弁理士による商標権の濫用?
法律の中でも著作権法・商標法などの無体財産権に関する法律は一般の人には、理解しずらいかもしれません。あまり馴染みがないうえ、契約自由の原則に支配される私法の中で、準物権と呼ばれるこれらの権利では、例外的な強行法が多いうえ、私法以外の条項も入っているため、他の分野の人にはむずかしいところがあります。そればかりか法律の専門家である弁護士さんでも誤解していることがあります。このように理解がむずかしいうえ、インターネットの中では、多くの人が著作権などのこれらの権利保護を真剣に考えるため、考えれば考えるほど「???」が増えてしまいます。

この分野の専門家は弁理士ですが、こういう状況の中で個人で非営利のホームページを開いている 友人のところに某弁理士からそのホームページで使用している言葉について、メールが届きました。「あなたのホームページで使用しているロボペットという言葉は、商標登録されているので削除してください。継続して使用する場合は契約を結んで使用料を支払いなさい」要約するとこのような内容です。

驚いた友人が私に確認を求めてきました。しかし、このメールは間違いだらけです。
商標法を見てみましょう。
第二十五条 商標権の効力
商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
とありますから、商標権者以外の人が登録されている言葉や図形などを【商標】として使用することは出来ません。
それでは、商標権者が使用権を専有し、ほかの人が使用できないとされる【商標】とはどのようなものを云うのかというと?
第二条 定義等
この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
要するにいわゆる営業活動で商品あるいサービスを提供する者がその名称として文字図形などを使用することを云います。したがって商品などとして使用するのでなければ、商標権の侵害になりません。例えばMacという名前を自分の愛犬に付けたとしても何ら問題はありません。それだけでなく、例えば、小説の中で特定の商品名を上げたとしても小説家や出版社は業として商品等を提供していませんから、商標権の侵害は生じません。よくあるのは、パソコン雑誌の中で「○○は××社の登録商標です」などと記述しますが、あれは、念のためというだけであれを書かないと商標権を侵害するということはありません。米国企業などがよくやるように、広告主であることを利用した「オーバーな権利の主張」があるのかもしれません。

また、商標権の範囲は
第二十七条 登録商標等の範囲
登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。
2 指定商品又は指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない。
と定めていますから、申請者が願書に記載した商品・サービスの範囲でしか主張できません。ハンバーグとパソコンで同じMacが使えるのは、それぞれ商標権の範囲が異なるからです。

私たちは商標登録されていると、その文字や図形は一切使えないかのように思いがちですが、けっしてそんなことはないのです。そうだとすると、先の某弁理士のメールはどう考えるべきでしょうか。友人のホームページは非営利であって、商標権を侵害することはありません。これは、弁理士であれば当然知っていることです。

むしろ、その言葉が一般に使われて普通名詞化すると商標の事実上の価値が低下することはありますから、権利者としては、権利を主張するのではなく、「出来るだけ使わないでください」と頭を下げてお願いする場面です。例えば「宅急便」はヤマト運輸の登録商標ですが、宅配便の代名詞のように一般的に使用され続けると、ヤマト運輸のサービスは、ほかの会社のサービスに対して独自性を失う可能性があります。

案の定、商標権の侵害ではないことをメールで知らせると、某弁理士さんは、商標権の範囲外であることを認めた上で、一変して使わないようにお願いしますという姿勢に変わりました。

しかし、この弁理士さんは登録商標の権利が及ばないことを知りながら、使用料を請求しようとしていたわけです。つまり権利がないのにも関わらず、一般人が十分な知識がないことを利用して使用料を取ろうとするのは、詐欺罪が成立する可能性があります。また、ホームページを削除させると、偽計による業務妨害罪の成立も考えられます。弁理士という職業は、無体財産権という範囲に限って弁護士と同様、訴訟代理もできる資格で、その分野での法律家です。その弁理士のこのような行為は、法律家としての職業倫理に大きく違反します。

戻る