中原 憬がお勧めする画家、版画家


基本的には美しいものが好きです。絵を見ると作者が伝えたかった想いを心に満たせるのが良いですね。


ウィリアム・アドルフ・ブグロー


 美しい天使の絵を探すと必ずこの画家の絵に行き当たります。光の明暗を生かした丁寧な画風で、理想的な美しさの体現であるかのような半裸の男女の天使や無邪気な子供の天使などが写実的に描かれます。ロマンチックでエモーショナルなシーンが多く、完成されたロマンティシズムというものを味わえます。


モーリッツ・コルネリス・エッシャー


 この人はだまし絵で有名な版画家で、不思議な作風を持っています。メビウスの帯を歩き続ける蟻、平面を複雑な繰り返しパターンで埋め尽くす動物、果てしなく循環する水の流れ、そして、無限の中でメタモルフォゼス(変化)しながらも、やはり無限のパターンにとけ込む生命。この版画家は、果てしないもの−−−−無限という概念に憧れていたように思います。この版画家が見つめていたものを共感するときに、懐かしくも身震いのする感覚が甦るのです。


アンリ・ファンタン・ラトゥール


 この画家は花や果物の静物画を得意とした人物で、日本ではほとんど無名です。この画家と出逢ったエピソードを紹介しましょう。ある日、部屋に飾ってある絵はがきの作品−−−−天使のような羽を持った美しい女神が花束を差し出している(眺めている?)という作品と、壁に飾ってあるポスターの作品−−−−薔薇の静物画の二つの作品のサインが同一人物のものであることに気付いたのです。どちらも別な機会に美術展でそれと知らず買い求めたものですが、不思議なものです。後にこのラトゥールのことを調べたところ、19世紀のフランスの画壇で、薔薇の花を描かせたらこの人の右にでる人はいない、と謳われていたそうです。美術展で思いがけなくこの人の作品に出逢うと、思わず立ち尽くしてしまいます。


アルフォンス・マリア・ミュシャ


 19世紀パリ、世紀末の華やかさに包まれたこの都市で、アール・ヌーボーというひとつの美術様式が生まれました。このアール・ヌーボーを生み出したのが、このアルフォンス・ミュシャです。多くの作品で女性をモチーフとし、幻想的な流れるような曲線で構成された様式の中の女性の美しさにはただただ圧倒されます。この版画家はヨーロッパではもはや古典的な名声を確立しており、近年では日本でも広く親しまれるようになり、ファンとしてはうれしい限りです。





                                作者紹介に戻る