海外図書紹介 『北北西に針路を取れ』

書籍名:North By Northwest
編者名:James Naremore
ISBN :0-8135-2007-X
出版社:Rutgers University Press
価 格:C$19.95
出版年:1993


<内容>
 

<名セリフ>
「北北西に針路を取れ」は笑いと恐怖が見事にブレンドされているが、そこには脚本家アーネスト・レーマンのすぐれたセリフの力が大きい。

 ケーリー・グラントはやや軽薄な広告マンという役柄だが、冒頭仮病を偽ってタクシーの列に割り込む。タクシーの中で秘書がそれをとがめるとグラントは言う。

「彼を幸せにしてやったのさ。善きソマリア人の気分を味合わせてあげたんだよ」
"I made him a happy man. I made him feel like a Good Samaritan." 38p

 グラントはさらに言う。

「マギー、広告の世界には嘘などというものは存在しない。そこには適度の誇張があるだけなんだ、知っておくといい」
"Ah, Maggie, in the world of advertising there is no such thing as a lie. There is only The Expedient Exaggeration, you ought to know that." 38p

 といった具合だ。その彼がスパイ組織から敵のスパイと間違われ、誘拐されてしまう。グラントは謎の男達に拳銃を突きつけられ、ホテルのロビーから車に連れ込まれてしまう。

「これはどういうことだい、冗談か何かなのかい?」
「そうさ、冗談さ。車の中で笑いな」
"Oh, come on, fellas, what is this, a joke or something?"
"Yes, a joke. We will laugh in the car."
41p

 からくも殺し屋の手をのがれたグラントは母親(!)の助けを借りながら、自分が間違えられたジョージ・カプランの泊まっているホテルへ行く。だがそこにも殺し屋が彼を追ってくる。グラントの言っていることを信じない母親のセリフはとんちんかんで、まったく笑いをさそう。殺し屋がホテルにいることを知って部屋から逃げようとするグラントに母親は言う。

「私、その殺し屋たちに会ってみたい気がするんだけど」
"I think I'd like to meet these killers." 69p

 逃げるグラントはエレベーターで殺し屋と鉢合わせする。さすがに満員のエレベータで殺し屋はグラントを殺そうとはしないが、緊張した空気が漂う。この空気は母親の可笑しな、しかし事情を知らない人間としては至極もっともなセリフによって崩れる。

「あなたたち、本当に私の息子を殺すつもりなの?」
"You gentleman aren't really trying to kill my son, are you?" 69p

 そしてエレベータが開いて一目散に逃げるグラントに、まるで学校に行く息子を見送るように母親が言う。

「ロジャー! ロジャー、夕食には家に帰ってくるの?」
"Roger! Roger, will you be home for dinner?" 70p

 途中で殺人の濡れ衣を着せられたロジャーは、列車の中で謎の美女と知合う。彼女のコンパートメントにベッドがひとつしかないのを見て、ロジャーは彼女を口説こうとし、あっさりかわされる。

「これはいい前兆だと思わないかい?」
「素晴らしいわね」
「これがどういう意味かわかるかい?」
「ええ」
「何だい?言ってみてくれ」
「あなたが寝るのは床の上ということよ」
"Well, it's a good omen, don't you think?"
"Wonderful."
"You know what that means?"
"Mmm."
"What? Tell me."
"It means you're going to sleep on the floor."
96p

 しかし彼女はロジャーを付け狙う敵の一味だった。敵の罠を切り抜けて九死に一生を得たロジャーに敵の首領ヴァンダムは皮肉を言う。

「FBIよりもアクターズスタジオでトレーニングを受けた方がいいんじゃないのか」
「どうせぼくが死ぬ演技しか気に入るまい」
"Seems to me you fellows could stand a little less training from the FBI and a little more from the Actors Studio."
"Appararently the only performance that will satisfy you is when I play dead."
122p

 その他のセリフ。

「僕には仕事があるし、秘書や母親、離婚した女房が二人、それから僕を待っているバーテンダーが幾人かいる。少しばかり殺されてみんなをがっかりさせたくはないね」
"I've got a job, a secretary, a mother, two ex-wives, and several bartenders dependent upon me, and I don't intend to disappoint them all by getting myself slightly killed." 134p

「戦争は地獄だよ、ソーンヒル君。たとえそれが冷たい戦争であってもね」
"War is hell, Mr Thornhill, even when it's a cold one." 144p

「時として真実は、口いっぱいにつめられた虫のような味がするものです」
"Sometimes the truth does taste like a mouthful of worms, sir." 153p


<入手先>
 94年3月頃、トロント大学の書店でC$19.95で購入。
 買った時レジのお姉さんに「この映画は見た?いい映画よね」と言われた。

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97年3月1日作成