ミニエッセイ [社会と文化]
Written by 中原 憬
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社会と文化に関するとりとめのない日々の短い雑感です。
2004.11.23 更新

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No.9 二種類の笑い
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世の中には二種類の笑いがある。
それは、「奪う」笑いと、「与える」笑いだ。
「人を傷つける笑い」と、「人を包み込む笑い」と言ってもよい。
昔の笑いを提供する番組は、自分を笑い物にさせて、笑いをとった。
だが、最近のバラエティ番組は、他人を笑い物にして、笑いをとる。
他人が苦しみ、怖がり、痛がるさまを嘲笑する。
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例えば、熱湯の入った風呂に何秒入れるか競わせて、笑いものにする。
例えば、無理やり熱いおでんを食べさせて苦しむさまで、笑いものにする。
例えば、ジェットコースターに乗せ悶絶する顔をアップにし、笑いものにする。
例えば、バンジージャンプをさせ、ときには突き落とし、笑いものにする。
例えば、ワサビを詰め込んだにぎり寿司を食べさせて、笑いものにする。
例えば、断眠時間を競わせ、その苦しむ様子を観察して、笑いものにする。
例えば、男女の関係で人を裏切るようワナを掛けて、騙して、笑いものにする。
例えば、生理的に食べられない嫌いな食べ物を食べさせて、笑いものにする。
例えば、公然とお互いの悪口を言わせ傷つき合わせることで、笑いものにする。
例えば、怖がる人を深夜の霊スポットに置き去りにして、笑いものにする。
例えば、ライオンやワニなどの猛獣に危険な行為をさせ、笑いものにする。
例えば、回答を間違えると椅子に電流が流れるようにして、笑いものにする。
例えば、水を張った洗面器に長時間顔を付けさせて、笑いものにする。
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どれも本質は、拷問にすぎない。
見る人が見れば、どれも血がドクドクと流れている陰惨な演出だ。
良識にひっかからない程度に加減した「プチ拷問」といえる。
「リアクション」が大きいほど、痛み、苦しんでいる様子が伝わる。
そう、誰かが傷つけられると、楽しいのだ。
それが、もはや当たり前の娯楽になっている。
自覚して観ているのなら、何も言わない。
だが、自覚しないで観ていて、ある日、まさか自分の家の子供が
イジメをしていたなんてとか、罪を犯すなんてとか驚くのはおかしい。
自分が手を汚さずに、他人を蔑む(さげすむ)快感や、
他人が苦しみ、怖がり、痛がるさまを観る快楽を、これほど
長時間提供すれば、どのような結果になるかは明らかだ。
特に、子供に対する影響は、深刻だと思う。
陰湿で暗い社会をつくり出すために、これほど役立つ笑いもないだろう。
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No.8 文化と習慣の違い
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韓国では伝統料理として犬肉料理があるのだという。
日本では、そんなことは頭のおかしい人しか考えない野蛮で
非常識な行為だと受け止められる。
もちろん、私もそう思う。生理的に受けつけない。
ところで、インドでは牛は神様なのだという。
もちろん、牛肉は食べない。
きっと、インドの人から見ると、牛肉料理をよく食べる
日本人というのは、頭のおかしい、野蛮で非常識な行為を
する民族だと見られているのだろうな。
それに、イスラム圏の人たちから見ると、豚肉料理をよく食べる
日本人というのは、頭のおかしい、不浄で非常識な行為を
する民族だと見られているのだろうな。
さらに、欧米の人たちから見ると、鯨肉料理を食べたがる
日本人というのは、頭のおかしい、残酷で非常識な行為を
する民族と見られているのだろうな。
お互いの文化と習慣というものは、基本的には理解し合おうと
いう姿勢が大切だが、でも、食文化の相互理解の壁は高いかも。
・・・かもといえば、私は鴨肉を食べる人がキライ。
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No.7 頭の良くなる薬が完成すると
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実は、既にアメリカには大脳生理学の成果として頭の良くなる薬があるらしい。
個人輸入して飲んでいる人をNHKの番組で見たことがある。
それに、漢方薬でもそのような調合があるとのこと。
頭が良くなることは人類共通の願いだろう。
チャーリイ・ゴードンも最初はそう願ったし。
でも、実際には頭が悪くなる飲み物が人々の間では人気だ。
それを飲むと大脳皮質の活動が抑えられ、理性があまり働かなくなる。
過剰に飲むと、翌日記憶障害も起こる。
一時、アメリカでは法律でその飲み物の製造・販売を禁止したそうだが、
すぐに悪法として解禁せざるを得なかったそうだ。
人々はその飲み物を愛する。特に、「人生、やってらんない」という
気持ちのときに大いに役に立つ。解放的な気分になって、幸せにさえなる。
ストレスにさらされている人達が、日常の憂さを忘れる格好の手段なのだ。
それに、お互い仲良くなろうというときには、必ず提供される飲み物だ。
頭がよいことが、幸せな訳ではない。
(チャーリイ・ゴードンもそういう結論に落ち着いた)
ところで、私もその飲み物は好きだ。赤い奴と白い奴があるのがいいな。
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No.6 肥満防止の薬が完成すると
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食べても食べても太らない薬は夢の新薬だ。
そんな薬が完成すれば、人々は享楽的に食事を心ゆくまで楽しむだろう。
一日中、食べて、食べて、味わい尽くすだろう。
しかし、現実にそんな新薬ができれば、地球規模で食料バランスが狂って、
飢えが拡大するのではないだろうか?
現在でも、飢餓に直面する子供達はたくさんいる。干ばつなどの
異常気象や戦乱の影響で作物が充分に人々に行き渡らないのだ。
地球全体では、総人口が飢えないだけの作物が生産されているという。
しかし、先進国からの買い付けが優先され、目の前の作物を口にする
ことができないという人々がいる。食料が高くて買えないのだ。
革命的なダイエット薬の完成は、先進国の人口爆発と同じ効果をもたらす。
先進国の人々は、甘いもの、美味しいものと、果てしなく食欲を満たし続け、
そのしわ寄せとして、貧しい国々で飢えが子供の命を奪うことにならないだろうか。
そんな薬はできない方がいい。食べたらその分、醜く太ろうか。
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No.5 老化防止の薬が完成すると
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人が老化する原因が徐々に究明されつつあるらしい。
さらに研究が進めば、人は本当に老化しなくなるのかも知れない。
すると、自分の子供に飲ませてしまう親が出てくるのではないだろうか?
純真で可愛いさかりの子供に対し、このまま成長が止まって欲しいと、ふと
願ってしまう親はたくさんいるはずだ。いつまでも、可愛いまま、反抗しないまま、
自分の保護下に置いておきたいというエゴイスティックな親が出るに違いない。
子供を自分達のペットのように考える親はいますからね。
子供の虐待の話を聞いたり、長期の監禁事件を聞いたりして、
ついそんなことを思った。
老化防止薬の成功は夢と同時に悪夢も運んでくる。・・・かも。
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No.4 偽造テレカ
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偽造テレカというものはある程度の技術力があれば
簡単に作成できるのだそうだ。
電話機本体を盗んできて、中のROMのコードを読み出して逆アセンブルし、
それを違うROMに書き換えると、電話機本体をコピーマシンにできるという。
制御に使っているマシン語がよく知っている言語だったので、
やる気があれば、私にもできるかも、と驚いたことがある。
もしテレフォンカードがフロッピーディスクだったらと想像してみる。
特定の機械でフロッピーディスクにこれは1000円というデータをコピーすれば、
それが1000円と等価の品物になってしまうのだ。機械さえあれば無限にコピーできる。
錬金術どころの手軽さではない。あとは売手を雇うだけである。
こんなものに金銭的価値をつけてしまうことは、犯罪組織に温床を提供するようなもの
だろう。実際、繁華街にいけば外人のバイヤーが変造テレカを売りつけてくる。
偽札が発見されると皆、目の色を変えるのに、このような現金に近い価値を
持つものが簡単に偽造できるなんて、間違っている。日本経済を腐敗させ、
日本の犯罪率の低さという安全神話をつき崩していく存在だろう。
決してNTTが損をするというだけの話ではない。
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No.3 長寿社会と女性
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一昔前の女性に比べ、現代の女性は文明の発達と都市のインフラ整備により、
家事の作業量が著しく減っている。
洗濯ひとつ例にとってみても、ごしごしと洗い板に擦り付けなくても、洗濯機に放り
込んでスイッチひとつで片付く。もちろん、水を井戸に汲みに行く必要もない。
あらゆる家事が合理化されてラクになってきている。
ずいぶん、家事の時間が浮いたことだろう。
しかし、いまや医療の発達などにより、日本は世界一の長寿国になっている。
長寿になった分、老親が寝たきりになる期間も確実に長くなってきている。
その親の面倒を看るという一大家事が女性に待っている。
しかも少子化で、親の面倒を看る兄弟姉妹の絶対数が少ないので負担も大きい。
結局、文明は発達したが、女性の家事の総量はプラスマイナスゼロなのではないだろうか。
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No.2 不況の行き着く先
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不況が考えうる限り最悪の状態になるとどうなるか。
その行き着く先は、食糧難である。
食料自給率の低い日本が飢えないのは、強い経済力でもって
海外から食糧を輸入できるからである。
経済システムの崩壊は、食糧難を招くことになる。
もちろん、いくつかの要因が重ならないとそこまでは悪くならないだろうが、
どこかの火山爆発や地域紛争における核の使用などで世界的な凶作になれば、
日本に輸入できる食糧が激減する可能性がある。
人間の生存にとって一番大切なものは、水と食糧である。
その食糧の大半が遠い距離にしかない現状は、恐ろしい。
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No.1 選挙率の低下
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年々選挙率が低くなっている。
政治に魅力がないから棄権などと言って選挙に行かない人がいるが、これは正しくない。
棄権の仕方は、投票所に行って、白紙を入れるのが正しい方法。
投票は国民の義務ですよ。
義務を果たさない人に、政治を非難する権利はありません。
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