メディアの巨人マードックの発言
 メデイア王のマードックがシンガポールでの記者会見で現在の米国の通信ビジネスとの関係でおもしろい発言をしていることをC-NETが伝えています。マードックはインターネットを学びかつ受け容れなければならないとしながらも、インターネットビジネスに対して懐疑的姿勢を見せています。

 まず、「インターネットは中間業者を一掃することで、インターネットが創り出した以上にに多くのビジネスを破壊する」と言っています。
 インターネットが情報の流通革命であることは間違いありません。以前は、消費者はマスメディアという中間業者を通じてしか情報を得ることができなかったのですが、現在は情報の流れのより上流にさかのぼって情報を取得できます。物流の世界で流通革命が起きることで中間業者や小売商が衰退したのとおなじ事が起きても不思議はありません。しかし、その流れを止めることはできないのであって、マードックの見方が「だからインターネットはダメなのだ」という平凡な消極論だとすればかなり疑問があります。

 また、この関係では、テレビの登場で新聞は死滅しなかったことをあげています。この例はよく使われるのですが、テレビの登場は映画やラジオ産業に大きな変化を強いています。生き残るかと言えばイエスなのですが、現在のまま生き残るかというと少し考える必要があるわけです。むしろ、CATVやADSLのような高速回線が普及し、それに応じたアプリケーションの登場によってこれまでのメディアがどのような影響を受けるかについて研究すべきでしょう。単に生き残ると言い続けるのでは、物流革命の中で業態の転換に失敗した企業と似たようなことになります。

 また、AOL、AMazon.com、Yahooは旧メディアから生じた物ではないとしています。これは、旧メディアの企業が安易にこのマーケットに参入することの危険性との関係で述べているものですが、たしかにその通りであって、旧メディアのマネジメントがそのままインターネットビジネスで活かされるとは限りません。その点の認識があまいM&Aが少なくないのは事実です。

 さらにマードックは、現在のウォール街で過熱しているインターネット関連株の異常な高騰や高額なM&Aに対して冷ややかな姿勢を見せています。彼は「インターネットへの投資はこれまでも少なかったし、これからも選択的である」「既に過大に投資された企業の乗っ取りはしない」と言っています。

 これは正しい指摘でしょう。ひとつの例として現在のインターネットはCATV・ADSLなどの高速回線が普及するまでのひとつの段階に過ぎないとすれば、現在インターネット上で人気を集めているアプリケーションやポータルサイトのインタフェースは比較的短期間に陳腐化する可能性を秘めています。そうだとすれば、M&Aにしても株式投資にしてもそれまでの短期間での収益力かポスト高速化に着目すべきであって、インターネット関連だというだけでの取得はかなりのリスクを背負っていると云えます。このあたりは、M&Aの中で企業規模を拡大してきたマードック独特の嗅覚とも云えるノウハウが生きているのかもしれません。

 しかし、それではインターネットビジネスに対して悲観的になるべきかというとそうではありません。急速なマーケットの広がりの中で玉石混淆状態が続いており、マードックの云う「選択的投資」が重要になるはずです。また、高速通信の時代にマーケットにどのようなアプリケーションを提供することが、ビジネス的にプラスであるかの判断が大事になります。既に過去のものになっているはずですが「インターネットだから」「革新的技術だから」ということが、ビジネス的発展のキーワードではないのです。企業の内外においてこれを前提にビジネスを立ち上げる優れたコーディネータが要求される時期でしょう。ここで「いつの時代だって優れたコーディネータが必要だ」という意見もあるでしょう。しかし、これまでの数年間がそうだったかは率直に反省すべき企業が少なくないのではないだろうか。

戻る