【1月11日(月)】


 ミストラルで本の雑誌の原稿を書いてから、帰国中の町山夫妻と合流。西葛西の《しゃぶ玄》で夕食会。
 町山妻の容赦ないウェイン町山評はめちゃめちゃおかしい。というか、ほとんど夫婦漫才状態。

町山妻「わたしが台所にいたら、居間から声が聞こえてくるんですよ。『うわっ、やられたあ』とか、『くそっ、そう来るか』とか。なにやってるんだろうと思って覗いてみたら、この人、仮面ライダーの人形並べて、こうやってひとりで遊んでるんです
町山夫「ふつうやるよね、みんな」
大森「オレはやらないよ」
町山妻「ほら、やっぱりあなただけじゃない」
町山夫「おかしいなあ……」

町山妻「友だちできてよかったよね。コロラド来てから、友だちがいなくてさびしいって、毎日泣いてたもんね。おたくだけど
 町山夫のおたく友だちの奥さんとは友だちで、奥さん同士、おたくな夫の悩みについて相談しあっているらしい。
「ねえ、おたくのご主人、どんな服着てるの?」
「うち? 黒のTシャツ。マンガの柄の」
「やっぱりねえ」
 とか。おたくファッションは世界共通。

 しかし町山夫も、日本じゃおたく嫌いで通ってるのに、異国の地ではやはりおたくの血を求めてしまうわけですね。だったら堺三保とも仲良くしろ。って、それは流派が違うので無理。



【1月12日(火)】


《本の雑誌》の原稿をだいたい仕上げてから、我孫子迎撃宴会のため新宿東口滝沢別館。
メンバーは、我孫子武丸、河内実加、津原泰水、井上夢人と、秋田書店のO野氏。
 冬コミで会ったとき、河内さんが涼元悠一のデビュー作「我が青春の北西壁」(これは傑作)収録のコバルト文庫(奇しくも河内さんがカバーを描いてるのだった)をくれたので、そのお礼に牧野修『MOUSE』を貸し出す。

 食事は中華料理の滋味城。その場の主な話題は河内日記参照。

 食事のあとは区役所通りのパセラ。本人出演曲(パセラのジャンル別歌本では「スター」という項目になっている)中心に攻める。ヒロスエの見てないビデオクリップとか見られてお得。
 ちなみに、河内日記では、大森がインターネットに接続して特撮番組の放映年を確認したことになってますが、それは違います。こういうときのためにハードディスクにインストールしてある『全特撮』を立ち上げただけ。「ウルトラセブン」は何曜日の何時から放映されていたのかというような、自己の存在を根底から揺るがす疑問に直面したとき役に立つのは『全特撮』。みんな、いますぐ『全特撮』を買おう! と、お値段分の宣伝はこの程度ですか。これであなたも特撮博士。

 カラオケ終了後、入口のところに置いてある《Pop'n Music》を、我孫子武丸、さいとうよしこと三人でプレイ。《Beat Mania》からスピンオフした音楽ゲーね。三人で三つずつボタンを担当し、自分の担当色のタマが落ちてきたらタイミングを合わせて叩く。三人でやると比較的難度が低いんだけど、なぜか二面目でゲームオーバーBADの回数が異常に多いなあ。どういうことや、これ? と思ったら、我孫子武丸が一言。
「このボタン、担当が誰か最後までわからんかったね」
 って、その緑は最初からあんたの担当やろが! ぜんぶで九つボタンがあって、三人で三つずつでしょ。そっちの三つのボタン、ちゃんと枠線で囲んであるやんか!
 教訓:酔っ払ってごきげんの我孫子武丸にはなにを言っても無駄。



【1月13日(水)】


 解説用に、光瀬龍と山田正紀の昔の本を再読。《週刊小説》の98年本格シーン年間回顧原稿を書く。



【1月14日(木)】


 2時半、新橋の徳間書店でF.F.N.の収録。エレベーターで福井健太といっしょになる。いきなりポケットからシュークリーム(のようなもの)をとりだし、エレベーターボックスの中でぱくぱく食べる福井健太。昼飯の時間もない忙しい毎日を送っているのはわかるが、エレベーターで食事をするのはやめていただきたい。いや、オレが乗ってないエレベーターならいいんだけど。

 打ち合わせと撮影を終えた京極さんがもどってきて、会議室でいつものやつ。
「週刊誌連載ってなんですか?」
「え? どこで聞いたんです?」
「いや、貫井くんの日記で」
 と、よそさまの日記をニュースソースにできるのは便利。開始時期は未定だそうです。週刊誌名はまだ秘密。単発の長編らしい。

 F.F.N.終了後、大沢オフィスで直木賞待機に入るという京極さんと別れて秋葉原。Tゾーンミナミで、T-TIMEの製品版をようやく購入。さらに、PCカード経由でノートPCに2.5インチのベアドライブをつなげるというXpress Dockなる製品を発見。これさえあればHDの換装が楽勝かも。と思って、ちょっと高かったけど(14,800円)買いました。余ってる1.6Gのベアドライブを外付けで使う手もあるし。でも8ギガクラスのHDに換装するのがてっとりばやい気も。

 直木賞速報を頼んであったC塚嬢から携帯に電話。宮部さんが受賞と聞いて、お祝いがてらタクシーで東京會舘へ。8年も編集者やってたのに、じつは芥川賞・直木賞の記者発表会場に行くのは今日がはじめて。会場横には文春がちゃんと控え室用意してるんですね。
 着いてみると、各社編集者のほか、大沢在昌、京極夏彦、北村薫、逢坂剛の各氏の姿も。そのうち宮部さんが登場、場内は拍手の嵐。
「みなさんに何度もご心配おかけしてしまって。わたしもこれでほっとしました」
 というコメントが宮部さんらしい。なにしろ直木賞候補六回目ですからね。そのたびにまわりが騒ぐからたいへん。
 芥川賞は、京大法学部在学中の平野啓一郎氏。《新潮》に投稿した原稿で芥川賞というセンセーショナルなデビュー。作品に惚れ込んで京都まで会いに行ったという前田編集長もお喜びでしょう。
 記者会見の平野くんは生意気な感じが素敵。文学観をたずねられて、
「それは本質的な問題ですね。この場でお答えすることも不可能ではありませんが、どうしても誤解が生じるおそれがあります。わたしが話したことをみなさんが記事にされて、それがわたしの考えと違っていた場合には、みなさんも不本意でしょうし、それについては原稿のかたちで発表させていただきたいと思います」とか。
 宇山さん@講談社とか、佐藤誠一郎@新潮社とか、「生意気な若者」好きのベテラン編集者はめちゃめちゃ喜んでました。キャラ立ってていいっす。
 宮部さんは朝からものもらいができて顔が腫れ、さっきまで眼帯してたそうで、「ひょっとしたらサングラスで記者会見かも」と覚悟してたとか。
「でも日本でいちばんサングラスの似合わない作家のひとりですからね、宮部さんは」と言ったのは京極夏彦です。
 さいわい、ものもらいの症状はよく見ないとわからない程度におさまり、そのまま受賞あいさつのネタに。文芸記者からの質問は、家族のこととか、わりとほのぼのしたものが多くて、平野くんに対する質問とは好対照でした。

 記者会見・写真撮影終了後は、銀座のバー《早苗》で宮部さんお祝い会。せまいバーに50人ぐらいが詰めかける殺人的大混雑。宮部さんに挨拶したら早々に引き上げようと思ったら、奥にしまわれてしまった荷物も出せない状況。

 しょうがないので、入口近くにいた宇山さんといっしょに早苗を抜け出し、近くの銀花ラーメンへ。午前3時までやってるやたらでかい店ですが、ほかに客はひとりもいない。
「いやあ、こういう荒涼たる風景はぼく大好きだなあ」と喜びつつビールを飲む宇山さん。一時間ほど宇山さんの愚痴(「やっぱり現場にいないとダメだよ。直接担当したいなあ」とか)を聞き、メフィスト賞をめぐるあれこれな話をしてから、ふたたび早苗に引き返す。

 さっきの立錐の余地もない状況はすっかり改善されてて、やれやれと奥のほうに着席。朝日新聞(『理由』の版元)の小説部門編集長も担当編集者も元新潮社なので、去年幻冬舎に移籍したH川とオレを入れると、残ってる中に新潮社退社組が四人。まるで早川書房のようである。
 現役の新潮社編集者を交え、ほとんど同窓会状態。ま、となりのテーブルは大沢オフィス親睦会状態だったので。

 けっきょく午前二時まで《早苗》にいて、文春差し回しのハイヤーで帰宅する宮部嬢に、荷物運搬係として同乗。山のような花束とプレゼントを積み込み、姫を自宅までつつがなく送り届ける。しかしあれだけ編集者がいて、銀座より東に住んでるのはオレだけですか? いやまあ、ふだんは宮部さんとタクシーに相乗りして帰るんだけど、直木賞受賞の夜にそんなことでいいのか。まあでも、黒塗りハイヤーで帰宅できたのでラッキー。



【1月15日(金)】


 茶木さんからの電話で起こされる。ミステリチャンネルで山之口洋『オルガニスト』をやることになったんだけど、書店で本が見つからないから貸してくれ、とのこと。たぶん豊崎由美の趣味だな>『オルガニスト』。
 茶木さんちは船橋のほうなので、ひょっとしたらオレがいちばん近所に住んでる同業者なのか? 午後5時に西葛西駅で待ち合わせて落ち合い、近くの喫茶店でお茶。
「またこんな解説引き受けちゃってさあ……」とか、そういう愚痴を聞く。書名がバレるとまた我孫子さんにいぢめられるから内緒らしい(笑)。初詣以来、今年電車に乗ったのは今日が初めてだそうで、まじめに仕事をしている模様。だからといって締切が守れるとはかぎりませんが。

 30分で別れて、赤坂へ。美々卯のうどんすきで、SFオンライン系の新年会。堺・坂口夫妻・岩郷・野崎のオンライン勢ほか、清水厚、會川昇、恩田陸、神代創など。
 恩田さんは、うちに送られてくる小説誌すべて(《小説NON》《小説すばる》《メフィスト》《PONTOON》《SFマガジン》)に小説書いてるので、やたら仕事してるような気がするが、しかし書き下ろしの『蝸牛の歯』(幻冬舎)はいったいどうしたんですか。いくら会社辞めたと言っても連載しすぎでしょう。まったく。とかそういう話をする。SFマガジン連載はすげえバカSFで乞うご期待、らしい。でもすでに恩田さんは酔っ払ってご機嫌なのでよくわからない。『六番目の小夜子』の映画化は本決まりだそうです――という話はここに書いていいのか。
 清水監督からは、最近のテレビドラマ裏事情と、ホラー系映画事情について聞くが、ここには書けない話ばかり。若手女優の話はめちゃめちゃ面白いんだけどな。なんか、會川さんと意気投合して盛り上がってたみたいですが、このふたり、じつはタイプが似てるかも。

 かなりメートルが上がってる恩田陸を中心に、さらに酒を求めて赤坂を放浪する一団と別れ、仕事のために帰宅。さいとうよしこはOESの歌会流れのカラオケのため、新宿パセラに向かう。なんかそのあと、見附の駅でうちの弟とばったり会ったらしい(笑)
 あ、そう言えば日下三蔵から千円もらってこいと言うのを忘れた。賭けのツケは忘れないように>日下三蔵。



 試験的に、ご恵送御礼コーナーをつくってみました。とりあえず、1月前半分。

1/2
●TORANU TあNUKI 63号(アンビヴァレンス)
 SFマガジンの書評でおなじみ、渡辺英樹氏が18年前からやってるファンジン。本文18ページだけどけっこう読みではあります。SF成分が減少しているのはいずこも同じか。

1/5
●トムプラス2月号 潮出版社
 すっかり歴史マンガ誌になってしまって最近あんまり読んでないす。いまだに送られてくるのは、その昔、コミックトムにコラムを書いてたから。

1/6
●赤川次郎『ABCD殺人事件』講談社ノベルス
●田中芳樹『魔天楼』講談社ノベルス
●太田蘭三『遍路殺がし』講談社ノベルス
●森博嗣『地球儀のスライス』講談社ノベルス
●西澤保彦『念力密室』講談社ノベルス
 今月の講談社ノベルスは森・西澤の短編集が同時刊行。どっちも講談社ノベルス12冊目。読むのは(ってだいたい読んでるけど)書評用がかたづいてから。

●岬兄悟・大原まり子編『SFバカ本 白菜編プラス』廣済堂文庫
「買ったら届く」の法則がまたしても的中。今回の巻末座談会は面白いんだけど、ベタ起こしはやめてほしい。オレに原稿整理させてくれれば……。Grayはあんまりでしょう。スター・トレックの「ニュー・ジェネレーション」ってのもなあ。

●週刊新潮1/14号(新潮社)
 毎週《週刊新潮》を読むようになってすでに15年。しかし最近ワイド特集が多くてつまんない。『「梅川事件」の全貌』は……なんでいまごろ。

1/7
●週刊文春1/14号(文藝春秋)
 トップは「ドクター・キリコ事件」の特集。WWW情報の後追いに必死な感じ。

●論座
 96年2月から1年半映画評を連載してた関係で、リニューアル後も毎月送られてくる。中条省平の「仮性文藝時評」は毎月読んでます。
 今月号には、小谷野敦『「オヤジ」という差別語』っていう原稿が載ってて、斎藤美奈子、上野千鶴子、宮台真司などのオヤジ批判を批判するって趣旨なんだけど、その記事中にはさまってる出版広告が嵐山光三郎の『不良中年は色っぽい』。コピーにいわく、「なれるものなら、なってみろってんで、"オヤジの素"を一挙大公開」。差別語じゃないじゃん(笑)。

1/8
●CD-ROM Fan 2月号(毎日コミュニケーションズ)
 これも昔連載してたので送ってくれる雑誌。水玉さんの連載『窓の牛』が読めます。今月号はタカラの『ジェニーデジタルライブラリー』なので爆発してます。

●ロバート・ジョーダン『聖竜戦記4』(斉藤伯好訳/ハヤカワ文庫FT)
 すいません、このシリーズ全然読んでないっす。

1/9
●デボラ・クロンビー『警視の死角』(西田佳子訳/講談社文庫)
●ラリー・ベイカー『フラミンゴ白書』(高儀進訳/講談社文庫)

 講談社文庫は翻訳物の新刊だけ毎月送られてくるのだが、めったに読めない。『フラミンゴ白書』はちょっと気になる。

1/13
●週刊新潮1/21号(新潮社)

1/14
●菊地秀行『シャドー"X"』(祥伝社ノン・ノベル)
●浅黄斑『轟老人の遺言書』(祥伝社ノン・ノベル)
●阿木慎太郎『赤い死神を撃て』(祥伝社ノン・ノベル)

 ノン・ノベルの新刊も毎月届く。浅黄斑が奇想推理短編集ってことなので、ちょっと読む。表題作は暗号物。わりとまっとうな本格ミステリ短編集みたい。菊地は秋せつら物の最新作。

●週刊文春1/21号(文藝春秋)

1/15
●佐伯泰英『密命』ほか祥伝社文庫の新刊4冊。

 これも定期送本。祥伝社は先月からノンポシェット文庫じゃなくなってます。


top | link | board | other days