【米国時代のフリッツ・ラング】

『河の側の家』
HOUSE BY THE RIVER


20世紀初頭の英国。片田舎に流れる大きな河のほとりに住む作家スティーブン・バーン(ルイス・ヘイワード)は、妻マージョリー(ジェーン・ワイアット)が出かけている間に新しい女中のエミリー(ドロシー・パトリック)にちょっかいを出そうとする。だがエミリーが頑強に抵抗した為、スティーブンは彼女の首をしめて殺してしまう。愕然とする彼のもとに、会計士を務める弟ジョン(リー・バウマン)が訪れる。感情のむらがあるスティーブンに比べ、片足が不自由で独身のジョンはもの静かで控えめなタイプ。スティーブンは事情を説明して、死体の始末を手伝うようジョンに頼む。はじめは兄に自首を勧めるジョンだったが、マージョリーが妊娠しているとのスティーブンの言葉に不憫に思い、手を貸すことにする。スティーブンはエミリーが黙って付けていたマージョリーのイヤリングを密かに外し、ポケットにしまう。そして二人は死体を袋につめてボートで河の中ほどまで運び、重りをつけて河に沈める。邸に戻った二人は、外出から帰ってきたマージョリーと一緒に、村のパーティーに出かける。パーティーで何もなかったのように楽しむスティーブンに対し、ジョンは罪の意識に暗く沈む。邸に戻った後、マージョリーはエミリーが戻らないのを不審に思うが、スティーブンは気にしない振りをする。やがてエミリーの失踪が村の評判になり、皮肉なことにスティーブンの本が売れるようになる。「事実に基づいて書かれた本が面白い」とのファンの声を聞き、スティーブンは密かにエミリー殺害の顛末をノートに書き始める。一方、死体を入れた袋はジョンがスティーブンに貸したものだったが、知らない間に家政婦が自分の名前を刺繍していたと知り、ジョンは驚く。またマージョリーの妊娠がスティーブンの嘘だったと知り、ジョンの不信はつのる。罪の意識にさいなまれたジョンは食事ものどを通らなくなり、家政婦に当たるようになったために彼女は家を出ていく。ある時スティーブンは、重りが外れて遺体を入れた袋が河を流れてくるのを目撃する。慌ててボートを漕いで袋を追いかけるものの、追いつくことができず、袋は下流へ流されていく。やがて遺体が発見され、袋の名前からジョンのもとに警察がやってくる。スティーブンは「袋は何者かに盗まれた」と主張するが、公開捜査(裁判所が証人を招聘し、多数の聴衆の立会いのもとに警察が尋問を行うというもの)では、家政婦の証言など、ジョンに疑いがかかるような状況証拠があがる。しかし裁判長の結論は「エミリーは殺害されたが、犯人は不明」というものだった。マージョリーは、いらいらして怒りっぽくなった夫スティーブンよりも、誠実だが孤独なジョンに同情するようになる。スティーブンは警察の疑いがジョンに向けられているのをいいことに罪をジョンになすりつけようと、河の側でジョンを殴り、気を失ったところを河に投げ込んで自殺を装う。一方、マージョリーはスティーブンのタンスから、エミリー殺しの顛末を書いた原稿と、エミリーが盗んだとされたイヤリングを発見して、事件の真相を知る。スティーブンは事実を知ったマージョリーまでも殺そうとするが、生きていたジョンがずぶぬれのまま助けに来る。逃げようとしたスティーブンは、風に揺れたカーテンをエミリーの幽霊と勘違いし、誤って二階から転落して最期をとげるのだった。

50英/監督フリッツ・ラング/脚本メル・ディネリ/撮影エドワード・クロンジェイガー/出演ルイス・ヘイワード、リー・バウマン、ジェーン・ワイアット、ドロシー・パトリック、アン・シューメイカー/88分/白黒


前の画面に戻る     初期画面に戻る

ホームページへの感想、ご質問はこちらへどうぞ

2002年8月6日作成