|
2月1日、フィラデルフィア連邦地裁は昨秋成立したCOPA(Child Online Protection Act)の執行を停止し、本格的にその合憲性の審理をすることを決めました。この法律は有料で未成年者に有害なコンテンツを提供するサイトに対して年齢確認を要求し、それに違反した場合には5万ドル及び6年間の懲役を定めたものです。すでに最高裁で違憲無効とされたCommunication Decency Act(CDA)に次ぐ卑わいなコンテンツに対する規制でCDA2とも呼ばれていました。
COPAに対しては立法直後、American Civil Liberties Union(ACLU)が中心となって訴訟を提起していたのですが、裁判所は11月19日にその執行を停止し、さらにそれを今年の2月1日まで延長していました。少しややこしいのですが、この事件ではCOPA自体の合憲性について審理する前提としてその審理の期間中、この法律の執行を停止するかどうかがまず問題になりました。11月の決定はその停止をすべきか否かを判断するまでの間、一時的に執行を停止したものでした。仮処分として執行を停止するかどうかを決定するまで、一時的に執行を停止するというものでした。
今回の2月1日の決定は、それを受けて本格審理の前提としての執行の停止を決めたものです。COPA自体が違憲無効になったわけではありません。
司法省当局は60日以内にこの執行停止を控訴するか、本案の審理でCOPAの合憲性を争うかの2つの方法がありますが、現時点では判決を分析中であってノーコメントとしています。 A spokeswoman for the Department of Justice, which defended the law, had no comment beyond saying government lawyers were reviewing the decision. (from N.Y. Times) この裁判の原告は、直接規制を受けるポルノのサイトのオーナーではなく、ACLUやEFFなどの市民団体と書店の協会やコンドーム販売会社、セックスカウンセラーなどです。争点は大人がこれらのコンテンツにアクセスする権利やポルノのサイトの表現の自由の侵害だけではなく、直接規制の対象でないサイトが受ける影響に及んでいます。むしろ、そちらが中心になっています。例えば書店のサイトでは、何が未成年者に有害か不明確であって、その刑罰が5万ドルの罰金と6年の刑と重いため、不安なものは自主的に排除しなければならないことになります。数ドルの本を販売するためのリスクとして市は書店主にとっては重すぎるのです。しかし、その結果、少しでもこの法律に触れるのではないかが、心配な書籍はオンラインショッピングの棚から降ろすことになりますから、真実はこの法律の適用がないものもはずさざるを得ないことになります。しかしそれでは本来規制されていない書籍の表現も規制されたのと同じ結果になってしまいます。このような自己検閲をせざるを得ない法律は違憲の可能性があるのです。 また、この裁判では、原告側の主張の中でコンドーム販売会社やセックスカウンセラーなどが、表現の自由だけではなく、営業的なマイナスを主張したことも特徴的です。 ただ、違憲無効となった一昨年のCDAの裁判とこの裁判では雰囲気がかなり異なります。判決の中でも Two diametric interests -- the constitutional right of freedom of speech and the interest of Congress, and indeed society, in protecting children from harmful materials -- are in tension in this lawsuit として"憲法上の言論の自由と子供を有害なコンテンツから守ろうという議会や社会の関心が裁判の中で緊張関係にある"と述べています。CDAの時のように単純に言論の自由を保障するという見方はしていません。 また、裁判所も多くの親や祖父母も有害なコンテンツから子供たちを守る方法を探しているし、この国の大半の市民の意思は議会が作った法律に表されているのだけれども、この国の法の下では、憲法上の権利を犠牲にして多数派の意思を守ってはならないという(法の)命令を厳に理解していて、イヤでも裁判所は決定しなければならないということを先例をあげて説明して、次のように言っている点にも裁判官の複雑な気持ちが表れています。 Despite the Court's personal regret that this preliminary injunction will delay once again the careful protection of our children, I without hesitation acknowledge the duty imposed on the Court and the greater good such duty serves. Indeed, perhaps we do the minors of this country harm if First Amendment protections, which they will with age inherit fully, are chipped away in the name of their protection. "子供を注意深く守ることをこの仮処分が遅らせてしまうことを個人的に遺憾に思っているのだけれど、躊躇することなくその義務を裁判所に課すること、そしてその義務に従うことがずっと良いということを承認します。おそらく、もし、子供たちを保護するという名前の元に彼らが将来その歳になったときに、すべて引き継ぐことになる修正1条の保障を切り捨て去るとすれば、私たちはこの国の子供たちを傷つけることになる。" まず、注目すべきは、裁判所もネットワークのポルノについて放置する姿勢ではないということです。米国では大人がポルノを見る権利は、表現の自由で保障していますが、子供に対しても同様とは全然考えていないのです。どこかでバランスを取る必要があることは間違いないでしょう。 しかし、また他方で、裁判所は、苦悩しながらもそれでもなお、言論の自由を守ろうとしている点には注目すべきです。判決の冒頭では、次のように憲法の本質を述べています。 the First Amendment was designed to prevent the majority, through acts of Congress, from silencing those who would express unpopular or unconventional views. 要するに基本的人権は多数決による法律によっても奪うことができないのです。 COPAとよく似た法律は、わが国では今年の4月から施行される風営法の改正によって実現されています。国が違いますから一概に論ずることはできないのですが、この裁判の推移は風営法との関係でも注目に値します。 判決の理由は "VI. Analysis of the Motion for Preliminary Injunction and Conclusions of Law "に書かれています。憲法を勉強する人には興味深い内容のはずです。 また、この判決に対する反応ですが、この法律を作った議会関係者は一様に落胆すると共に、今後もこの法律を支持していくと述べています。例えば、 "We continue in our steadfast support of the Child Online Protection Act (COPA) and we urge the Department of Justice (www.usdoj.gov) to continue defending this law at trial or on appeal all the way to the U.S. Supreme Court,"(By USA Today) と民主・共和両党の議員が共同でステートメントを発表しています。 また、原告の中心であるACLUの見解はそのサイトで見ることができます。 参考: 米国「Child Online Protection Act(COPA)」訴訟(98/11/24) 連邦地裁、COAP執行停止を延長 (98/12/03) |