【7月21日(金)】

 ソーントーンサイクル三部作完結編、久美沙織『青狼王のくちづけ』(新潮文庫8月末刊)のゲラを読む。二巻めの『舞い降りた翼』はちょっと不満が残る内容でしたが今回は傑作。国産異世界ファンタジーの最高峰だねってことで、各種資料をそろえてロイヤルホストにこもり、午前2時から4時間で全16枚ちょいの解説を一気にフィニッシュ。
 冒頭にTo Be Continued(「物語は続いて行く」)とウラジミール・プロップ(『魔法昔話の起源』)のネタを振ったら、To Be Continuedのほうは、校閲者もデスクも「?」だったそうです(笑) という話はともかく、傑作なのでファンタジーファンは読むように。しかし前二作はすでに目録落ちしてるんだそうで、元担当編集者としては慚愧の涙に耐えないことである。三巻めが十万部くらい売れたら復活するんだろうけどなあ。どこかでアニメ化しないかなあ……って無理だな。
 

【7月22日(土)】

 ↑の原稿を午前9時に担当者の自宅にファックスで送り、よしよしこれで心おきなく京都に行けるぜと思ってベッドに入ったのになぜか寝つけず、そのままミストラルで翻訳仕事。午後6時のひかりに乗って、京都駅から北大路駅まで地下鉄で出て、タクシーで高野の喫茶店へ。三村美衣・小浜徹也夫妻と待ち合わせて綾辻邸に乱入。
 京大ミステリ研現役某氏の話題で盛り上がるが、最近は我孫子武丸氏も京都インターネットでぶいぶいゆわしてるみたいなのでうかつなことを書くと綾辻さんにチクられるおそれがあるので自粛(笑)
 だいたい綾辻さんは作家イメージをきわめて大切にしているらしく、無許可でこのページに写真が載っていることについても「肖像権の侵害だ」とかぶつぶついってたもんなあ――ってだったら書くなよ>おれ。やはり革ジャンにサングラスの写真でないとダメなのだろうか。しかしカラオケ写真のほうがよっぽど(以下略)
 11時過ぎには小野不由美さまも合流。あいかわらず指の調子がよくないらしいが、綾辻いじめの口は冴えている(笑) ひさしぶりに天下一品でラーメン食べて、北白川バッティグセンター奥のボックスでBeMAX1時間半。んでもって綾辻邸にひきかえし、午前7時ごろまでに半荘2回。綾辻トップ、大森2着、三村・小浜ペアが3、4着でわたしは約3000ガバスの収入。綾辻さんはこういうレートだと強いのだが大人のレート(笑)になるとぼろぼろで経済効率がよくないらしい。名人戦も一回戦敗退だったそうで、やはり精神的に(以下略)


【7月23日(日)】

 ひとりで午前9時に起きて会場に先乗りした小浜徹也を尻目にぐうぐう寝て、12時前に起床。三村美衣、さいとうよしこと三人でタクシー乗って星群祭会場の御車会館へ。それにしても人が少ない。小浜といっしょに前で出てるとき、わりと退屈だったので数えてみたら客席には22人しかいなかったぞ(笑) だいたい創作系の集まりである星群祭でおれがしゃべってもしょうがないと思うんだけどなあ。
 お題は「ウケるSF」ってことだったので、これは形容矛盾ではないか(笑)という話をする。しかしその場で考えたんだけど、いまの出版界はSFがウケないんじゃなくて、ウケるとSFとは呼ばれないってことなんですね。典型的な例が『パラサイト・イヴ』なんだけど、ホラーアンソロジーとかの短編だって15年前ならSFと呼ばれていたにちがいない。ただし、現在ほかの名前で呼ばれて違和感がないのだとすると、70年代にわれわれが日本SFだと思って呼んでいたものははたしてSFであったのかという疑問が生じるわけですが、このへんのことはそのうちになにかに書くかもしれない。
 というわけで人前でものをしゃべると考えが整理されるというメリットはあるな。
 次の企画は眉村さんの講演で、ついまじめに聞いてしまう。セミナーのときは一部しか聞かなかったし。眉村さんの場合、発想の立脚点がわたしのような若造とはぜんぜんちがうので、聞いてるとけっこう新鮮で収穫あり。ただしポエニ戦争の話は長すぎたな。
 恒例星群ノベルズ合評を途中で抜けて、東大路の喫茶店(というかカフェバー)に入り仕事少々。三村美衣から「もう終わりだぜ」電話がはいったところで会場にもどり、堀さんとソリトンの話をする。ソリトンは3号になってかなりレベルアップ、商業誌に載ってもあんまりおかしくない、昔の日本SFっぽい(ってことはつまりいまだとSFとは呼ばれないタイプ)短編も少々。ガチガチのSFっぽい作品が多いのにあらが目立ちすぎて読めない星群ノベルズとは好対照ですね。ソリトン定期購読特典のプロ作家アンソロジーは、筒井康隆の人生相談が載るそうで、堀さんは燃え燃え。
 そのまま星群祭の二次会に顔を出し、一時間で抜けて四条河原町。阪急電車で梅田に出て、フコク名店街……じゃなくていまはフコクパレッタだっけか……の喫茶店トレビで関西海外SF研究会というかTHATTA友の会の例会。大野万紀一家、水鏡子、古沢嘉通、佐脇洋平親子、きくちまこと夫妻、てらさん@THTTA編集長、小笠原成彦@青心社などおなじみの人々とおなじみの会話をする。姫路で仮設住宅生活者となった佐脇洋平@グループSNEというか、細美遙子の夫の人は、486/75のデジタルハイノートウルトラをおととい買ったばかりで持ち歩いていた……のでダイナブックSS450と対決する……が値段で最初から負けているのだった(笑)
 旭屋→中華料理屋→喫茶店のコースを最後までつきあって、けっきょく新幹線の終電を逃したので東梅田のビジネスホテルで一泊。あーしんど。


【7月24日(月)】

 さいとうよしこが2時に市ヶ谷のSONYマガジンズで打ち合わせの予定ありってことで、8時に起きて泉の広場のそばの喫茶店でモーニング。10時ごろの新幹線に乗って東京帰還。東京駅でさいとうと別れて西葛西にもどり、ACアダプターもパソコンもあるしってことでそのままミストラルで仕事。働き者なわたし。
 家に帰ってメールを見ても返事を書く気力がなくばったり倒れる。


【7月25日(火)】

 Gamewalkerの締切が迫ってるんで、週末に届いてたのに京都に持っていくのを忘れた「リグロードサーガ」に着手。クイーンズランド女王国っていいよな。戦闘はアークより楽しいけどグラフィックがごちゃごちゃしすぎるのが難。
 とか書いているのはもう8月なんですが、JAVA番長もこの時期にプレイしてけっこうお気に入りだった模様。しかし最強に強まっているタクティカルシミュレーションはぢつはイタチョコシステムの「うそつきと私」じゃないかとひそかに思う私。でも仕事じゃないゲームをやっているひまがない私。人生の悲哀だな。いいもんバーチャルボーイ買ってやる(笑)
 JAVA番長といえば、MediaFront最新号でご尊顔を拝見、これで予習したからShadowの打ち合わせはばっちりだぜと思ったら、日記によるとあの写真ははずれらしい。まあしかしくぼたつにサンドイッチされたくない気持ちはよくわかるかも(笑)


【7月26日(水)】

 きのうにひきつづきリグロードあんどアクアノートの休日。いやあアクアノートはいいっす、いまさらですが。しかしどうも根が短気なのでソナー打ったりじっと静止したりのコミュニケーションはめんどくさい(笑) 白イルカはなかなか見つからないし宇宙人も見てないぞ。って2時間くらいじゃ無理か。
 金曜から熱海の予定なので、それまでに今週の仕事をかたづけなきゃいけないんだけど、数えてみたら原稿が六本(笑) あわてて寝室にこもり、小説すばる書評用の金井美恵子『恋愛太平記』2巻本を読みはじめ、疲れるとゲーム(笑) 金井美恵子はもうちょっとゆったり読みたいんだけど集英社にもらった本だから文句もいえない。やれやれ。あーしかしこれは爆笑っす。なんか意地わるの度合いが増してるような気がするな。


【7月27日(木)】

 Gamewalker、小説すばる、ペントハウス、MediaFrontの原稿をぶっ書く。あーきのう寝過ごして「エンドレス・ワルツ」(鈴木いづみ&阿部薫が主人公の稲葉真弓のノンフィクションノベルの映画化)の試写を逃しちゃったからNetWorksのい映画評が書けないぜ。困ったなあと思って編集部に電話すると、「佐々木は8月2日まで休暇です」でまんもすらっきー。書きかけていたhotlinkの原稿も放り出して、んじゃもうちょっととリグロードを進めたり(笑)


【7月28日(金)】

 朝9時ぐらいにNetWorks以外の原稿をぜんぶ送って寝る。と思ったら10時半というとんでもない時間にタカハシ氏@BNNの電話でたたき起こされる。
「NIFTY-Serveからのメールが届いてないんですが。リムネットからの画面ショットのほうは来てるんですけど」
 ってそんなの知るかよなんかNIFTY-Serveのメール送信が不調で時間かかるってメッセージ出てたけどなあ、待ってりゃ着くんじゃないのまったくとか殺伐とした気分になりそっけなく電話を切ったものの目が覚めてしまったので原稿をリムネットから送り直すことにしてDynabookに入ってたファイルをチェックしてみたら宛先がmakoto@bnn.co.cpになってやんの(笑) いやあすまんすまん手動で入力するとこれだかんなあと反省しつつ送り直し、そのままミストラルで仕事。無理やり起きちゃったわりにがんがん翻訳が進む。
 熱海にはお坊っちゃんSFファンの野口誠@SONY(理科大SF研OBで現SFセミナー事務局長)のお父さまのリゾートマンションがあって、ここ数年、毎年夏はそこでうだうだするのが恒例なんですが、3時半ごろ、同行予定の三村美衣から携帯に電話がかかってきて、午後6時東京駅待ち合わせってことになる。なんかホワイトハート新人賞の下読みでたいへんだと泣いてたけど行けることになってよかったよかった。
 と思ったら三〇分後にふたたび電話。亭主の小浜徹也@東京創元社が喘息の発作を起こしていまから帰ると電話がかかってきたので行けなくちゃったよー。あーまったくせっかく準備して玄関出かけてたとこに電話のベルが鳴ってこれだもんぷんすか。あーそーですかまーおだいじにねー。
 ってしかし小浜くんは毎年熱海に行っては滞在中に喘息げほげほ男になってたんだけど、なんだ熱海のマンションのせいじゃなくて、毎年この季節には発作起こすのな。
 まあ最近はテレサ・テンのおかげで世間の目は比較的喘息患者にやさしくて、会社だってなんだってやっぱり目の前で死なれるとやだから早退・欠勤の融通もきくわけで、いい世の中になりました。しかしなぜかわたしの場合には喘息の発作は前から週末に起きるんだよな。
 というわけで小浜夫妻は今回は欠席になってしまいましたが、この日たかをくくって病院で点滴を受けなかったばっかりに翌日大発作を起こして意識不明状態に陥り救急車で運ばれて一命をとりとめるという事件が出来するのはこの時点では知る由もない。
 しかしおれはちゃんと電話で、「どうせ明け方とかに発作が出ちゃうんだからいまのうちの病院行って500ccくらい点滴しといたほうがいいよん」と言った事実は記録にとどめておこう(笑) まあこのへんのドタバタ騒ぎについては、もし万一更新されることがあればてんぷら★さんらいずページで読めるでしょう。救急車内部の写真とかでもさすがにQV-10では撮ってないか(笑)
 むかしおれが東名高速で思いきり事故って高速バスの待合い室をぶっつぶして死にかけたときは、調書をとられるときに現場写真を見せられて、「この写真、記念にもらえないですか?」ときいてだめだといわれた経験があるという話はよく考えてみるとあんまり関係ないな。
 まあそんなわけで参加者が二名減りつつも、午後六時に東京駅新幹線南口で小江雅美嬢と落ち合って一路熱海。さすが夏休みで生意気にもこだまが満席だけどなんとかすわれて7時過ぎに到着。クルマで出たオーナー(の息子)夫妻も道路めちゃ混みで遅れたもののわれわれが着く寸前にたどりついていて無事合流。しかし買い物ゼロ状態なので夕食は蕎麦屋の出前ですませることに(;_;)
 んでもってメインエベントの花火大会が開幕。いやあやっぱり夏は花火だよね。夏は会社という名の別荘でサマーライフを満喫する高橋誠氏@BNNは花火の最中に携帯に電話をかけてきて滂沱の涙を流しておりました。ま、人生いろいろだ。
 イベント終了後、桃鉄に興じる人々を尻目にソファで2時間仮眠、むっくり起き出してさらに3時間仕事をして寝る。


【7月29日(土)】

 昼過ぎに起きてマンション屋上プール。やっぱり夏は屋外プールだよね。どうも屋内プールってのはしみったれてていかんす。
 2時間泳いでから、ひとり徒歩2分の距離の喫茶店Withにこもって働く。なんかこういうとこでちょこちょこ仕事するほうがピッチが上がる気がするな。リーダーズ英和辞典と原書のテキストデータがHDにぶちこんであるから、電源さえあればどこでも仕事ができるぞ。液晶バックライトだから真っ暗な環境でも安心さ。
 きのうはあえなく店屋物に終わった夕食のカタキを打つ勢いで、近所の魚屋その他で大量の食糧を買い込み、野口夫人を筆頭に奥様方がセッティング。今回、大森は非常事態宣言中なので、ベランダにデッキチェアだして仕事。準備ができたところでひたすら食う食う食う食うってそんなに食ってどうすんだろね、まったく。イサキの塩焼きが一等賞。アサリもうまかったす。
 こんなに食っちゃ仕事にならないよねってことで、「ほんとうの桃鉄を見せてやる」と宣言しもりりん番長(笑)となって参戦。ゆうべトップで天狗になっていた野口の鼻を叩き折る(笑)
 熱海ではなぜかデフォルトで夜は桃鉄ってことになってて、数十年単位のゲームをするときは、最初にひとり頭5000ガバスとか出してプールして、最終資金に応じて分配する賭け桃鉄(笑)をやったりもするですが、なにしろ非常事態なので短期決戦で5年クリアし小江雅美を抑えて日本一社長になったところで仕事に復帰。


【7月30日(日)】

 野口夫妻は実家で用があるとかで知らないうちに帰っていた。えらいことである。朝まで働いてたので2時ごろまでぐーぐー寝てからまたプール。風呂にはいって部屋をかたづけ――というか、奥さんたちが片づけた――熱海に来ると必ず寄ることになっているニュー富士屋ホテルのそばのマーブルケーキがおいしい喫茶店でティータイム。奥さんたちを放し飼いにして荷物番&仕事。近くのイタ飯屋(なんかピザの味が落ちた気がする)で晩飯食って、9時半の新幹線で帰る。


【7月31日(月)】

 メディアフロントの原稿用に借りたマイクロソフトオフィスの辞典ROM3点セットをとりに、タカハシ氏がミストラルに来訪。ジャストシステムから届いたばかりのサイバーSFアンソロジー『シミュレーションズ』を暑中見舞いに贈呈。しかしこんなSFアンソロジーに2700円(だっけ?)なんて定価をつけて売れるんだろうか。
 どうでもいいけどこの本には付き物関係の翻訳クレジットがついてなくて、ふつうに考えると代表訳者の浅倉さんが訳したみたいっすけど、あれは文責大森です。もっとも巻末のブックガイドは原書の書誌情報がまちがいだらけで相当直したけどまだ間違いが残っているかもしれなくて、これは責任は負いたくないのでSFおたくな人は編集部につっこんでね。
 ジャストシステムはサイバーSF論の翻訳も進めてるんだそうで、原稿のプリントアウト(どう見ても文豪だなこりゃ)がどさっと送られてきて、解説と邦訳チェックおねがいしますといわれたけどどう見ても大森向きの本じゃないので中村融先生にでもお願いしてかわっていただく予定(とか書いてるとタイトル教えろと古沢嘉通からチェックが入るのは目に見えているのだった)。しかしSF出版社はコンピュータ系の出版社が支える時代になりつつあるような。