【米国時代のフリッツ・ラング】

『マンハント』
MAN HUNT


ナチスドイツを逃れたフリッツ・ラングによるハリウッド初の本格的な反ナチ映画。ラングにとっても、『死刑執行人もまた死す』『恐怖省』『外套と短剣』と続く反ナチ物の最初の作品。

第二次大戦直前。ドイツの山奥にあるナチスの山荘に密かに近づく人影があった。彼は英空軍のアラン・ソーンダイク大尉(ウォルター・ピジョン)で、山の上からライフルの照準をヒトラーに合わせた。ソーンダイクは弾倉が空のままで引き金を引き、次に銃弾を込めて、再度ヒトラーに狙いを定める。だが見張りの兵に見つかり、捕まる。ゲシュタポのキーヴ=スミス大佐(ジョージ・サンダース)は、ソーンダイクが英国政府の命令でヒトラー暗殺を試みたものと考え、その旨の自供書を作ってソーンダイクにサインを迫る。英国への宣戦布告の口実にするのが狙いだった。だがソーンダイクは、ヒトラーを殺すつもりはなく、純粋にスポーツとしてハンティングを楽しんでいただけだと主張する。在英ドイツ大使経由でソーンダイクの兄で政府高官のリスボロウ卿へ問合せるが、何も知らないとの返事が返ってきただけで、英政府が絡んでいないことが裏付けられる。やむなく大佐は事故に見せかけてソーンダイクを殺そうとし、崖の上から突き落とす。だが崖下の木がクッションになって、ソーンダイクは命が助かる。ゲシュタポの追跡をからくもかわし、港に逃れて小船に乗る。監視船に発見されたソーンダイクは夜の海に飛び込み、近くの貨物船に乗りこむ。ドイツの船だったが、下働きの英国人の少年(ロディ・マクダウェル)に助けられ、追跡の兵士の目をごまかす。ソーンダイクが英国へ逃げたと考えたゲシュタポは、ソーンダイクが小船に残したパスポートを追跡の工作員に持たせて貨物船に乗せる。ロンドンに帰りついたソーンダイクは工作員達の追跡を受けるが、一人暮しの女性ジェリー(ジョーン・ベネット)のアパートに逃げ込んで、追ってを逃れる。ソーンダイクはジェリーと共に兄のリスボロウ卿のもとを訪ねるが、すでにドイツ側から引渡し要請が出ており、ソーンダイクはジェリーと逃げる。しばらく行動を共にするうちにジェリーはソーンダイクのことが好きになる。ソーンダイクはジェリーに矢の形をしたピンを買ってやり、ジェリーはそれをベレー帽につける。ロンドンの街で大佐と工作員に追われたソーンダイクは地下鉄に逃げ込み、線路で追っ手と格闘して、感電死させる。追っ手の持っていたパスポートから、ソーンダイクの死亡記事が新聞に載る。ソーンダイクはしばらく身を隠すことにし、連絡の取り方をジェリーに伝えて彼女のもとを去るが、すでに彼女のアパートには大佐やゲシュタポの手がまわっていた。数週間後、連絡先の郵便局で彼が手に入れたメモには、ゲシュタポからの脅迫メッセージが書かれていた。ソーンダイクは隠れ家である山奥の岩穴にたてこもるが、そこにも大佐がやってくる。大佐は、ジェリーは情報を話した後で自殺に見せかけて殺したと語り、彼女のベレー帽を隙間から渡す。そして隠れ家の出口を外からふさいだ上で、ソーンダイクに自供書へのサインを迫る。ソーンダイクはベレー帽についていた矢型のピンを矢にじりに弓矢を即席で作り、サインした自供書を受けとって油断した大佐を岩穴の隙間から撃つ。岩穴から出たソーンダイクは死ぬ間際の大佐に撃たれるが、一命を取りとめる。その後、ドイツと英国は戦争に突入する。ソーンダイクは任務で飛行中に、単独でライフルを持ったまま、ドイツにパラシュート降下する。今度こそ本当にヒトラーを撃つためだった。

ジョフリー・ハウスホールドの小説『Rogue Male』を原作に、『男の敵』『駅馬車』などのジョン・フォード作品を手がけてきたダドリー・ニコルズが脚色した。当初、ジョン・フォードが監督する予定だったが、フォードが途中で降りたためにラングが監督した。

ジョージ・サンダース演じるゲシュタポの大佐は、狡猾で残酷なばかりでなく、威厳にも満ち、魅力的な悪役として、非常に印象的。

貨物船で主人公を助ける少年に、後に『猿の惑星』のコーネリアス役でカルト的な人気を得る子役時代のロディ・マクダウェルが出演している。

41米/監督フリッツ・ラング/脚本ダドリー・ニコルズ/撮影アーサー・ミラー/出演ウォルター・ピジョン、ジョーン・ベネット、ジョージ・サンダース、ジョン・キャラダイン、ロディ・マクダウェル/105分/白黒


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2002年8月6日作成