【米国時代のフリッツ・ラング】

『熱い夜の疼き』
CLASH BY NIGHT


クリフォード・オデットの舞台劇を映画化した作品。

ニューヨークに出ていたメイ(バーバラ・スタンウィック)は、10年ぶりに故郷の漁村に戻り、漁師として働く弟ジョーと暮らし始める。彼女は都会で不倫に陥っていたが、相手が死に、その家族から嫌がらせを受けて、生活に疲れて戻ってきたのだ。すれっからしのようになり、煙草もぷかぷか吸う彼女にジョーは反発するが、その女友達ペギー(マリリン・モンロー)は強く惹かれて、友人になる。ジョーの同僚の漁師ジェリー(ポール・ダグラス)は引退した父親や盗みばかり働く叔父と同居する純朴な人間だが、メイに惹かれてデートする。都会のすさんだ生活に嫌気がさしたメイは、田舎者だが素朴なジェリーに安らぎを覚え、彼と結婚する。一方、メイはジェリーの友人で映画館で映写技師として働くアール(ロバート・ライアン)と知合う。田舎の生活に退屈を感じるアールに、メイは危険な匂いを感じつつ、彼が自分と同じ質の人間であることを感じて惹かれていく。メイにはジェリーとの娘が生まれ、二人は幸せに過ごすが、一方でメイはアールとも逢引するようになる。アールは友人だからとジェリーは見過ごしているが、町の噂になっていることを知り、ジェリーはメイを問い詰める。そして喧嘩の末、メイは家を出て行く。だが、アールと別れたメイは家に戻ってくる。結局ジェリーはメイを許し、赤ん坊に会わせる。

原作では最後にジェリーがアールを殺すことになっていたが、メイがジェリーのもとに戻って二人が和解するエンディングに改変された。

マリリン・モンローの実質的に初めての本格的な出演作品である点が特筆される。ラングによれば、モンローは恥ずかしがりでちょっと変わっていたが、自分が男性に及ぼす効果は理解していたという。撮影中にカレンダー事件が起き、彼女は撮影所に遅刻するようになってしまい、撮影の進行が遅れたという。またセリフを覚えられないために撮影の進行が遅れた。撮影中にモンローはセリフのコーチの女性を撮影につきそわせてほしいとラングに頼み、ラングはコーチが独自に演技の指示をしないことを条件に許可した。だが、コーチがラングに隠れてモンローに指示を出していたため、コーチの出入りを禁止した。モンローが共演する場面で失敗してもバーバラ・スタンウィックは優しかった。ポール・ダグラスは彼女を嫌い、クレジットを与えることを拒否したが、スタンウィックの賛成でモンローにもクレジットが与えられた。

メイとジェリーの結婚パーティの場面では、家中に日本のちょうちんを飾っているのが面白い。

52米/監督フリッツ・ラング/脚本アルフレッド・ヘイズ/撮影ニコラス・ムスラーカ/出演バーバラ・スタンウィック、ポール・ダグラス、ロバート・ライアン、マリリン・モンロー、キース・アンデス/105分/白黒


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2002年8月6日作成