように米国企業に強制するか、またどれぐらいの数の企業がそれに参加するかがあきらかでない。また、EUのルールが企業保有の情報を消費者が確認する権利を与えることは、バカげたことでも腹立たしいことでもないというのです。つまり、Aaronが言っているように"consumer access to personal information and enforcement of violations"消費者の情報へのアクセス権と企業への強制について合意にいたっていません。

これは今回の交渉の遙か以前からの問題ですから、今回の交渉は何らの進展がなかったと評価できるのです。
米国はどのように主張しているかというと、
The U.S. says EU rules are burdensome and costly for U.S. companies and are likely to give consumers a false sense of security, because they're impossible to enforce.
つまりEUのルールは米国企業にとって過重であり、大変費用がかかる。また、それを強制することは不可能であって、それが可能なように云ってしまうと消費者に間違ったセキュリティー感覚を与えてしまうとしています。また、次のようにも言っています。
The U.S. contends that industry self-regulation, backed by the Federal Trade Commission, is sufficient. Giving consumers unlimited access to their personal data will be expensive for U.S. companies, industry and U.S. officials agree.
自主規制は十分に適正であり、消費者に個人情報への無制限なアクセス権を与えることは米企業にとって高価であるという点で産業界も行政も一致していると言っています。

不可能なことや著しく実行困難な立法はできないことは確かです。権利意識が強い米国民に個人情報へのアクセス権を認めた場合、大量の権利行使が生じ、企業に過大な負担を強いる可能性はないとは云えません。この点が欧州と異なる事情ということは出きるかもしれません。しかし、そう云う為にはその負担を合理的に試算することが必要でしょうが、実際には大半がコンピュータ上でおこなわれますから、いったんそのプログラムを作ってしまえば、件数の多数はそれを否定しなければならない程大きな問題ではないとも云えます。

また、どのように強制力を持たせるかという課題に対しては「強制力を与えなくても、自主規制に参加する企業の数が多いから大丈夫だ」という以外に米国には積極的な根拠はないようです。BBB(Better Business Bureau)には2600の企業が参加しているとか、300の企業がBBBOnlineをすでに実施していると言っています。しかし、問題なのはそのような業界団体に参加する適正な企業ではなく、それ以外のどちらかと云えば少し怪しい企業群による個人情報の不正利用ですから、この主張には十分な理由があるとは云えないでしょう。

このほかにニューヨークタイムスはもうひとつの困難な材料として欧州委員会が不正を理由に総辞職した点をあげています。Moggは影響ないとしていますが、EU各国はプライバシー問題に非常に強固な姿勢を示しており、実務に当たっていた委員の交代によって妥協点はさらに引き上げられる可能性があるからです。
Although Mogg said he did not anticipate that this week's resignation of the entire European Commission, which has been accused of corruption, would affect that deadline, some privacy advocates said it could make Aaron's job of selling self-regulation tougher.

今後の予定としては、
Officials plan to meet again in early April and want to have a compromise by a June summit.
としています。しかし、EUの強硬な姿勢と両者の主張の違いから考えるとサミットまでに解決するのは困難ではないかと思います。

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