YAHOOが名誉毀損とプライバシーの板挟み?
ポータルサイトの巨人であるYahooが、名誉毀損とプライバシーとの板挟みになっていることをCNETが伝えています。

ポータルサイトではフリーメールやフォーラムを提供していますが、その際にユーザーの個人情報を収集します。いわゆる"personalization"としてポータルサイトではこの個人情報をひとつのビジネスにする傾向があります。
"The buzz word of the day seems to be "personalization"; from the portals to financial services firms and special-interest sites such as those for sports fans, users are often given the opportunity to trade personal data for a page built just for them. The idea is that everybody wins--users get exactly what they want, so in theory they will come back often and stay a while, and the site gets a loyal audience and a wealth of demographic data it can use to sell advertising at a premium. "

ところが、Yahooが提供しているBBS(電子掲示板)を通じてユーザーが名誉毀損したとして, ITEX Corporation と Wade Cook Financial Corporation が匿名の会員を損害賠償請求で訴えています。しかし匿名ですから、それ以上裁判を進行できないので、これらの会社は、Yahooを裁判所に召還して、会員の実名を公開するように請求しています。但し、この裁判ではYahooは被告として訴えられているわけではありません。もちろん、Yahooは規約で個人情報は裁判所の法的手続きでない限り公開しないとしています。

これは、一見簡単そうに見えるのですが、そうでもありません。まず、名誉毀損かどうかの判断の中で企業批判はむずかしい点があります。つまり、その企業がほんとうに不正・不当なことをしていた場合は、一種の告発であり、社会的に意味があるものであって名誉毀損にならない場合が多いのです。これは、表現の自由の根幹に関わります。また、ポータルサイトが公開するか否かの決定権をもつと、それを濫用するおそれもあります。さらにポータルサイトは個人情報を収集してそれに基づいてビジネスを展開しますから、容易にそれが公開されるとなるとユーザーが離れてしまい、ポータルサイトのビジネスそのものが成り立たなくなります。

そして明らかに名誉毀損になる場合であっても次のように意見が分かれています。
Communication Decency Act(卑猥表現の規制は違憲無効となったがその他は有効)ではBBSの管理者が第三者の違法なメッセージで責任を負わないことを定めていますが、その場合でも、加害者の氏名を公開すべきかどうかは明らかになっていません。そこで
""The message board operators don't have liability exposure for the messages that are posted, but they are in a position to help bring the posters to justice if something illegal happens. It's being a good corporate citizen," said Rich Gray, an Net attorney at Bergeson, Eliopoulos, Grady & Gray. "You can get involved in tremendous rumor mongering on the Net that can do damage to a corporation and its shareholders," he added. "If you can't find them, there won't be a remedy."" 要するに、何か違法なことが起きたときにBBSのオペレーターがそれを正義に導くことは、良き市民としての協力であり、そうしないととんでもないウワサを流された被害者はその被害を回復できないという意見もありますが、他方では
""If people had an anonymous conversation on the bus about a company, there is no plausible means for the company to go after them for damages," Catlett said. "Just because we can track conversations on the Net doesn't mean that we should. Rather, we should promote technologies to 'anonymize' speech.""
パスの中である会社の悪口を言ったとしても会社はその責任追及の手段がないのであって、ネットワーク上でその追及がシステム的にできるからと云ってそれをすべきではないという意見もあります。

これは、非常にむずかしい問題です。Communication Decency Actが管理者の責任を軽減したのだから、被害者は真の加害者に対して追及する以外に方法がないのであるから、情報を開示して、追及の道を開くべきだと考えれば、前者のような結論になります。また、インターネット上のユーザーの発言は本来、バスの中の世間話の延長程度であるから、それについてそもそもそ責任追及は必要ではないという考え方もあるわけです。

実は、この点についてはわが国でも議論があります。これについて郵政省の情報通信の不適正利用と苦情対応の在り方に関する研究会では、第三者機関を設けて加害者の個人情報を開示する方法を検討していて、すでそのためのヒアリングをインターネット上でおこなっています。
そこでは、裁判所ではなく第三者機関が開示すべきか否かを決定することになります。米国のYahooに対する召還請求およびそこでの個人情報の公開がどのように推移するかは、まだはっきりしていませんが、もし裁判所でそのような手続きが可能であれば、このような第三者機関は不要であるという意見も出てくる可能性があります。つまり、公平な第三者としては、司法権の独立が認められる裁判所以上の機関はありませんから、そこで解決可能であれば、特に第三者機関を設ける必要はないわけです。但し、わが国の場合、訴訟に多額の資金と長時間が必要だという問題があり、その面から早急な被害者救済手段として第三者機関が望まれるとは云えます。しかし、その場合でも被害者は損害賠償請求訴訟をしなければなりませんから、それほどの意味はないのかもしれません。

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