MP3プレーヤー(Rio)は著作権法に違反しない
MP3の機器、音楽著作権の訴訟で出荷停止(98/10/18) で紹介しましたが、米国レコード産業協会RIAAがダイヤモンドマルチメディア社のMPE3の再生機器であるRioの出荷を差し止めを求めていた訴訟で、裁判所は一時的に10日間の出荷停止とRIAAにはその間の50万ドルの損害賠償に備えた供託を命じていました。

この事件ではRioがロイヤリティーの払いが必要なThe American Home Recording Actが規定するDATなどのデジタルオーディオ機器に該当するかが、法的な争点となっていましたが、裁判所はRIAAの仮処分を求める訴えを棄却する判断を出しました。

MPE3は音質がよい上にRioは機械的な可動部分がないためショックに強く、ジョギング中でも利用可能であり、極論すればバンジージャンプをしながらでも聞くことができる特徴を持っています。そして、著作権料を支払わないいわゆる海賊版のMPE3のデータは何ダースものサイトに数万も登録されており、RIAAは、Rioの出荷を認めると、この海賊版の音楽データをさらに助長することになると主張しています。また、この判決は連邦地裁のものであり、上告の道が残されているその意味で確定したものではなく、RIAAとしてはどのように訴訟を続けるかを検討しているようです。さらに、この判決はダイヤモンドマルチメディア社の出荷を停止する仮処分を求めていただけで、出荷後において別訴でThe American Home Recording Act違反を訴求することも可能でしょう。

しかし、私は次の点からRIAAの主張が認められるかは疑問です。
1.ダイヤモンドマルチメディア社の副社長のケン・ワートはサイバータイムス上で
"The judge said that Diamond is not responsible for the piracy," Wirt said, adding that the company does not condone the use of the Rio to record and play music that is illegally obtained. "If the recording industry wants to go after piracy," he added, "it should go upstream to the pirates themselves."
と言っています。つまり、海賊データについてダイヤモンド社は責任を負わないという判決だが、ダイヤモンド社が海賊データに寛容というのではなく、レコード業界は海賊版を作った人間に対して責任を追及すべきだという意見です。
これはAOLのゼラン事件以来、米国の判例が取っていると思われる個人責任の原則のひとつの表れとも考えられます。ネットワーク上では被害の拡大に関与した者に責任を負わせていくとあまりにも拡大しすぎて、かえって正常なネットワークの発展が阻害されるおそれがあります。そこで直接的な原因を生じさせた者に責任を限定していこうという考え方があるように思われます。これもその理論の一環と見ることができるかもしれません。
2.著作権法上、著作権の使用料は著作物の使用の対価として支払われます。ところが、DATなどの機器のロイヤリティーは、その使用の蓋然性が高いという理由により、著作物の使用の有無に関わらず、例外的に法定されたものであり、その例外を解釈で拡張するのはむずかしいと考えられます。また、DATなどの場合は海賊版ではなくフェアユースなどの適法なコピーによる損失を補填する意味があります。つまり、法が一定範囲のコピーを認めることを前提として支払われるわけです。しかし、この場合は、海賊版のコピーが問題になっており、海賊版を理由にロイヤルティーを認めると海賊版を公認することになるおそれがあります。
3.MPE3のデータはRioなどの専用の機器を使わなくてもパソコンで簡単に再生できるのですが、パソコンについても出荷時点でロイヤリティー徴収すべきというのは、現実的ではありません。また、パソコン上でのMPE3は、元々動画像のプロトコルに付随したものであって、必ずしも音楽データ専用とも云えないからです。

たしかに海賊データの弊害はありますから、立法でDATと同様に扱うように定めることは不可能ではありませんが、本質的な解決は海賊データの作成者に対する責任追及による海賊版の排除であり、そのためには正規版のデータを積極的にECなどで販売することが必要でしょう。
なお、この問題は「音楽著作物のデジタル化権」、「情報家電の発達と著作権」などの問題へと展開する要素を含んでいると考えられます。
参照=サイバータイムス

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