『感じるインターネット』(アスキー)原稿より(96年6月)
【ハイパーダイアリーの聖地にWWWの神髄を見た】

『日記リンクス』(http://nikki.ita.tutkie.tut.ac.jp/nikki/)紹介



 WWW日記界の「神」と崇められる津田優の日記リンクスは、日記者/日記読者の聖地。それまで各地のサイトに孤立して存在していた日記を、「日記なページのリスト」として彼が体系化した瞬間、HyperDiaryが誕生した。そこから日記同士の相互言及や相互リンクのネットワークが生まれ、各日記が網の目状にに相互接続されはじめた。つまり、「はじめに日記リンクスありき。日記リンクスは神なればなり」ってことで、このページを抜きにしてHyperDiaryは語れない。

 日記リンクスに登録されたWWW日記の数は、スタートから一年少々ですでに500を突破、いまも続々と増えつづけている(ちなみに大森の狂乱西葛西日記は登録番号が14番なのでひそかに自慢)。インターネット雑誌には日記ウォッチ常設コラムもあるくらいで、なんかたいへんなことになっているのである。

 登場以来、数々の悲喜劇を演出してきた「人気ランキング」は、日記リンクスからジャンプしたアクセス数を集計するシステム。各日記のURLに直接飛ぶとカウントされないため、いったん津田ページに飛ばしてランキングに一票入れてもどってくる〈日記ランキング投票ボタン〉も一般化。現在は、月間、週間、日間、時間とタイムスパンに応じて四種類のランキングがあり(観測開始以来の累計ランキングが廃止されたのは残念)、努力次第では新設日記がトップをとることも可能。

 一方、熱心な日記ウォッチャーたちが重宝しているのは、各日記の更新状況がひと目でわかる「更新速度ランキング」。もはやすべての日記を読むことは事実上不可能なので、日記リンクスを使って新着日記をチェック、日常的に巡回するお気に入り日記は自分のブックマークやマイページのリンクコーナーに登録しておくってのが一般的かも。

 WWW日記の相互参照(他人の日記を読みつつ自分の日記を書く)が日常化するとともに、ディープな日記者のあいだにはコミュニケーションの輪が広がり、「女王陛下のCGI」(インターネットライフ好評連載中)でおなじみの河合あみこ嬢(人妻/セーラームーン系)を中心に、突発的かつ頻繁にオフラインミーティングも開催されている。個人ホームページャ同士でこれだけ活発にオフやってる例も珍しいんじゃないですかね。

 それもこれもひとえに津田リンクスの力。けっきょくハイパーテキストの最大の利点は、世界各地にばらばらに存在するデータを相互に関連づけすることで新たな関係性を発見し、ユーザが勝手に体系化できるってことにあるわけだから、WWW思想的観点から見ても、日記リンクスのシステムは圧倒的に正しいのである。ああしかし、それにしても五百とは。


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