『出獄』
CALL NORTHSIDE 777


服役中の人間の無実を新聞記者が証明した実話を映画化した作品。原題の「CALL NORTHSIDE 777」は、無実の男の母親による新聞広告の連絡先のこと。

1932年12月のシカゴ。商店に2人組の強盗が押し入り、たまたま店にいたバンディ巡査が撃たれて死んだ。警察はポーランド系の移民であるトメク・ザレスカを犯人として捜索し、ザレスカが犯行の前夜に一緒にいたフランク・ワイセック(リチャード・コンティ)と併せて逮捕した。ワイセックは事件当日は妻と一緒にいたとして無実を主張したが、商店の女店主ワンダ・スカトニック(ベティ・ガード)の目撃証言が決め手となり、州の刑務所で99年の刑に服することになった。11年後、この事件の真犯人の情報を知らせた者に賞金5000ドルを提供する旨の新聞広告を目にしたシカゴ・タイムス紙の編集長ブライアン・ケリー(リー・J・コッブ)は、記者マクニール(ジェームズ・スチュアート)を取材に行かせる。広告の主はティリーという清掃婦の老女で、ワイセックの母親だった。息子の無実を信じる彼女は11年間働いてためた金で、息子の無実を証明する情報を手に入れようとしていたのだ。取材に気のりしなかったマクニールだったが、老母の記事が意外な反響を呼んだため、更に収監中のワイセックや、離婚した妻ヘレンとその息子などにも取材を行う。はじめはワイセックの冤罪説に懐疑的だったマクニールだが、少しづつ彼の無実を信じるようになる。嘘発見器の結果でも、ワイセックは嘘を言っていないとされた。だが警察は、マクニールが警官殺しの犯人の味方をしているとして、あまり調査に協力的ではない。妨害にめげずにマクニールが調べた結果では、女店主ワンダは、当初はワイセックを犯人とは認めていなかったが、途中で犯人だと認めるようになったというもので、彼女はワイセックを警察の面通しで初めて見たとしていた。だが、マクニールはワンダとワイセックが面通しの前日に同じ警察の車に乗せられる写真を、警察の記録の中から発見した。この写真が面通しの前日だと証明できれば、ワンダの証言の信憑性は崩れ、ワイセックの無実は証明できる。だが、警察と検察、知事室の人間が新聞社を訪れ、記事を中止するよう、社主に圧力をかける。編集長とマクニールはワイセックの無実を力説し、ワイセックの事件を赦免委員で再検討する代わりに、無実が証明出来なければ、記事を中止するという取引に応ずる。これまで集めた証拠では、委員を納得させることが無理だと知ったマクニールは、証人であるワンダを探して、証言の誤りを認めさせようとする。マクニールはポーランド移民街を歩きまわって、ようやくワンダを見つけるが、彼女は自分の証言はあくまで正しいとし、マクニールに力を貸すことを拒否する。最後の頼みの綱も切れ、赦免委員会の当日、落胆したマクニールはワイセックの母に記事の中止を告げに行く。その帰り、タクシーの中で読んだ新聞記事にヒントを得たマクニールは、ワンダとワイセックが一緒に写っている写真を拡大し、脇に立っている少年の持つ新聞の日付を確かめようとする。写真拡大の技術を持っていたのは警察の技術者だったが、マクニールの記事に賛同しており、協力を約束する。州都で開かれている赦免委員に出席したマクニールは、拡大写真が出来るまで待ってほしい旨を説明し、検事は反対したものの、委員長に認められ、一同は写真が転送されてくる支局へ移動する。やがて拡大された写真が転送されてきて、マクニールの説明した通り、新聞の日付は警察の面通しの前日であることが明らかになる。ワイセックは釈放され、妻や子供と再会する。

冒頭、「この映画は事実に基づいており、可能な限り実際の現場で撮影された」との字幕が出る。実話に基づいたドキュメンタリータッチの作品で、現実の迫力が見るものを圧倒する。

当初の脚本に対してハサウェイは、新聞記者も服役中の男も、無実の証明が失敗しても何も失うものがないのでは、ドラマ上面白くないとして、赦免委員会を開いて有罪か無罪かを審議する代わりに、無実が証明できなければ、今後の保釈に悪影響がでるという設定を考えた。だが検事と取引するという展開がフォックスのザナックの気に入らず、一時行き詰まる。結局、ザナックの親友で盟友であったハサウェイの説得が成功し、クライマックスを盛り上げる展開になった。

アメリカの良心を体現する俳優であるジェームズ・スチュアートを主役にすえたキャスティングの力も、映画の成功に大きく貢献している。冤罪ものとして面白いのは、無実を証明する側のジェームズ・スチュアートが、当初は冤罪説に懐疑的で、あまり取材に熱心ではないが、調べるにつれて徐々に一生懸命になり、最後は無実を主張する中心人物になっていく点である。はじめから無実を確信して警察の悪だけを追求するような(盲目的な)理想主義者の主人公だったら、観客はあきあきしてしまっただろう。

48米/監督ヘンリー・ハサウェイ/脚本ジェローム・キャディ、ジェーイ・ドラットラー、レナード・ホフマン、クェンティン・レイノルズ/音楽アルフレッド・ニューマン/撮影ジョー・マクドナルド/出演ジェームズ・スチュアート、リチャード・コンティ、リー・J・コッブ、ヘレン・ウォーカー、ベティ・ガード/111分/白黒


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2002年8月11日作成