ウェブ上で読める『航路』感想リンク





●一部を抜粋・引用しています。全文はリンク先を参照してください。
(未掲載のリンク先をご存じの方は下記掲示板等で報告していただければさいわいです)


【関連サイト】
・ありさとの蔵「ブライアリー英文学集成〜『航路』登場文学作品解説〜」
新・大森なんでも伝言板ログ前ファイル)*多少のネタバレあり
「二三郎くんと仲間たち ミステリ談話室」
『航路』ネタバレ掲示板←完全ネタバレOK。読了後のブラウズを推奨。
・2ちゃんねるSF板「コニー・ウィリス『航路』ほか」スレッド←ややネタバレあり
WEB本の雑誌『航路』紹介ページ(立ち読みコーナーでは本文冒頭6ページ分が読めます)
ソニー・マガジンズ『航路』紹介ページ(東浩紀/香山二三郎/香山リカ/新保博久/関口苑生/千街晶之/茶木則雄/豊崎由美/西上心太/三村美衣/山田正紀/吉野仁の各氏のコメントが読めます)


【活字媒体書評】
・日本経済新聞11月24日付朝刊(風間賢二) ・ 香山リカ『「臨死」実験を自ら選びとった女性心理学者の壮大な旅とは』(『週刊現代』11/23号、166ページ)
・ダカーポ11/10号(豊崎由美)
・週刊新潮11/23号
・日刊ゲンダイ
・週刊読書人(冬樹蛉)
・〈小説推理〉2002年12月号(森下一仁)



・すみ&にえ『ほんやく本のススメ』
「にえ『とにかく、知識のつめこみ方が本当に自然で、うまいんだけど、医学だ、科学だっていう、おもしろいけど、理解してついていくのが大変〜って話ではなくて、もっと違う方面で楽しませ、感動させてくれる小説です。素晴らしかったの一言につきるな。』 すみ『何度も驚かされ、ぐいぐい引っぱられまくるストーリー展開だったし、メイジーのセリフに2度ほどホロッと泣きそうになる箇所があったりもして、とにかく夢中になって読めました。いろんなタイプの小説のおもしろさを抽出して、ひとつにまとめたような小説。もちろん、オススメ! 』」
・大沢志路『読書日記』
「●2002/10/21 (月) コニー・ウィリスの『航路』があまりに面白かったので、どうでも良い小説やら読まなくても良いような作品を読むガッツを失ってしまった。ああいう娯楽小説を365日読めてしまったら溺れに溺れて社会をドロップアウトして日々図書館に通ってしまうのではないだろうか。アルコールより何よりも物語に対する中毒は強い。エンターテイメント万歳。堪能した」
・堀越正男『Book Share』
「ひさしぶりに小説に夢中になって、電車を乗り過ごした。(中略)読みどころはあっと驚く展開部分だけではない。増改築を重ねた迷路のような巨大病院の中で、医師、看護婦、患者達の姿がいきいきと描かれる。が、なんと言っても圧巻なのは臨死体験の描写だ。
ちびちび読んでいると、先が気になってストレスがたまる。時間をとっての一気読みをお奨めする。読みやすく、かつ読書の醍醐味が堪能できます。」
・『北海道新聞「ほん」のページ』2002/11/17付
「死の向こうには何が待ち受けているのか。臨死体験の意味を解き明かそうとする2人の医者を主人公に、生と死の謎をスリリングかつ感動的に描いた医学サスペンス巨編。さまざまな人間ドラマが折り重なってひとつの壮大な物語へと昇華する面白さは、まるで上質のハリウッド大作映画を見るようだ。」
・『本のことども』
「著者がアメリカのSFの女王と呼ばれるからといって、SFとして読むなかれ。極上の物語小説として読むべし。訳者はそのあとがきの中で「十数年で四十数冊訳してきた中で最高」と、自分が今まで訳してきた本までをおとしめて絶賛している。評者の評価は◎。読んでみないとわからない話をあえてすれば、58章で筆を止めてほしかった。物語を終わらせてほしかった。58章を読み終えての余韻はグッと胸を突くものがあり、58章が最終章であったなら、評者は間違いなく◎◎としたことだろう。それでも本書は、極上の物語には変わりない。読み終わって楽しさを感じる本というより、読んでいて楽しい本である。(20030212) ※読書の楽しさを認識させられる、読みやすい一冊。ホワイトデーの日に読書好きの彼女へプレゼントするのに最適かと。」
・ゆめのみなと『reading diary』2003.1.21(火)
「 文学作品の引用もたくさんありますが、物語のすべてに暗喩が含まれていて、それがどんどん明らかになっていく最後のほうは、おお〜と思いながら読んでました。知識がないので読み落としたところがたくさんあると思うんですが、それはそれ、想像で補って読んでもおもしろかったです。  第一部から病院内をお腹を空かせながら歩きまわり、仕事や連絡に追われつづけるジョアンナの姿がたたみかけるように描かれているため、こちらもなんとなく忙しなくなっていたのですが、それもふくめて、ほんとうにすべてが一部の隙もなく構築されていたんですね。伏線だらけらしいです。らしいというのは、私にそれを求めるなということと同じ意味(私がやたらに共感していたのは、知っているはずなのに思い出せないものを、ジョアンナが一生懸命につかまえようとするところ)(笑。  とにかく、面白かった〜。 」
・yamineko『北極圏まで何リーグ?』2003.2.15
「臨死体験を扱ったSF。これで泣かされない奴はいない! という煽りを受けて読んだのだけど、泣かなかった(笑)。だってこれ、登場人物がアメリカのドラマみたいじゃない? 臨死体験の描写は好きだし、一気に読まされたけどね……。」
・mopsa『グラノラブックス』
「『ドゥームズデイ・ブック』でおぼえのある、ユーモアたっぷりのウィリス節が健在。慢性的に多忙すぎる主人公が息つく暇もなく東奔西走、ライバルを避けていらぬ手間を取り、饒舌な人々の悪気のないおしゃべりに時間を浪費させられるという、せわしなさともどかしさのコラボレーション。ジョアンナの疑似臨死体験の意味するものは何なのか?なぜ「それ」を見るのか?手がかりを握っていそうな高校時代の恩師がアルツハイマー病になってしまっているなどの障害を克服しつつ、謎の解明は急ピッチで進む。この辺り、巻を置くあたわずといった感じで、引き込まれた。 そこで唐突に、「まさか!」の事態に。こんな展開にして、作者は何を語ろうというのか?と呆然。私は禁じ手たる奇跡の顕現をなかば期待してしまったが、作者はペースを乱さず、冷静に筆を進めていった…。にくい。 だからこそか、ラストのもの哀しくもジワーッとあたたかい、静謐な雰囲気がここちよい。生命力の不可思議さ。思いの強さ。人間がいとおしくなる。(03/01/25記) 」
・九州朝日放送『今週の紹介本』10月29日(火)
「上巻はかなりゆったりとしたペースで話が展開していきます。ジョアンナの記憶が何かに結びつきそうで結びつかないそのもどかしさがたまらず、つい読み進めてしまいます。そして下巻になると加速度的に話が展開し、途中で読み止めるのはかなり辛いです。39章では「まさか!これからどうなっちゃうの?」と思うこと間違いなし!。気になるでしょ。果たしてどんな航路を辿るのか、ご自分の目で確かめて下さいね! (田崎日加理) 」
・『dh's memoranda 』
「読みはじめてすぐにその面白さに捕まったまま、しかしまとまった時間もあまりとれず、やっと読み終えました。今回のテーマは「臨死体験」。といっても、そこは、ヒューゴ、ネビュラ、キャンベルのトリプルクラウン作家、この似非科学テーマを見事にSFに書き切っています。「ドゥームズデイズ・ブック」でも感動しましたが、それを越える感動です。描写の細かさ、退屈させない個性の強い登場人物の数々、そして一つのアイディアで長編作品を描き切ってしまう筆力の冴えには、ほとほと感心します。SF好きにも、そうでない人にもおすすめです。」
・橋詰久子『月世界通信/Day by Day 1月16日 春は馬車に乗って』
「登場人物のほとんどに好感を持てず、舞台となる病院には患者・関係者どちらの立場でも関わり合いたくないなあと、ず〜っと思いながら読んでいたわけありますが、でも、私が感じた難儀な様子はもちろんちゃんと理由があるわけで、それは個々に描かれたものから、もう一つ大きなものが出現してくる仕組み。私にはそのくどくどしたうんざりぶりが世界(現実)の象徴のように思えました、決して登場人物の日常を語っているわけではないけれど。そう気づいたときから、よっしゃ〜それなら付き合おうじゃないかってなわけで、最後まで無事に読めたかな。もちろん、主人公が探す何かを知りたかったのと、探す過程をたどることによって、どこかへ抜け出すことができるのではないか、という期待もあった。この期待こそが、本書を読ませる最大の原動力で、繰り返しになるけれど、読者(というか私の場合)にそう受け容れさせるために、あれだけの長さは必要だったのです。  そしてその期待は裏切られることはなく、ある転換を迎えてお話は大きく動き出し、なんだか和気藹々になってるぞ。とりあえずよかったよかった。また主人公が探し続けた言葉そのものに、私はドッキリしたのでした。ただ、この言葉だけを知ったとしても同じぐらい感銘を受けたかもしれないということを告白しておきます。でも、読み始めたら読み終える値打ちはある小説だと保証しますぞワタクシ。いや私が保証せずとも、いろんな人が評価してるけど、せっかくだから言ってみようかなって。」
・『dh's memoranda』February 03, 2003
「感想は「すばらしい」の一言でした。(中略)「ドゥームズデイズ・ブック」でも感動しましたが、それを越える感動です。描写の細かさ、退屈させない個性の強い登場人物の数々、そして一つのアイディアで長編作品を描き切ってしまう筆力の冴えには、ほとほと感心します。SF好きにも、そうでない人にもおすすめです」
・風間賢二『結晶する恐怖』(KADOKAWAミステリ2003年1月号掲載)
「 瀬名秀明のベストセラー作品『BRAIN VALLEY』を堪能した読者にお薦めの大作を最近読んだ。コニー・ウィリスの『航路』だ。このメディカル・サスペンス、臨死体験を医学的・科学的にあつかっていて非常に興味深く、かつストーリーもSF的なアイデアとミステリアスな展開でぐいぐい読ませ、なかなかの秀作だった」
・cedar『floatin' visions. 』
「ささいな、実にささいな出来事に対して、登場人物たちが感じる、雑多な思い。ウィリスはそれを逐一、克明に記録してゆきます。そして僕らは、そういう時々に浮かんでは消えてゆく思いを隅々まで共有しながら、その人物の人間性の奥底にあるナニカを見出すのです。 (中略)
 景色も心情も、物語を織り成すありとあらゆる要素を、主人公の倫理感や信念や理性のフィルターを通して見せられているような。その思考の過程をトレースするのではなく、「思い」そのものが直に染み込んでくるような。そんな感じ」
・『和田の鳥小屋』
「 臨死体験(NDE)を科学的に解明しようとする研究者の話。臨死体験を宗教的に解釈しようとする者たちをいかに出し抜いて、まっとうな臨死体験者からいかに客観的な証言を得るか。上巻は主にその苦労話が、かなりコミカルに展開する。やがて主人公は、人工的な臨死体験をみずから体験して、臨死体験の謎を解こうとする。
 それにしても、下巻での展開には驚いた。ひょっとしたらどんでん返しがとも思いながら読んだけど…。そのおかげでお涙頂戴物にはなったけど、肝心の臨死体験の真実があんな形ではねー。読み終わっての感想は、これはSFの終わり方とちゃうなー、ってとこ。」
・塩野洋『ない袖は振れない』
「主題、副題の組み合わせは巧みで、テーマの大きさに飲まれることなく見事に描ききっている。感情移入しやすい登場人物には愛着が湧き、読み出したら止まらないストーリーテリングの妙は途切れることはない。特にいくつかの見せ場は非常にスリリングでハイテンションだ。人間の意志や生命の神秘さへの探究心が刺激され、深く心に残る結末もいい。けれんみのあるテクニカルな構成だが、豊かな感性に裏打ちされていて嫌味はなく、一級の娯楽小説である。上下巻の大枚だが一気読みしてしまった。」
・石田汗太『探検エンターテインメント』(讀賣新聞2002.10.24東京夕刊)
「コニー・ウィリス『航路』(大森望訳、上下、ソニー・マガジンズ)は、臨死体験(NDE)での脳のメカニズムを科学的に解明しようとする認知心理学者ジョアンナが、薬物で疑似的にNDEを起こす計画に参加、ついには自らを被験者にして生と死の境界にダイブする。そこで見たものは意外にも……。
 オカルト的「死後の世界」体験が徹底的に揶揄(やゆ)されるくだりは文句なく痛快。会話も生き生きと楽しい。それでも、二段組みで八百ページ余は冗漫にすぎ、中だるみ感は否めない。結末の感動は保証できるので、腰を据えて読むならお勧めしたい。(石田汗太) 」(全文)
・『水星の顔面神経痛の日々B』
「超名作「ドゥームズデイ・ブック」の作者です。彼女の作品は全部読むとココロに決めてあるのだ。
 もちろん、おもしろいのだ。分厚い2段組の2冊組だけども、ホントはもっとイッキに読みたかったのだ。でも、公私共々多忙だったので、こんなに時間がかかっちゃったのだ。
 ヒロインもヒーローも悪役も、例の調子でとてもいい感じで性格付けがされており、安心して読めるって感じ?でも、途中で、嗚呼、なんてこったい、ものすごく驚かされたチカラ技が!」
・電球店長『快読書房 イチオシ小説』
「上下巻(しかも2段組)の内容量でありながら、ノンストップで一気に読める医学SF小説。認知心理学者のジョアンナは、臨死体験の謎を科学的に解明するべく、神経内科医のリチャードのプロジェクトに参加する。トンネル、光、安堵感、亡くなった家族など、既知の臨死体験の謎をいかに追求していくのか、そしてジョアンナの見たものは?面白くて哀しい良質のエンタテイメント!【★★★★★】 −11/10更新 」
・大倉貴之『おもしろ本スクランブル PART.2 「物語を求めて」』(日販発行:月刊「新刊展望」1月号より)
「臨死体験は、自分の一生を走馬燈のように追体験するとも、神が両手を拡げ出迎えるともいわれ、科学的アプローチを試みる人々にも、死後の世界を肯定する人々にとっても大いなる謎であり、小説のテーマとして魅力がある。勿論、本書のテーマもそのことに焦点を絞ったものなのだが、本書の感動は、臨死体験の謎だけに収束しない物語のぶ厚さにある。ユーモアを織り交ぜながらジョアンナ自身とジョアンナに関わる患者や医療現場で働く人々の姿を丁寧に描いてこそ、第三章の衝撃と感動がある」
・『かんそうにっき』2002/12/18
「海外の医療ドラマを観ているかのような迫力もあれば(個人的に“病院”がとてもリアルでわくわくした、でもあれって伏線だったんですね)、コミカルな場面もたっぷりある。ジョアンナとリチャードの掛け合いやメイジーの頭脳プレーは楽しかったなあ。例の魔法のポケットには何かオチがつくのかと深読みしてたのですがね。薬物で擬似的に起こしているとはいえNDEへの入り方は簡単で唐突すぎる気もしたけれど、くどくど描くよりはNDEのビジョンが強調されていいかもしれない。ファンタジックな軽みも出ていたし。しかし第二部の終わり方には魂が抜けたようになってしまいました。すごい、と思った。」
・Super Neurotic Junction『未読地獄』
「ネタからすると、ものすごく重い話になりそうなのに、少しも暗くなく、どたばた喜劇っぽいとこもある。この辺は作者のうまさの定評あるところ。キャラクタの造形も一級品だ。とくにメイジーという少女がすばらしい。フィクションの登場人物だとわかっているのについ、いい子だなぁえらい子だなぁと思ってしまう。それに俺が意外と好きになっちゃったのがミスター・マンドレイク。すっげぇ憎たらしいのだこいつが。」
・青木みや『本読みの日々』11/06
「ジョアンナやリチャードは決して、超自然的・宗教的な要素を認めようとしない。「〈死〉の向こうにあるの」は、確かに「あなたの知らない世界」(*4)であるはずなのに、あそこまで科学に疑問を持たない態度はご立派としか言いようがないなぁ、とか思いながら読んでいた。それで41章のリチャードには思わずにやりとしたんだけど、最後の60章にはしてやられたと思ったね。ひどいよ、こんなにどきどきさせて。やっぱりコニー・ウィリスは物語の魔女だね(誉めている)。」
・青月にじむ『Mint Julep』2003年1月2日分
「積読中で近いうちに読もうとしている人がいるとすれば、迷わず読み始めたほうがいい。そうであれば仕事中、続きが気になって仕方ない、なんて経験をしなくて済む。寝食忘れて一気に読むのが理想ではあるが、そんなことをすると栄養失調か重度の寝不足になる可能性があるので、はやる気持ちを抑えて二日か三日掛けて読むことをお勧めする。
 ぶっちゃけた話を知りたければ、最後の1章(60章)を読むだけで事足りる。でも、それじゃあこの物語を「読んだ」ことにはならないということも申し添えておく。 」
12/2112/2912/3012/31にも言及あり)
・イーエスブックス mercury店長 『くるりくら』
「ブ厚い2巻組、しかも2段組の本作ですが、著者の例の語り口によって、時にコミカルにお話は進んでいく訳であります。 臨死体験をテーマに、著名人の最期の言葉をたくさん知っているヒロインや、ヒロインの友達の災害オタクの少女、トンデモ系のベストセラー作家のオヤジ、などなど、いろいろな登場人物が絡み合って、物語は盛り上がってゆくのでした。【★★★★★】」
・海森堂『愚息日記』2002.11.10
「家人が掃除・洗濯と奮闘している間、ぼくが愚息の相手・・・のふりして、実は読書。11:00頃から愚息が深い昼寝に入ったので、さらに読書は加速度的に熱をあげた。愚息が目を覚ます直前の14:30頃、ギリギリで「航路(上)(下)/コニー・ウィリス」★★★★★読了。ありがちな「宮部みゆき絶賛」という惹句のみで読み始めたけれど、すげえ。圧倒。先入観がなかった分、インパクトも強。これって、予備知識があると面白くないかもな。何を語っても、感動を削ぐだけになりそうなので、とりあえず、家人には一言「黙って読むべし」と言い置く。早く誰かと語りたい」
・雪樹『2002年11月 読了本感想』
「前半ちょっとだらだら感はありましたが小技の効いたディテールの作りこみのうまさで読み進み、後半は怒涛のように話が進み、気が付いたら読み終わっていました。特に前半の文学や映画のちょっとした語りが伏線になるあたり、うまいなあと。実は前半の伏線はすぐに見えちゃいましたが、映画好きとしては笑えるシーンもあり、ニヤリ。今回はメジャー映画ばかり出てきたのでわかりやすいネタでした。つーか、コニー・ウィリスさん、絶対「あの映画」に憤慨したんだと思う。(中略)
 この作品で言及された映画のなかで存在しない映画がなんなのか気になります…。『相続人が多すぎる』ってありそうでなさそうな気がするんだけど。あと知らないタイトルは『ダイ・ラーフィング』『ミッシング・リンク』くらいなんだよな〜。」
・秋葉晴彦『当方見聞録』2002年11月16日
「うまいものだと思う。ちょっと書き込みすぎでいらいらさせられることもあるが、それも物語の骨組みや仕掛けがうまくできていて、「早くこの先を読みたい」というこちらの気持ちがあるからこそのことだろう。絶望的な状況の中での孤軍奮闘(これは前述した『ドゥームズデイ・ブック』にもつながる)が、わたしたちの心の中に共感を呼び起こす。とくに孤軍奮闘の意志がひとりの少女のいのちのために働くあたりで、思わず涙が出そうになった」
・抹茶丸『虚構する。』11/16分
「テーマが臨死体験なんだけど、もちろんSF(というよりサイエンティストフィクションか)だから、臨死体験の解釈はきわめて科学的に地に足をつけている。もっともこの場でその解釈を披露してもそれが直接ネタバレになってしまうので避けたい。けど伝えたいので反転文字で以下に書きます。(中略)
というわけで、臨死体験の解釈も興味深かったけど、ヒロインがそれを突き止めるまでの長い長い過程(全体の3分の2ほど)をあまりダレささないで読者を引っぱってゆく著者の力量はすごい。」
・大森滋樹『ひきのばしの女王』(e-NOVELS週刊書評第163回)
「人生はよく旅の比喩で説明されるが、物語も乗り物に喩えられることが多い。そして、読者の注意をひきつけてやまない作話の秘訣は、設定したタイムリミットのなかで〈ひきのばし〉をおこなうことだ。実際、作者はこの〈ひきのばし〉を頻繁におこなう。急いでいるのに引き止められる。慌てているのに邪魔が入る。中断と遅延行為が、『航路』という物語の大きな特徴である。本稿のタイトルに〈ひきのばしの女王〉という、メイジーに献呈されたあだ名を利用したが、その称号に最もふさわしいのは実は誰か、すでにおわかりだろう。 (中略)不条理で暴力的な死とサバイバルは、きわめて今日的なテーマである。その意味でも、ページを開いた読者はまるで、呪われたようにこの本を一気に読みとおすことになるだろう。そして、生きることがサバイバルであるのと同じように、死もまたサバイバルであることに気づくのだ。引用されている「死ぬっていうのはすごい大冒険だろうな」というピーターパンの台詞は、いつまでも胸に残る」
・スズキトモユ『見下げ果てた日々の企て』12/28
「病院を舞台にしたアクションゲームみたいなお話で、「あの世は実在する」ウイルス撒き散らしながら院内をうろつき回るマンドレイク氏から身を隠し、臨死体験者を一番乗りでゲットするのが第1ステージの目的。空腹度が上がるとストレス値が上がっていくので気を抜くとすぐ閉店してしまうカフェテリアにすべり込むか神経内科医のリチャード・ライトを見つけてポケットの食料をゲットしなければいけない。リチャードと何回か遭遇すれば信頼度フラグが立って第2ステージへと進める。臨死体験プロジェクトの志願ボランティアを面接して「頭がおかしい人間」か「そうでない人間」かを選別するのがこのステージの目的。新たなお邪魔キャラとして、捕まると一定時間足止めを食らうミスター・ウォジャコフスキーが出現するようになるので気をつけよう。頭のおかしいボランティアが一定数たまると(どうしようもなくなって)ステージクリア。3Dアドベンチャーパートの第3ステージへと移行する。目の前に広がる擬似臨死体験空間の謎を解き明かせ! とか、そんな感じ。
 宮部みゆき、瀬名秀明絶賛! なるほどな! という作品で、力作ではあるけれど傑作というほどではなし、素晴らしい職人芸ではあるけれど、天才の仕事ではない、そんな印象でした」
・曇天号『夏に続く道 2002年に読んだ本の感想』
「さて、それなりに面白い。パズルがカチッカチッと音を立ててはまるような。ただ、事前に予想したようなお涙頂戴もの(悪い意味ではなく)ではなかった。だって心臓病でほとんどベッドから出られないけれど、健気で利発な女の子が出てくるんじゃ絶対泣かせると思うよなぁ。
ストーリーそのものも予想を裏切り(上回り)、特に第2部のラストは驚愕。何をするねん。そうかぁ、そう来たかぁ。なるほど、誰かが、この小説はストーリーで読ませるのではなく、構成で読ませるのだと言ってたなぁ。」
・メトロニュース編集長・鈴木綾子『売れた売れないにかかわらず今年一番良かった本は?』メトロニュース2002年12月5日号・第102号
「 『航路』(上下) コニー・ウィリス、ソニーマガジンズ 認知心理学者のジョアンナは臨死体験の原因と働きの科学的解明を目指す。神経内科医リチャードの研究計画に協力するがその実験にはトラブルが続出。ついに自らが臨死体験を行うことに…。人は死んだらどうなるのかというよくありがちなテーマをこんなにも面白く書けるとは! 」
・おむらよしえ『小説の部屋 ぴっくあっぷ』
「ひっじょーに面白かったです。「ER」好きとミステリ好きにはおすすめです。謎が解決される過程って楽しいですよねー。ラストの章の手前はまた別の意味でびびりましたし。
 キャラクターのしゃべりや行動は、決して「いい子」でないところがとても楽しく読めました。正義感を押しつける人がかえっていやな感じに描かれてあるのに同調したり。そして私が特に気に入ったのは、「ひきのばしの女王」である心臓病の少女メイジーです。「泣かせ」は、私にとっては「ジャンル」の一つという扱いなので、特にあまり何も感じませんでしたが、メイジー偉い!とは思いました。それでなくちゃね、相棒。」
・小橋昭彦『今日の雑学+(プラス)』11月28日分
「 コニー・ウィルスの『航路』を読む。臨死体験を科学的に追った小説だ。ぼくたちの認識と脳はどう関係しているのだろうと思いつつ、夜明けまで読みふけっていた。今年のベストのひとつ。こんなときは時間が短く感じられる。(中略)
 時間の流れは一定のように考えがちだけれど、このように人が置かれた状況や文化の違いによって、さまざまな速さの時間が、この地球上で流れている。よどんだり急に速くなったり。ウィリスの『航路』は、ぼくをすばやい流れに乗せて、夜明けまで運んでくれたわけだ」
・山田浩史『だな通信ミステリー文庫(2002年)』
「展開も巧みだし、人物描写も生き生きしているが、なんと言っても圧巻なのは臨死体験の描写。
謎に満ちた臨死体験のシーンは、その意味を探ろうとする登場人物と同じように、あれこれ想像してしまう。ミステリー小説を読む時のように、先を知りたくなる展開。
ラストには、作者は臨死体験や死に対して、それなりの小説的見解を示してはいるが、帯にあるような「驚愕と感動」といった想像を絶するようなSF的解決ではない。
そのへんが物足りないといえばいえるし、一般受けしそうな点でもある。
果てしなく続くようなおばさん的文章を、もう少し削り落としてスリムにすれば、もっと緊迫の感ある小説になっただろう。」
・東茅子『VOID RUNNER 近況報告 (2002年9月14日)』
「臨死体験の謎ときという問題もおもしろかったけれど、なにより、キャラクターの造形がさすがでした。心理学者と医師の主人公たちはもちろん、周りの登場人物……主人公の友人のER勤務の看護婦、臨死体験を経験した心臓に病気を持つ少女、臨死体験研究のエセ研究者の作家、友人となる主人公の高校時代の恩師の姪、臨死体験実験のユニークな被験者たちなどなど……が、それぞれいい役割を果たしていました。舞台となる病院の建物も存在感があって、登場人物に数えたいくらいでした。
 これで、今年のベスト2は決まりかも(ベスト1はビジョルドの『ミラー・ダンス』だから)。 」
・Cara-Cara『みくだり日記 11月28日(木)』
「NDE というトンデモになりがちなテーマを扱いながら、作中では何度か危うさを感じさせつつきっちりこちら側に踏みとどまるバランス感覚の妙もさることながら、あらゆる描写をストーリーの中核にしっかりと結びつけながらも先の読めない話を紡ぎ出し、感動的なラストに導くストーリーテリングの力は圧倒的。B6 二段組の上下二冊構成という相当な長編なのに、物語にぐいぐいと引き込まれつつあっという間に読み終わってしまった。実はコニー・ウィリスものを読むのはこれが初めてなのだけど、噂に違わない筆力に正直驚いた。(中略)
 それにしてもあと何年か後(もしかしたら明日かもしれないが)に確実に訪れるその数分間、私は一体何を見、何を考えるのか。大変興味深い。 」
・森下一仁『2002年10月のSF』(〈小説推理〉2002年12月号掲載)
「果たして臨死体験で行ったのはどこなのか。それはどういう意味を持っているのか。ジョアンナが懸命に調べてゆくうち、とんでもない事態が起こる。唖然とし、この先どうなるのかと、ページを繰るのがもどかしいほど。読み進むうちに、死という圧倒的な事実と向き合い、その意味を考え、人間の生きていることの尊さを感じさせられました。ウィリスの生命観はまっとうで、しかも感動的。」
・yama-gat『読んだら日記』11月17日分
「『ドゥームズデイ・ブック』派の人もけっこういるみたいですが、オレはやはり『航路』を取りますね。ある種、叙事詩的な重みのあった『ドゥームズデイ・ブック』より、良くも悪くも通俗的なスタイルを貫いた『航路』のほうが親しみがわくし、物語のテーマと描写が綿密に結びついた構成は、小説としてもワンランク上の完成度を誇るのではなかろうか。」
・『シティリビング大阪』book欄
「ハリウッド映画並みのダイナミックな展開と、魅力的なキャラクターに引き込まれ、このボリュームも一気にクリア」
・さすらい人『不壊の槍は折られましたが、何か?』11/04
「俺には無理な大編成によるミニマルミュージックと同じ欠点が見えて仕方ない。上下巻共に、同じことを何回も何回も繰り返す。少しずつ状況は変化するが、あくまで少しずつ。もういい加減にせえと。しかも「クライマックス」と称される部分も酷い。結論なんざ読者にはもうわかってんだから延々とムダに引っ張るんじゃねえよ。 その上、その結論からして、よく考えてみれば最初の頃とどう違うのかよくわからん。ていうかまったく意外ではありませんが何か? 全般に無駄が多すぎる。9割はカットできるはず。感動狙うのはその短さでもじゅうぶん可能です。 だいいち、臨死体験なんて興味ねー。激しく興味ねー。 評判聞かなければ多分読もうともしてなかったはず。鬱だ……。」
・RYDEN SUGIYAMA『DIARY』10月31日(木)分
「確かに下巻の後半のたたみ掛けはお見事!まさか○○○○が○○○状態になって、それを×××××るのが○○○○○だって展開は、薄々勘付きながらもググっとクル最大の山場だ。 だが、そこに至るまでの展開があまりにも長過ぎる。ジョアンナもリチャードもなんであんなにクドクドしているのか?リアリティと言う意味では、実生活でもよくありがちなことなのでよく描けているとは思うのだが、小説で読まされるとシンドイなぁ。 」
・姫川みかげ『Majiで本読む5秒前』
「よく言われてるように感動で滂沱の涙を流すということはありませんでしたし、10年に一度の傑作とまでも思いませんが、読後、深く静かな余韻にしみじみ浸れる、いいお話でした。今、読後1ヶ月近く経ってこれを書いてますが、時間の経過とともにじわじわとこの物語の素晴らしさが心に沁み込んできてるような気がします。こういうのを本当の名作というんでしょうね。文句なしの傑作です。ぜひ、みなさんも機会があれば読んでみて下さい。」
・『森永稔のある日の読書日記』
「ハリポタ並のベストセラーになって多くの読者を得られるかと言えば、そんな予想は間違いなく当たろうはずがなく、実際にそうなってほしいとオレが思う半分ほども読まれないのかもしれない。なぜなら、この本は誰にでも読まれる必要があるだろうあの内容に触れたもので、それはオレたちの多くが近づきたくないあの最終点に触れたものだからだ。見たくないと思うのも当然なほど恐ろしい現実に触れたもので、安っぽい自己の容認に基づいた感動からは皆無の寂しさと恐怖を合わせ持ったものだからだ。もちろん、感動的であるし甘い部分もあるのだけれど。現実から切り離した物語として読むなら、これほど中断するのが困難な本は最近では珍しかった。すべてのピースをきちんとはめ込むために、読み終わった瞬間もう一度最初から読み返したほどだった。繰り返すが、そんな本は多くはない。改めて原文で読み始めて、本当はこれくらいゆっくりしたペースで読むべきだったのではと感じる」
・YAN『至福の一冊』
「SFかミステリか分類が難しいところですが、そんなことはどうでもよくて、要は「面白い小説」です。上下2巻ですが、長さを感じさせないStoryTellingはさすが。念のためにご注意。夜、寝る前に読み始めないように。途中で止められなくなります」
・『本田的「活字生活」後半生』10月25日分
「これでもかこれでもかの伏線だらけ。
ここまで伏線だらけだと、「シックスセンス」心情である。つまり、ただちにもう一度読み返したいってこと。
んが。さすがに800頁を再トライするほどには、私は「絶賛!」ではないが…
んが。「死後」「臨死」というヘタすりゃキワものテーマを無理なく「お見事」にまとめているという感。
ちなみに同様なテーマをとことんキワものに徹すると「椿山課長の7日間」になるのだ。」
・rim-mei『MUSIC & BOOKS』
「書店で突然この本を見つけた私は、本当に身震いしてしまいました。そもそもコニー・ウィリスの作品で面白くないわけはない、それが分厚い上下二巻のハードカバーで並んでいる! この至福! 即買い即読み、少しでも時間が空くと読んでいて、もったいないもったいないと思いつつ二日で読了。(中略)絶対面白いです。しかも泣けます。 」
・yoooo『diary』10月19日
「一読仰天、巻置不能。 急速展開、一気呵成。
 映画題名、頻繁登場。 脇役最高、真摯滑稽。
 喜憂笑泣、無言血眼。 徹夜必定、読後呆然。
 一家一冊、上下二巻。 本年本命、航路傑作。」
・〈石〉日刊ゲンダイ書評欄
「ジョアンナが見たものは何か。またその意味するものをめぐって、物語はにわかに大きなうねりをもって展開されていく。2000枚を超す大作だが、最後の大どんでん返しまで緊張感の緩むことなく引っ張っていく力量は、さすがSF界の重鎮ならでは」
・さいとうてつや『忘れじのレイドバック』10月26日 
「『海辺のカフカ』以上に読書の愉悦を享受した1冊(上下巻だから2冊か)。 」
・冬樹蛉『天の光はすべて本』(〈週刊読書人〉2002年10月11日号掲載)
「メリハリのあるわかりやすい小説だけれども、後半に待っている大どんでん返しには絶句。こんな手があったのか、だ。また、ごまかしにも逃げられる題材でありながら、どこにも逃げはない。大冊を一気に読ませる職人技の語り口と全篇を彩るユーモア。傑作である。論理的であればこそ人間的な深い感動を呼ぶラストは、ウィリス流『アルジャーノンに花束を』だろう。」
・奥村真『日記:やっぱり寝物語。』11月6日分
「これは面白かった、ものすごく。ストーリーテリングの女王の異名はだてじゃありませんなあ。(中略)増改築を繰り返して迷路のようになった総合病院の廊下を、とんでも系臨死体験本の著者から逃げ回り、ある時は駆け、ある時は息を殺して階段に隠れながら、自らの記憶の中をもさまようジョアンナ。果たして真実は彼女にとってどんな意味を持っていたのか? そして激動の後編へと続くのだった。  実は、OCR認識したファイルをPDAに保存しておいたんだけど、時間的に上巻しかテキストにできなかった。ちびちび読むことにはしたのだが、実家に思いの外長らく逗留したため、ついに上巻を読み終えてしまったときの飢餓感たるや、想像を絶するものがあった。自宅に戻って、とる物もとりあえず下巻を一気読みしたのは言うまでもない 」
・坂田健悟『圏外日誌』11月10日分
「実のところ特に序盤はそれほどテーマやキャラに共感したってわけでもないんだが、それでも知らないうちに読み進んでしまう。見事にテンポに乗せられてる。エンディングは素晴らしかったが、少し空恐ろしい気も。
 あと、読み終わった後、キーとなる医療機器や薬品がフィクションだったと知ってちょっとガッカリしてしまった。非常にリアルで説得力のある話なので、知らず知らずに「ホントにこうだったらいいのになぁ……」と思っていたようだ。
 しかしあまりにもクィーキィドラマっぽいので、頭の中でいつのまにか英語ヴァージョンの役者とそれにつく日本語の吹き替えの設定まで出てくるというのは、ある意味感動した。病院はまんまER、主人公と女友達の会話はアリーマクビールのアリーとネル、ついでに看護婦はエレインで行けますな。」
・teru_2『マイニチ』2002/10/13
「この物語では、NDEを神秘論的に解釈するのでなく、徹底的に論理的に構築されたそのメカニズムを提示する。第3部で読者は、ヒロイン周辺の人たちの奮闘と並行して、ヒロインが直面するNDEの描写を目の当たりにする。その描写はとても理性的なものなのだけれども、そうであればあるほど、徹底的に論理的に構築されたNDEのメカニズムとも相まって、後ろから恐怖が立ち上がってくる。個人的には、いままで読んだ中で最も恐ろしい死のイメージの一つであり、山岸涼子の『汐の声』などの一連の作品と通底している。物語のラスト、ヒロインの相棒はついにNDEのメカニズムの本質に到達し、(中略)薄く引き延ばされた死への旅路はもしかしたら永遠のものかも知れないということを示唆して物語は終わる。これは救いなのか、絶望なのか。巻擱くを能わざるという読書の醍醐味を久々に味わわせてもらった。」
・feifei 『飛亭日乗』10月25日分
「「臨死体験を研究する科学者2人を軸にした…なんちゅうの? ミステリー? SF? なんだか知らんがとにかくも、先へ先へと読みたくなっちゃうサスペンスな作品なのだ。途中でやめられない。(中略)
うっうっそーマジ?ってくらいの出来事もあり(ネタばれ厳禁でしょう)、思わず落涙の箇所もあり、笑える部分もありで、飽きさせません」
・里見『Reading Diary』10月分
「各所で絶賛の嵐ですが、確かにおもしろいです。個人的事情により読むのに時間がかかったけど、長さはあまり感じられないストーリー展開に目が釘付けにされたし、文章も大変読みやすいし、キャラクターも個性的で楽しませてくれます。
 どうも読んだ多くの方が涙腺が緩んだらしいのですが、私は緩まなかったです。ひたすらうまいので「すごいな〜〜」と関心ばかりしてました。」
・Tea Garden 『Books review』
作者は同じイメージを手を変え品を変えて、幾重にも積み重ねている。マーシー・ジェネラルの構造がNDEを象徴しているところは、なるほどなあと感心する。(中略)
 私は「こんちゃ、ドク」と言って登場するミスター・ウォジャコフスキーが好きだな。彼が登場することによって緊張感が緩和される。彼はいわば道化師役だろう。それにしてもリチャードのポケットは一体どうなっているのだろう?これもまたコミカルな部分だ。シリアスな流れの中、細部にコミック的な仕掛けをするウィリス。上下巻ともに約410ページ(しかもニ段組)の長編を細部までキチッと仕上げるところは、職人気質の作家だと思う。(2002.10.26)
・田崎日加理『今週の紹介本』
「上巻はかなりゆったりとしたペースで話が展開していきます。ジョアンナの記憶が何かに結びつきそうで結びつかないそのもどかしさがたまらず、つい読み進めてしまいます。そして下巻になると加速度的に話が展開し、途中で読み止めるのはかなり辛いです。39章では「まさか!これからどうなっちゃうの?」と思うこと間違いなし!。気になるでしょ。果たしてどんな航路を辿るのか、ご自分の目で確かめて下さいね!」
・津田文夫『続・サンタロガ・バリア(第10回)』
「第2部の最後以外は、ほとんど何の事件も起こっていない。その事件だって物語の構成上要請されたありふれた事件にすぎない。NDE(臨死体験)の実験装置という慎ましいガジェットを除けば、SFとしても何も事件はない。なのにSFとして読み終えることになるのは、SFを読んで育った作者と訳者の功徳だろう。SFを思わせるのは第3部のヒロインの世界があるからだろうし、それはブラックホールに落ちていく人間の意識とそれを外から観察した人間の時間意識の違いを思わせるからだろう。ヒロインが最後まで観察者/考察者として存在するところもSFのもつ味わいを醸している」
・たなかのおと『立ち読みのおと』10月14日分
「泣きました、ということを先にお伝えしておきましょう。えぇ、58章でも59章でも泣きましたよ。でもいちばん泣いたのは48章でした。泣きどころ、間違っているでしょうか。(中略)読了したいま、長編には長編の、反復には反復の、重なりには重なりの、それだけの意味が、隠されていたのだということを、納得しないわけにはいかない。それは、マーシー・ジェネラルの内部の、まるで迷路にも似た構造と、そのなかの錯綜した通路をあちらへこちらへと行ったり来たりするジョアンナとリチャードの行路にすら、現れる。そして、その重なりを積んだからこそ、得られる感動というものがあるのだと、心底感じられる」
・アルパ倶楽部『BOOK Selection』
「ジョアンナはNDE(臨死体験)の原因と働きの解明を目指す認知心理学者。彼女は神経内科医リチャードの、人工的にNDEを起こす研究に参加する。ジョアンナが体験したNDE、その驚愕の真相! 上下巻ながら長さを感じさせない絶妙の筆運び、ここ十年で最高の傑作! 」
・朝日新聞夕刊『BOOK TIMES』
「迷路のような病院の構造や英文学の名作の断章、患者のNDE談など、伏線を緻密に張り巡らせて思いもよらないラストにつなげる手法は見事。これまでNDEは、魂の永遠性や宗教的なメッセージなど、ニューエイジ的な解釈による癒やしの物語が一人歩きしてきた感がある。そうした、あいまいで口当たりの良い救済を本書に求めることはできない。だが、科学的なアプローチによってNDEがひとつの意味を結んだとき、だれもが驚き、大いなる希望に心の奥底を揺さぶられるに違いない。」
・よしだまさし『大丈夫日記』10月30日分
「うーん、長かった。長すぎるよ、これ。長すぎるために、作品世界にのめりこんで一気呵成に読むという態勢に入ることがぜんぜんできなかった。それゆえか、訳者の大森望さんが絶賛するほどの傑作とは思えなかったし、感動して涙を流すということもまるっきりなかった。第2部の終盤で一気に物語が加速する、そのテンションを維持したならば、グイグイと巻き込まれて、ふと気がつけば滂沱の涙を流すということもあり得たのかもしれない。だけど、そういう読み方を拒絶するかのような過剰なディテールの書き込みとの戦いに終始してしまったために、妙に作品世界との間に距離を置かされてしまったような気がするのだ。」(10/18,22,23,24,25,26,28にも言及在あり)→ファイル保管予定URL
・香雪『journal 香雪日録』10月29日分
「これは科学の勝利の物語でもあり、同時に、信念に基づいてまじめにこつこつと正しい行いをしている人間の勝利の物語である。知の勝利、タフな精神と勇気の勝利、愛情の勝利でもある。(中略)何かをひとを悼むには。かつて確かに存在していたことを記憶し忘れないこと、折に触れてその人を想うことだとわたしは思う。それでもまたこうも思う。科学者であった宮澤賢治の伝でいってみよう。わたしはいずれ死ぬ。わたしは銀河で光り続ける有機交流電燈のひとつの明滅にすぎず、一瞬のそのまた一瞬光ったにすぎない。それでも確かに光のひとつであった。それだけでいい。」
・水鏡子『みだれめも 第149回』
「最後の最後で、限りなく普通小説に近接したSFという地点に、それも無理なく着地させる手ぎわのよさに感歎したりはしたけれど、それでも全体を通してみれば、意外性などかけらもない、納得のいく自然なまとまりのある小説で、心地よくはなるけれど、驚きなどはほとんどない。(中略)高すぎる評価に異を唱えたくなるだけで、基本的にはだれにもお勧めできる安定感のある良質のエンターテインメント。今年の収穫のひとつである。中の上。」
・大野万紀『内輪 第146回』
「で、後半になって、NDEの意味が明らかになるところで、これまでの通俗的な描写や、しつこいギャグだとしか思えなかった色々なシーンが(メッセージの溢れた留守番電話、スイッチの切られたポケベル(ページャー)、迷路のような病院の廊下、開いていないカフェテリア……)何とまあそういう意味だったのかと納得できるのもすごい。もちろんそのものずばりということではないが、ある意味で本書はサイバースペースSFに通じるものがある。」
COCO'S FARM『読書日記 2002年下半期』
「迷宮のような病院内を駆け巡り、何度も何度も繰り返し死への淵へと赴くジョアンナ。もどかしくも進まない調査とプロットに、こちらもいらいらしながらページを繰る手が止りません。驚愕の第二部の結末で目の前を真っ白にされ、そして静かな余韻が後を引くラストまで、作者に手もなくひねられました。(中略)
 しかし後書きを先に読む習慣のある私は、訳者の大森望氏の誇大な(これは毎度のことですが)宣伝文句にちょっと騙されたといった感じも少し。もっと大掛かりなトリックを期待してしまったのです。ま、これは自業自得なのですが、もしこれから読まれる方は後書きを先に読まないように。」
・Tea Garden 『Books Review』
「上巻は展開がゆるやかなので、一体この話はどこに向っているのか検討つかないが、下巻で物語は加速度を増す。初めは上巻が長すぎると思ったが、この上巻があってこそ下巻が意味をなす。NDEの意味が突き止められてゆくところは、まさにサスペンス。私としては解明されていく部分がいちばん面白かった。」
・♪きむらかずし『ウクレレ日記』
「さわやかな気持ちになった。とても丁寧で上品で優しい小説だ(その逆をいく本が多いからなぁ)。」
・鈴木輝一郎『2002年10月前期の日記』
「臨死体験をテーマにした空想科学小説(SFと呼ぶと怒られるかな)です。上下巻ともに400ページを超える二段組みという大部な代物ですが、見た目よりもはるかに読みやすい本です。  ええと、面白いかどうか、というのはいたって主観的なもので、『一般的なものとは違う意味の臨死体験(他人の死に臨む体験、ね)』を、これでもかこれでもかとフォアグラのガチョウのように強引に口に突っ込まれ続けている生活をしていると、『何もそんなに急いで臨死体験を追及しなくったって、どうせ一度は見るものやんか』って気分が先に立っちゃいますね。」
・香雪『journal 香雪日録』10月24日分
「全部説明してくれるところは橋田壽賀子ドラマみたい。涙、しかるべきところでぼろぼろ出た。その後の展開が早くてわりにすっと止まったけど。とにかくすごい熱気で話が進む…。ところで中島みゆきの『おとぎばなし』を流しながら読んでいたのだが、ラスト曲「海よ」がこの小説に実にしっくり来るのだ。小説世界が味わい深くなることこの上なし。テーマ曲としておすすめである。」
・第弐齋藤『土踏まず日記』10月17日分
「ヒロイン・認知心理学者ランダー女史のおくる日常が、これまた慌ただしくて、すばらしくテンポがいい。 やってることといえば、嫌な奴に会わないよう病院内をうろつきまわったり、入院患者の長話につかまったりしてるだけなんだけどな〜。 なんでか読みやすいなぁ
 頻出する映画ネタもツボを抑えてて、映画好きの看護婦ヴィエルと繰り広げる会話なんて「いかにも映画好き」な感じがして好ましい。」
・『読書&映画日記 こんな日々だった。』
先行きがどうなるかほんと興味深いのでぐいぐい読んでいるが、そこまでで止まっていてまだ深くは入り込めていない。どうもなかなか心情移入が出来ないのだなあ。ポケットベルをすぐ切るジョアンナにはいらついてしまうし、また、会話シーンが多いこと、話が非常に細かくそのせいで伏線はってるのが露骨にわかってしまうことなどがいちいちくどく感じられて仕方ないのである。涙そそられる感動作らしいのだが、何かおかしいのだろうか、わたしは。それとも下巻を読むと変わってくるのだろうか。
・昭和堂『コニー・ウィリス「航路」』(2002/10/15(Tue) 10:13)
──昨夜読了です。前作「ドゥームズデイ・ブック」のときと同じように、やはり最近にない猛スピードでの読書になりました。下巻はほとんど昨日一日で読んでしまいました。これは、私がそんなふうに速度を上げたというよりは、作品の方でそういう速度を要求し、手伝ってもくれたということだと思います。これはそういう作品なんです。楽しかったです。途中でものすごくびっくりもしましたし……。それと、第3部の扉書きにはほれぼれしました(読んだひとにしかわからないですけど)。でも、どちらかといえば「ドゥームズデイ・ブック」の方がよかったなあ。
・Yamaken『今週のボヤキ』10月19日分
 コニー・ウィリスの「航路」読了しました。いや〜、正に「巻置く能わざる」ってえやつでありまして……未読の方は、土日とかの時間がたっぷりとれる時を見計らって読み始められることをお勧めいたしますです。  おかげで、ライダー1号の塗装がさっぱり進みません…
・『Shiono's web site』10月13日分
「研究室の情景だけではなく、小児科の少女を見舞ったり、ERの同僚看護婦との私生活など、ヒロインの日常が生き生きと描かれていて、大枚の長編小説ながら飽きることなく読ませてしまう。Amazon.comのDMでこの小説を知り、ためしに上巻だけ買ってみたが、さっそく下巻も注文して届くのを待っているところ。『特命リサーチ200X』のような番組が好きな人なら楽しめること間違いない。」
・松坂健『ミステリー千夜一夜《海外作品》』(産経新聞10月13日付朝刊)
「コニー・ウィリス『航路』はまるでラヴェル「ボレロ」のような大作だ。臨死体験で見る××××××の夢とは何か。その主題の繰り返しとともにサスペンスが盛り上がる。」(ネタバレにつき一部伏せ字にしました。リンク先は伏せ字じゃないので未読の人は注意)
・福井健太『NOWADAYS』9月30日分
「泣くというよりは――大笑いしながら読む話だと思った。あの展開はギャグにしか見えない。巧みな小説であることは大前提なので、素直な人が感動するも良し、ひねた人が〈感動させるテクニック〉を吟味するも良し。なんにせよSFの〈年間ベスト〉に絡んでくることは確実だろう 」
・喜多哲士『読書感想文・海外SF』
「登場人物は、いずれも一癖も二癖もあり、それがなんともおかしい。ここらあたりのギャグ感覚は絶妙。繰り返しギャグの効果がここまでうまくいっている小説は少ないのではないか。」(上巻)
エンターテインメント小説のお手本ともいうべき作品である。いやあ、やられた、まいった。とにかく作者の小説のうまさがぎっしりと詰まっているのである。 (下巻←一部ネタバレ)
・石堂藍『石堂藍の「ファンタジー・スピリット」』(bk1連載)10月9日分
 臨死体験を科学的に描くなどと言えば、たいていの人が脳内麻薬か何かの話だろうとあたりをつけるのではないだろうか。それをウィリスはみごとに裏切って、ユニークな説を打ち立て、それを軸にして物語全体を構築している。ほとんどの読者は意表をつかれるに違いない。ミステリ仕立ての物語はスリリングで、八百ページ二段組という分量の多さがまったく気にならない。サスペンスフルなシーンも随所にあって、殊にジョアンナの臨死体験で繰り返される、扉と光のイメージの部分は背筋に寒けが走るほどの緊迫感がある。
・殊能将之『memo』10月分
「不勉強なもので、ウィリスの小説を読むのは生まれて初めてなのだけど、にくらしいまでの達者さに、舌を巻くばかり。
 特に感心したのは、ネタふりがうまいこと。第一部から第二部に移るところで、あるネタが明らかになるのだが、その直前でうすうす見当がつく。そして、「こういうネタじゃないかなあ」とかんづいた瞬間に、一気に披露される。舌足らずになるほど早すぎもせず、じれったく思うほど遅すぎもしない、まさに絶妙のタイミング。作者が伏線の張り方に熟達していないと、こういうことはできない。
 クライマックスは一大スペクタクルなのだが、これが小説でしか書けないスペクタクルである点もよろしい(言葉によるSFX、という感じ)。また、ロマンス小説的な味つけは、わたしはむしろ美点だと思う。」
・内田昌之『お知らせ』10月6日分
「原稿用紙二千枚という長さを、せめて半分、できれば三分の一にしてくれれば、それなりに評価できたかもしれません。主人公たちは、おしゃべり好きの人びとにつかまってはそこから脱出するという体験をえんえんとくりかえしますが、読者は、ウィリスの饒舌と脱線につかまってはそこから脱出するという体験をえんえんとくりかえさなければなりません。いや、それが楽しいという人も多いんでしょうけど」
・有里『Alisato's 本買い日誌』
「噂通りの傑作。コニー・ウィリスで大森望さんがあれだけプッシュしていて宮部みゆき&瀬名秀明絶賛――なのに面白くなかったら、そっちの方が不思議。
 第一部を読んでてずーっと思っていたのは、「誰かこのヒロインの白衣のポケットにチョコレートバーを詰め込んでやれよ」ってことで(いつもひもじい思いをしているなら、非常食料ぐらい自分で確保しとけばいいのに)、第ニ部に入ってからは、「なんでコニー・ウィリスの作品の登場人物っていつもバタバタしてるんだろう。少しは落ちけつっ、じゃなかった落ちつけっ!」だったんですが、そうしたら――。」
・有里『コニー・ウィリス『航路』ネタバレ感想』←ネタバレあり
「最初、ジョアンナとリチャードがカップルになるロマンチック・コメディなのかと思ったら全然違いました。あの二人の間にはフレンドシップもパートナーシップもあるけれど、恋愛はない。多分。」
・okko『活字の海を渡ろう』10月4日分
SF度は低めです。二段組800ページ超という分量に圧倒されますが、読み応え充分。(個人的には少し長すぎの感がありますけど)この作品のテーマは「脳死」で、トンデモ系臨死体験本の著者も登場することもあって、私は著者が脳死をどう描いていくかという部分に興味を持ちました。SFファン以外でも充分楽しめる作品だと思います。
・Arte『おとといは兎を見たわ、昨日は鹿、今日は……』
9月14日分「あっち側に行きつつも、最後まで決してはずさないストーリー、ウィリスウィリスした展開(でも院内ベル切るのは犯罪でしょ)、心移植待ちにアルツハイマーにメタファーの数々。しかも、これだけの長さでありながら、『ドゥームズデイ・ブック』より読みやすいこの作品、去年の大会で「臨死体験を扱っていて、『BRAIN VALLEY』みたいで、コメディーで、宮部みゆきで、最高傑作」と聞いたときには、正直不安だったが(期待を裏切られるのが)、これは大丈夫」

10月8日分「私は、『航路』の素晴らしい点の一つは、あれだけ長いのに、最初から最後まで絶対にスーパーナチュナルに流れないところ、そしてそれでも圧倒的に面白いところだと思う。だからこそ是非、普段SFを読まない人にも、本を読まない人にも、できるだけ多くの人に『航路』を読んで欲しいと思うし、今日先輩に「病院が舞台で、専門用語も書いてあるから面白いですよ」と薦めてきたのは、何も『航路』が売れればもっとウィリスの本が出るかもしれない、という動機からだけではないのだ。」
・柏崎玲央奈『「死後の世界」であなたに会いたい』←ネタバレあり
「死ぬのが怖い。自分の死のことを思うと、叫びだしたいぐらいの恐怖を覚える。神はいない。天国も地獄もない。私が消えてなくなるのは、本当に恐ろしくて悲しいことだ。それでも、この、いつもそばにある死を思わずにはいられない。だから、人々は死後を想像して物語を書き、読み、残しては、その未知の世界へまた旅だっていくのだ」
・野尻抱介『航路クリア』(新・大森なんでも伝言板2002年10月07日(月)15時07分06秒)
「三歩進んで二歩戻るような展開が延々と続きますが、それでも飽きないのは小説のうまさと品のいいユーモアのおかげでしょうか。『ER』でステディ・カムを使って延々長回ししたような、テンションの落ちない描写は見事。」  そして読み終えてみれば、二歩下がる部分を含めてどこにも無駄がない。100ページくらい読んだ時点では「まあ空母ヨークタウンの話だけでも読んだ甲斐があったな」ぐらいに思っていたのですが。
 SFとしてどうかと言えば、あの結論がどれくらいポピュラーかによるでしょうね。著者のアイデアだとしたら、“架空論文性”の得点だけでも一流のハードSFになるでしょう。物理的におかしなところもありませんし。
・のだなのだ『近況報告』9月26日分
「大ネタが臨死体験、ということで『ブレイン・ヴァレー』あたりと似たような話を想像していたんですが、アレより俺的SF度は低め。でもぎりぎり俺的にはSF、って感じです。SF度は(俺にとっては)ぎりぎりなんですが、面白さは他の作品に比べて頭一つ抜けてる、ってゆーか。」
・喜多哲士『航路』(新・大森なんでも伝言板2002年09月29日(日)20時41分05秒)
「興奮状態のまま書き込みますが、こう、なんというか、こうなるだろうと予測しつつ、その予測が当たったてても、腹が立つどころか拍手喝采してしまうというのは、コニー・ウィリスの「芸」のうまさですね。「ドゥームズデイ・ブック」でもそうでしたが、きてきてきて、いいやまだまだ、はやくきてっ、まてまてもうすこし、ほらほらいくぞ、さあいけっ、ああいっちゃう的快感というのか。」
・冬樹蛉『航路』テレビドラマ風(新・大森なんでも伝言板2002年09月26日(木)00時50分58秒)
「『航路』を日本で連続ドラマにしたら……というネタを思いついて、なーんとなく個人的好みも相当入れてキャスティングしたら、こんな感じになっちゃいました。だいぶ私の趣味が入ってますが、丹波哲郎は動かないところではないでしょうか。」
・SF人妻『SF人妻日記』
「(前略)トンデモ・ノンフィクション作家や、トンデモな臨死体験者、プロジェクトに不適格な被験ボランティアなどの登場人物が面白く、飽きない。特にディッシュ・ナイトでの身も蓋もない映画評は、自分も似たような評をするので親近感を持った(禁止ルールも)。
 (中略)このどんでん返しにより、第三部のリチャードの行動の原動力が愛情にあるとして、恋愛ストーリーとして読むこともできるだろう。
 あと、萌えというものがよく解ってないので、用法として正しいのかどうか不明だが、「災害おたく少女萌え〜」というのもありだろうか?
・石堂藍『藍読日記』9月19日分
「臨死体験を医学的に解明しようとするティームの話。心臓病でしょっちゅう心停止に陥る少女を助けたいというのが動機で、要するに泣かせる話。相変らずそのまんま映画に出来そうな描写や内容(そのまんまだとほんとは時間がかかりすぎちゃって無理だけど)。うまいなあと思う。」
・野田令子『近況報告』9月26日分
「大ネタが臨死体験、ということで(扉でも触れている)『ブレイン・ヴァレー』あたりと似たような話を想像していたんですが、アレより俺的SF度は低め。でもぎりぎり俺的にはSF、って感じです。SF度は(俺にとっては)ぎりぎりなんですが、面白さは他の作品に比べて頭一つ抜けてる、ってゆーか。」
・風野春樹『読冊日記』9月20日分
「この作品は、よくあるSFのようにガジェットや設定の新奇性に頼るんじゃなく(いや、そういうSFも好きだけどさ)、純粋に物語の力で読ませる小説なのだ。だから、SFファンに限らず、小説が好きなすべての人にお薦めします。
 あ、あとこの本は彼女をSFファンにするのに最適かも(むちゃくちゃ分厚いので、もともと読書の習慣のある彼女じゃないとダメだけど)。『アルジャーノン』だと、そのあと『ビリー・ミリガン』とかそっちの方向へ進みかねないしね。『航路』がおもしろかったら、そのあと『わが愛しき娘たちよ』を薦めればこれでもう彼女はSFファンに(笑)。 」
・細井威男『たぶん読書日記』
「『臨死体験というトンデモになりやすいテーマを扱いながら、作中では危うさを感じさせつつきっちりこちら側に踏みとどまるバランス感覚の妙もさることながら、あらゆる描写をストーリーの中核にしっかりと結びつけながらも先の読めない話を紡ぎ出し、怒濤のラストに導くストーリーテリングの力は圧倒的なものだ。強力におすすめします」
・タニグチリウイチ『積ん読パラダイス』
「 死の向こう側に光の国はあるのかもしれない。永遠の無でしかないのかもしれない。けれどももはやどちらでも構わない。どちらであっても関係ない。精一杯に生きよう。そして精一杯に死のうと、『航路』を読み終えた今、強く想う。
・罵詈淘奴『書評部屋』
「これはすごい。ネタバレしそうなんで詳しく書けんのが残念だが、一押しです。コニー・ウィリス。早川でSFをよく書いてるみたいだったが、今まで全くノーチェックだった。迂闊!」(9月19日付け書評)
・岡本俊弥『岡本家記録』
 NDEで現出される世界は、幻覚とも現実とも明示されない境界線上にある。その一方、謎の解明が科学ではなく、文学的天啓による点が、作者一流の皮肉とも読めて面白い。さらに、第3部の直前では、こういう設定だからこそ許される大転回が描かれる(こんな調子なので、ネタバレ抜きの紹介が書けません)。第3部は、冒頭で明らかにされた「ある作用の謎」が再発見される倒叙型展開(刑事コロンボのように、犯人が分かっていて、証拠を見つけるドラマ)。ここがクライマックス部分でもある。
 登場人物は、概ねコミカルで常識はずれ(映画的で分かりやすい性格付け)。いつものウィリス調だが、物語に余計な緊張が生じず楽しめる。人の死に密接に関連する臨死体験は、死に対する恐怖や悲しみが伴うがゆえに、過度に美化されたり神秘化される。ウィリスの解釈はそのどれとも異なるけれど、死/生への尊厳という意味では共通かもしれない。
・田中哲弥『田中哲弥の、仕事に明け暮れる日々について』
「これは読んで絶対損のないとんでもなくおもしろい小説である。今、この文章によってこの小説の存在を知らされたあなたはきっと読了後田中哲弥に心から感謝するはず。あちこちからいろいろ情報が漏れてくる前に、あとがきも解説もあらすじも読まず、いきなり読むことをお勧めする。いいから読めって。 」
・中野善夫『手に取って、読め!』
「ウィリスは一度読みはじめるとなかなかやめられないといふことはわかってゐるのに、『航路』を手に取ってしまった。そして予想を上回る面白さで、読み終へてしまった。ああ、翻訳が全然できなかった。この忙しいときに。確かにこれは面白い。でも、私の涙腺は緩みませんでした。強いて云へば59章の最後かな。訳者の大森氏が云ふ58章では特に緩まなかったが、やはり本書では58章で泣くべきだったか。でも、58章は私には遠すぎました(って何が?)。それに最後の一頁はよくわからなかった。」
古沢嘉通 furu's nest 掲示板
「けっして提灯を持つわけじゃなく、この本は大傑作なので、すべての小説好きは、読むようにオススメする。」(古沢嘉通9月 4日(水)00時37分54秒)
・柳下毅一郎『映画評論家緊張日記』
「『航路』読了。たいへん面白かったです。しかし、ここまで長い必要があるんだろうかという気がちょっとだけする。いやたいへん良く書けているのはもちろんなんですけど」

・yashigani『Book Junkies Anonymous』
「ドラマの展開がサプライズに継ぐサプライズで派手なので気にならなくなってしまうが、描かれるアイデア(臨死体験実験から派生するある成り行き)自体は、思いもよらない、というほどではないと思う。しかし過程や描き方がスリリングなのだ。とくに最後の150ページの展開は心底驚く。
 ウィリスの長編を読んだことのない人のために言うと、宮部みゆきの長編の作風に自然科学への信頼とスラップスティック風味のユーモアと軽いキリスト教的なアリュージョンを足し、犯罪を抜いたような感じだろうか。(似てないか?)」
・洋書倶楽部
「臨死体験を扱った作品でありながら、湿っぽさはほとんどない 」
・Salon.com
『航路』をサスペンス小説に分類するのは、ヒッチコックの『サイコ』をホラー映画に分類するようなものだろう。たしかにスリル満点の小説だが、サスペンスの枠からは大幅にはみ出している。個人的には、「哲学趣味をちりばめた神経医学的ミステリ」とでも呼びたい誘惑にかられるが、この形容さえ、変幻自在のこの長編をせまい型に押し込むことになる。しかし、ここ数年に読んだ小説の中で、『航路』がもっともすぐれた小説であることはまちがいない。プロットは完璧に構築され――ウィリスの語りの魔術にかかると、それはさらにすばらしいものになる――その知的誠実さには一点の曇りもない。
・『オニオン・A・V・クラブ』
「コニー・ウィリスの最もすばらしい作家的技法は、意表をつくテーマに感情を共鳴させることにある。生と死という困難なテーマに思い切って踏み込んだ『航路』は、しっかりしたストーリーと力強い構成に支えられながら、科学とスピリチュアリズムの微妙な境界線上を自信に満ちた足どりで歩んでゆく。巧妙に練り上げられた忘れがたいストーリーが、予想もしない「トンネルの向こうの光」へと読者を導く。




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