【米国時代のフリッツ・ラング】

『暗黒街の弾痕』
YOU ONLY LIVE ONCE


『駅馬車』『果てしなき船路』『海外特派員』などの独自の製作活動で知られるウォルター・ウェンジャーがユナイテッド・アーチスツの傘下で製作した初めての作品。ボニーとクライドの犯罪者夫婦の実話に基づく物語で、ニコラス・レイの『夜の人々』やアーサー・ペンの『俺達に明日はない』、ロバート・アルトマンの『ボウイ&キーチー』の原型ともなった。

3年の刑期を終えて出所したエディ・テイラー(ヘンリー・フォンダ)は、愛するジョーン・グラハム(シルヴィア・シドニー)と再会して、今度こそ二人でやり直そうと即日結婚する。ジョーンの姉ボニーと、ジョーンの勤務先の官選弁護士ウィトニーは二人の行く末を心配する。思った通り世間の風は冷たく、二人が泊まったホテルの主人は、エディが前科者と知って二人を追い出す。二人は郊外に小さな家を月賦で買うが、前科者のエディを快く思わない雇い主はささいなことでエディを解雇する。その頃、毒ガスを用いて現金輸送車を襲う強盗事件が発生し、犯人の遺留品からエディが疑われる。無実を主張して逃げようとするエディにジョーンは名乗り出るよう説得するが、逮捕されたエディは裁判で死刑を宣告される。仲間の手配で拳銃を手に入れたエディは医師を人質に脱獄しようとする。ちょうどその時、強盗事件の犯人がエディでなかったことを伝える知らせが刑務所に届くが、エディは信じようとしない。エディと親しいドーラン神父が説得しようと近づくが、エディは神父を射殺し、霧にまぎれて脱獄する。エディはジョーンと合流し、逃避行が始まる。二人は各地で強盗などをしながら車で逃げ回る。やがて二人に赤ん坊が生まれるが、二人は赤ん坊をボニーとウィトニーにたくす。帰り道で二人は警官隊の待ち伏せを受け、車を捨てて歩いて国境を目指す。だが二人は背後から警官隊の銃弾を浴び、抱き合ったまま倒れる。死ぬ直前のエディに、「お前は自由だ」とのドーラン神父の言葉が聞こえる。

前科者エディーを演じるヘンリー・フォンダは若手の頃で、陰のある若者をよく演じている。白黒の画面が美しく、特にエディの脱獄から二人の逃避行までが緊迫して一気に見せる。州境を目の前にして二人が警官に背後から射殺されるラストは、とても悲しい場面である。

エディーが捕まった後も裁判のシーンを一切出さず、「有罪」「無罪」「膠着状態」の3つの新聞記事を前に悩む編集者が、かかってきた電話を聞きながら「有罪」を指差すことでエディーの死刑判決が決まったことを示す場面が映画的。エディーが入れられる檻や霧の中での脱獄シーンなどは前作では抑え気味だった表現主義の面目躍如といった感がある。最後に二人を追い詰める警官隊の服装はナチスを連想させる。

37米/監督フリッツ・ラング/脚本ジーン・タウン、グレアム・ベイカー/撮影レオン・シャムロイ/出演シルヴィア・シドニー、ヘンリー・フォンダ、バートン・マクレーン、ジーン・ディクソン、ウィリアム・ガーガン/86分/白黒


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2002年8月6日作成