Digicash 破産手続きへ
電子商取引の分野で注目を浴びていた「デジキャッシュ」が破産手続きに入ったことを11月25日にCyber Times が伝えています。電子商取引の中核的システムとしてさまざま企業が注目していた技術でもあり、またわが国では電子マネーの研究実験が盛んに行われている段階だけに注意すべきニュースです。

デジキャッシュが行き詰まった原因は"Consumers were reluctant to use Digicash because there weren't many merchants who accepted it, and merchants didn't sign up to participate because consumers weren't demanding it as a payment option. "要するに消費者は利用できる商店が少ないため使いたがらないし、商店は消費者が支払い手段として選択しないからデジキャッシュに参加しないという単純な悪循環にあるとされています。しかし、さらにその背景には、オンライン上の取引にデジキャッシュを使わなくてもクレジットカードで十分に用が足りてしまうという実状があります。デジキャッシュの特長として小額性と匿名制がありますが、そのいずれもクレジットカードの番号を入力するだけで足りるという簡便さを排除するほどの特長ではないのでしょう。

オンラインショッピングの最大手とも云えるAmazon.comやCDNowは、取引の大半がクレジットカードであるとしています。消費者はブラウザに添付されている暗号システムを使ってクレジットカード番号を送っているわけです。こうした傾向に対してはPaul Kocherのようにベンチャービジネスである「デジキャッシュ」のような小規模の企業がデジタルマネーを扱うことに無理があるとしてVISAやIBMのような巨大な企業が参入すれば立ち上がるのではないかという意見もありますが、一般的には悲観的なようです。

わが国では米国ほどは消費者が小切手を使いません。これは、消費者が支払いに現金・小切手・クレジットカード・デジタルマネーのいずれを使うかは、かなり習慣という属人的なものと関連しているからです。これは米国でも同様でしょう。クレジットカードの便利さとあいまってこのような習慣を匿名制と云うだけでは克服できなかったのでしょう。また、完全とは云えないまでも、一応暗号システムが存在すると、クレジットカードの番号を入力するだけでたりるという簡便さは消費者をデジタルマネーよりも先に消費者を掴んでしまったと云えるでしょう。

しかし、ここでデジタルマネーがうまく立ち上がらないことの影響は、単にクレジットカードがあるから良いというほど単純なことでもないと私は考えています。あまり云われていませんが、クレジットカードは短期のファインナンスとしてよりも、消費者の銀行口座と商店を結ぶ手続き業的色彩があります。コンピュータを使って資金移動をする業務です。デジタルマネーの隠れた特長は、この際の手数料(クレジットカードでは商店が負担する)がクレジットカードよりも低く設定されていることにあります。その理由は、消費者がデジタルマネーをあらかじめ購入して利用するため、信用に対する危険が少ないこともありますが、むしろ、電子化することで資金移動・手続きに要するコストが低下したことが大きな理由でしょう。つまりコンピュータ化によって生じた従来より低いコストを低価格の決済手段として具現化する意味がデジタルマネーにはあると思われます。

このことは将来に対してふたつの意味があるでしょう。1番目は、このままクレジットカードがサイバースペースでも利用されていくと、その手数料はあたかも新しい税金のように自動的かつ半強制的に徴収され、クレジットカード会社に膨大な利益をもたらします。
2番目に、もしコンピュータ化によって資金移動・手続きにコストダウンが生じているとすれば、デジキャッシュは成功しなかったとしてもそこに生じた利益を具現化するビジネスが、ほかにも考えられると云うことです。金融ビッグバンという軽薄な言葉ぱ使いたくありませんが、金融機関同士の垣根を取り払うのだけがビッグバンではないはずでしょう。

また、デジタルマネーには、消費者と商店との間の決済手段以上のクレジットカードでは処理できない意味があるはずであり、それがどのようになるかも考える必要があるかもしれません。

また、この記事が指摘しているようにネットスケープがどのような役割を果たすかは別に注目すべきかもしれません。

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