『突破口!』


<あらすじ>
 ニューメキシコ州の片田舎トレス・クルーセス。町の平和な朝を破るかのように、強盗団がウェスタン信託銀行の支店に押し入る。一味は男3人と女1人だが、男の1人は警備員に撃たれてその場で死ぬ。3人は大金を手に車で逃走するが、警官に撃たれた女は逃走中に死ぬ。強盗団のボスはチャーリー・ヴァリック(ウォルター・マッソー)。元プロペラ機のパイロットで、曲芸飛行や農薬散布から強盗に転身した中年男だ。死んだ女ネイディーン(ジャクリーン・スコット)は彼の妻だった。追手を振り切ったチャーリーは、生き残ったもう一人の男ハーマン(アンディ・ロビンソン)とともに車と死体を始末し、アジトのトレーラーハウスへ帰る。

 だが意外な事実が二人を待っていた。銀行から盗んだ金は、数十万ドルあったのだ。田舎の銀行には似つかわしくない大金だ。しかもラジオでは盗まれた金は2千ドルだけだったという。能天気に喜ぶハーマンをよそにチャーリーは戸惑う。これはマフィアの隠し金だ。売春や賭博などの非合法行為で得た金を海外でクリーンにするため、一時的に銀行に隠しおいたものなのだ。となるとマフィアは金を取り戻して彼らを殺すまで、追跡をやめないだろう。チャーリーの読み通り、組織の動きは素早かった。事態の重要性を知ったウェスタン信託銀行の頭取ボイル(チャールズ・ヴァーノン)は、組織のヒットマンのモリー(ジョー・ドン・ベイカー)に金の取り戻しと犯人の始末を依頼する。さっそくモリーは獲物を追う猟師のように調査を開始する。

 警察がネイディーンの死体の歯からその身元を割り出そうとしていると知り、チャーリーはその夜かかりつけの歯医者に忍び込んでネイディーンと自分のカルテを始末する。その際にハーマンのカルテを自分のカルテのファイルに入れ、中身をすり替える。翌朝チャーリーはハーマンが酔いつぶれて寝てる間に金を持ち出し、町へ来る。いよいよ一世一代の勝負の開始だ。チャーリーは銃砲店のトムから、旅券を入手するために偽造屋を紹介してもらう。そして偽造屋のジュエルに偽造旅券の作成を依頼し、ハーマンの免許証を置いていく。このチャーリーの動きはさっそくモリーにキャッチされる。モリーは偽造屋で二人の情報を入手し、そのアジトをつきとめる。

 一方ボイルも、支店長のヤング(ウッドロー・パーフレイ)に会うためにトレス・クルーセスに行く。組織がこの件でヤングを疑うだろうからと、ボイルは彼に国外逃亡を勧めるためである。だがその裏には、組織の疑惑の目をヤングに向けさせようとするボイルの狙いがあった。銀行で隠し金のことを知っていたのはボイルとヤングだけであり、自分も組織から疑われることをボイルは知っていたのだ。実直なだけが取り柄の田舎の銀行家ハロルドはボイルの言葉を真に受け、悲観して拳銃自殺する。

 チャーリーのアジトをつきとめたモリーは、トレーラーハウスに押し入り、中にいたハーマンを拷問にかける。しかし金のありかはチャーリーしか知らないとわかるとハーマンを殺して立ち去る。チャーリーはその様子を外で隠れながらじっと見ているだけだった。

 夜が明けてチャーリーは活動を再開する。町で爆薬を買った後、リノの銀行本社に電話してボイルと話をしようとする。ボイルはトレス・クルーセスへ来ているのだが、チャーリーには不在だとしかわからない。チャーリーは自家用のプロペラ機を運転してリノへ飛び、ボイルの秘書フォート(フェリシア・ファー)から直接ボイルの連絡先を聞き出す。ボイルはトレス・クルーセスのバーでモリーとビリヤードをしていた。チャーリーが偽造屋に現れなかったので、モリーの追跡は行き詰まってしまったのだ。チャーリーは電話でボイルに郊外の廃車置き場に翌朝一人で来るよう指示する。そこで奪った金を返すから、追跡をやめてほしいと。電話の後、ボイルはチャーリーの言葉通り一人で行くと言い、モリーは疑惑の目を向ける。

 翌朝、チャーリーは飛行機で廃車置き場へ飛ぶ。待っているボイル。飛行機から降りたチャーリーは、モリーが密かにどこかで隠れて見ているのを承知したうえで、ボイルと抱き合う。あたかもボイルとチャーリーが仲間同士であるかのように。それを見たモリーはボイルはチャーリーの仲間だと確信し、二人に向かって猛スピードで車を突っ込む。訳が分からないままにモリーにひき殺されるボイル。飛行機で逃げようとするチャーリーと、それを追うモリーのシボレーとの壮絶なチェース。だがついにチャーリーは運転を誤って飛行機はでんぐり返しをしてしまう。コックピットで宙釣りのチャーリーに、モリーが近づいてくる。チャーリーは、金を返すから逃がしてくれとモリーに頼む。もちろんモリーはチャーリーを生かしておくつもりはないが、金を確認するために渡されたキーで近くの廃車のトランクを開ける。だがトランクの中にあったのはハーマンの死体だった。腕にはチャーリーの腕時計をつけている。モリーがはめられたと知った時にはすでに遅く、仕掛けられた爆弾がモリーもろとも車を吹き飛ばした。それを見届けたチャーリーはコックピットを脱出し、飛行機から金の袋を引っぱり出す。そして作業服を炎の中に脱ぎ捨て、付近に金を少しばらまく。すべてはチャーリーの計略だったのだ。ハーマンの死体を彼自身の死体に偽装し、金もすべて燃えてしまったと組織に思い込ませて、追跡をふりきろうというのだ。 一人になったチャーリーの車は、荒野の彼方へと走り去っていく。


チャーリー(ウォルター・マッソー)は田舎の銀行を襲撃するが・・・

あらすじ 解説/一口メモ スタッフ/キャスト


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98年10月1日作成