【米国時代のフリッツ・ラング】

『西部魂』
WESTERN UNION


前作『地獄への逆襲』の大ヒットで、ラングが再び20世紀フォックスで監督した西部劇。

南北戦争直前の1861年の西部。銀行強盗ヴァンス・ショー(ランドルフ・スコット)は、逃げる途中、怪我をして馬で荒野をさまよっていたエドワード・クレイトン(ロバート・ヤング)を助け、クレイトンを民家に送り届けた後、名も告げずに立ち去る。クレイトンは電信会社ウェスタン・ユニオンの技師長で、ネブラスカのオマハからユタのソルト・レイク・シティまで電線を引くという壮大な事業を行おうとしていた。作業に必要な人を集める中で、クレイトンはショーと再会し、その素性を見抜きつつも知らぬ振りをする。またクレイトンの父の友人の息子リチャード・ブレイク(ロバート・ヤング)も、西部の冒険を求めてニューヨークからやって来る。一見やさ男風のブレイクだったが、荒馬を見事に乗りこなして腕っ節の強さを見せ、一同の尊敬を得る。ブレイクとショーは、クレイトンの妹スー(ヴァージニア・ギルモア)をめぐって、恋のさやあてを繰り返す。こうしてクレイトンとショー、ブレイクの間に奇妙な友情関係が成立する。やがてオマハからソルト・レイク・シティへの電柱建設が始まる。工事開始の式典には、通信網の重要性を認識していたリンカーン大統領からも激励の電報が届く。広大な荒野に約10メートルおきに電柱が設置されていく。はじめ作業は順調に進むが、インディアンに牛が盗まれ、見張りが殺される。ショーが追っていくと、かつての強盗仲間スレードとその仲間が南部連邦の意を受けて、インディアンに化けて工事の妨害をしようとしたものだった。ショーはスレードからの誘いを断るが、かといって昔の仲間を裏切ることもできなかった。やがて、工事の一行の前に酔ったインディアンの一団がウィスキーを求めて現れ、作業をしていたグループともみ合いになる。ブレイクがインディアンの頭目を射殺したためにインディアンと撃合いになり、その場は撃退するが、会社のキャンプが襲われる。キャンプからは馬が盗まれるが、残っていたインディアンの死体が白人だったことから、クレイトンは何者かがインディアンを煽動していると疑う。町で盗まれた馬を発見するが、スレードはインディアンから買ったと主張して譲らず、作業に馬が必要なクレイトンは仕方なく5000ドルで自分の馬を買い戻す。クレイトンは、スレードとショーが旧知の仲と知るが、追求しようとはしない。夜になって、ショーはスレードに妨害をやめるよう忠告に行くが、逆にしばられて放置される。同じ頃、会社のキャンプのあちこちから火が発生し、キャンプは大混乱に陥る。火事がおさまった後、朝になって戻ってきたショーに、クレイトンは事実を問いただす。沈黙を守るショーを、クレイトンは解雇する。町でショーはスレード一味と撃合いになる。ショーはスレードの子分をかたづけるものの、スレードに撃ち殺される。ショーを追ってきたブレイクはスレードを撃ち殺して、かたきをうつ。やがて電信が無事に開通し、ソルト・レイク・シティで人々は祝いあう。

ストーリーと関係ないところでのギャグがラングらしい。ここでも、コメディリリーフのコックが、いろいろ笑わせる。揺れる馬車の中で調理をするために指を切ってしまい、指が包帯だらけになってしまったりとか、牛が盗まれてしまったために料理の材料がなくなり、作業用のロバをいとおしそうに撫でたりとか、自分だけに特別にとっておいた料理の皿を転んでひっくり返したりとか、他愛もないギャグだが、ストーリーの息抜きになっていた。全体のタッチはジョン・フォードのおおらかな西部劇にも通じるものがあり、ヨーロッパ出身のラングが監督した作品とは思えない。実際、ラングは西部開拓者の生き残りから「西部の精神を再現した映画」との賛辞の手紙をもらい、自慢していたという。

カラー作品だが、日本に輸入されたのは白黒版だった。

41米/監督フリッツ・ラング/脚本ロバート・カーソン/音楽デイヴィッド・バトルフ/撮影エドワード・クロンジェガー、アレン・M・デーヴィー/出演ロバート・ヤング、ランドルフ・スコット、ディーン・ジャガー、ヴァージニア・ギルモア、ジョン・キャラディン/94分/カラー


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2002年8月6日作成