性犯罪者の個人情報の公開
 テキサス州の性犯罪者の情報公開について書きましたが、USA TODAY が米国のWeb上での性犯罪者の個人情報の公開について概略を報道していました。

 アラバマ、アラスカ、コネチカット、フロリダ、ジョージア、インディアナ、カンサス、 ノースカロライナ、テネシー、ユタ、バージニアの各州で性犯罪者の情報が公開されていてテキサス州では公開されていなかった氏名・住所・写真までが公開されているということです。
 これは連邦法にこのような公開を認める「Megan's Law」という法律があり、各州はそれに基づいて、情報公開のための法律を作っているためです。このMegan's LawはMegan Kankaという7歳の少女が隣人によってレイプされ、殺されるという悲惨な事件を契機に作られたものだそうです。

 これに対して人権団体である「National American Civil Liberties Union」は人権上の問題を指摘しています。刑期を満了した犯罪者に関する個人情報の公開はプライバシーの侵害になる可能性があります。わが国のマスコミも被疑者や被告の段階では実名や写真などを報道しますが、すでに刑が確定し、更正の段階である行刑に入ると匿名とし、写真も報道しないのが一般です。まして、刑の執行を終わってしまえばそれを公開することはまずあり得ません。

 米国では、性犯罪者が再犯の可能性が高く、社会の安全を保つための必要性と個人のプライバシーを比較して、前者を優先しているわけですが、氏名や写真までの公開となるとかえって社会復帰した犯罪者の更正を阻害する可能性もあり、プライバシーの軽視と言えます。

 また、個人情報に関しては、EUと米国の間でむずかしい問題が生じています。EUのディレクティブが,EUが保障するプライバシーの保護と同等またはそれ以上の保護が保障されていない地域への個人情報の伝送を禁止しているため、法律で個人情報を保護しない米国との間での個人情報の伝送が必然的に生ずる電子商取引が困難になるのではないかが問題になっています。

 この行方も興味深いのですが、米国と欧州の個人情報に対する考え方の違いも重要です。米国の規制が緩やかなのは、テレマーケッティング、ダイレクトマーケティングのような経済活動を活性化するには個人情報をある程度公開しても良いという考え方があるといわれています。このように個人情報にたいする姿勢が緩やかであって、性犯罪者の情報公開もその流れの中で認められているのかもしれません。

 個人情報は便利な情報であることは間違いないのですが、それは個人の人格と密接に結びついていて、その公開が真につらい思いをさせる可能性があること、そしてコンピュータの今後の発展は一層個人情報の高度利用を可能にすることを考えると欧州型の保護のほうが適切だといえます。

 便利だからだけではなく、その便利さと引き替えにどのようなものが失われるのかを考えなければなりません。

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