【米国時代のフリッツ・ラング】

『青いガーデニア』
THE BLUE GARDENIA


殺人を犯してしまったと信じる女性の、恐るべき運命との戦いの物語。普通の主人公がいきがかりから殺人に巻きこまれ、様々な恐怖を体験するという『飾り窓の女』にも似た題材の作品。一見ヒッチコック的なストーリーだが、人物の心理の陰の部分を、表現主義的な陰影の濃い画面で表している。

ラングは、ブレヒトら左派の文化人とのつきあいから、知らない間にブラックリストに載せられ、仕事から18ヶ月もほされてしまった。ようやく依頼が来た作品。

ロサンゼルスで電話交換手を務めるノラ・ラーキン(アン・バクスター)は、2人の同僚と一緒に暮らしている。ある夜、海外に駐屯している恋人から、手紙で別れを切り出された彼女は、たまたま電話をかけてきた知合いのハリー・プレブル(レイモンド・バー)の誘いに応じて食事にでかける。ハリーはカレンダー用の女性を描く画家だったが、プレイボーイとしても有名で、多くの電話交換手ともつきあっていた。レストランでノラは、ナト・キング・コールの歌う「青いガーデニア(くちなし)」の甘いムードに乗せられて、深酒してしまう。酒に酔った彼女をハリーは言葉たくみにアトリエへ連れて行く。そこでノラはハリーに暴行されそうになって夢中で抵抗する。朝、自分のアパートで二日酔いで目が覚めたノラは、ハリーが殺されたとのニュースに愕然とする。警察はレストランの目撃証言から、ハリーと一緒だった女性を探しており、新聞は2人が聞いていた曲から謎の女を「青いガーデニア」と呼ぶ。ロサンゼルス・クロニクル紙の編集者ケイシー・メイヨ(リチャード・コンテ)は紙面で、「力になるから、連絡してほしい」と「青いガーデニア」に手紙を書く。何人もの偽者の電話の後、ノラはケイシーに電話する。彼女しか知り得ないことを知っていたため、電話の相手が「青いガーデニア」と確信したケイシーは、説得して彼女と落ち合う。はじめは警戒するノラだったが、少しづつケイシーに心を開いていく。ケイシーも少しづつ彼女に惹かれていく。だがケイシーの行動を観察していた警察は、2人の2度目の出会いに張りこみ、彼女を逮捕する。意外な展開に驚いたケイシーは、ノラは犯人ではないと確信し、犯行現場でかかっていたワグナーのレコードを購入した相手を捜す。犯人の女性はレコード店で自殺を図るが一命をとりとめ、ハリーに結婚を迫ったのに冷たくされたために彼を殴り殺したてん末を病院で語る。かくしてノラは無事に警察から釈放され、自由の身になる。

53米/監督フリッツ・ラング/脚本チャールズ・ホフマン/撮影ニコラス・ムスラカ/出演アン・バクスター、リチャード・コンテ、アン・サザーン、レイモンド・バー、ナト・キング・コール/90分/白黒


前の画面に戻る     初期画面に戻る

ホームページへの感想、ご質問はこちらへどうぞ

2002年8月6日作成