鮎川哲也賞受賞作、谺健二『未明の悪夢』読了。阪神大震災をモチーフにしたって意味では『虚無への供物』的なんだけど、切り口がストレートすぎたような。
　震災後の描写にはさすがに迫力があるし、そこにいたるまでの伏線も悪くない――が、ミステリ的にはどうもぎくしゃくしてますね。女占い師のキャラクターもいまいち生きてないし。メイントリックもやっぱりストレートすぎ。これだといくらなんでもそのまんまでは――と思ってたら、そのとおりの解決になっちゃうし。
　筆力はじゅうぶんで読み応えもあるんだけど、阪神大震災という事件の大きさに負けちゃってる感じ。料理のしかたを変えれば傑作になったような気がするんだけど。惜しい。

　さて、とりあえず仕事。インターネット＠アスキーの映画評をかたづけ（今回は「ＣＵＲＥ」）、ＳＦインターセクションの原稿化に着手（あきこんの二日目にやった我孫子武丸・小林泰三・大森座談会）。小説トリッパーの「ＳＦ文庫100冊」原稿はあとまわし。

　書くのを忘れてたけど、産経新聞がはじめた産経Web-Sがいい。
　その日の朝刊がほぼすべて読める電子朝刊サービスも、新聞とってない人には役立ちそうですが、おすすめは92年以降の記事検索サービス。ふつう、他の全国紙でやってる同種のサービスだと、署名記事は検索対象にならない（いや、検索はできるんだけど、「著作権者と交渉中のため表示できません」っていうメッセージが出るだけ）。これだと、書評を調べたいときに役に立たないんですね。
　しかし産経Web-Sは、署名の書評原稿もきちんと全文表示される。たとえば３年前に産経新聞に自分がどんな書評書いたかがすぐわかるし、京極夏彦に関してどんな書評が出てるかもたちどころに調べられる。他の全国紙にくらべると、産経は書評関連記事が断然多くて、ふだんNIFTY-Serveの記事検索サービス使うときも、解説や書評の場合は真っ先に産経を調べてたので、これがＷＷＷで使えるメリットは大きい。10月末までは無料、サービス開始後も、月額2000円で利用できる（朝刊配信だけだと1000円）。朝日や読売も見習ってほしいものである。

　もう一個ありがたいのが、書協のはじめたwww.books.or.jp。53万冊から本を検索できるシステムで、文庫やノベルスもヒットするのでありがたい。大森望で検索すると、25冊ヒット（訳書が23冊、著書が2冊）。なぜか『オルドーンの剣』と『深き霧の底より』が載ってない。うーん、いまいち基準が謎だなあ。やっぱり丸善や紀伊国屋と併用するのか。

　今日届いた森博嗣『幻惑の死と使途』（講談社ノベルス）を読む。今回は舞台魔術物。脱出マジックにトリックがからむタイプで、そんなに意外性はないけど（このシリーズとしてはすごく意外かも）、結末には感心しました。しかし犀川と萌絵が出てくるだけでうれしいミーハー状態に突入してるオレ（笑）。

　乱歩賞受賞作の野沢尚『破線のマリス』を読む。けっこう意外な展開で驚いたけど、こういうネタならもうちょっとうまい書き方があったような。でも、これを読んで「事件が解決してない」とか文句を言う人は読み方が間違ってると思うぞ。
　不満を言えば、あの小役人視点の描写はないほうがよかったと思いました。ＴＶドラマならああいう描写がはいるのは常套だけど、小説だとネタバレに近い。あくまでヒロインに感情移入させとくべきだったのでは。

　あきこんパネルの原稿をなんとかまとめ終わる。が、トリッパーのほうは難航。100冊選んじゃえばあとは楽勝と思ったが、さすがに３枚×12本はつらい。

　６時、東京會舘で宍戸健司＠角川書店の結婚パーティ。お相手は松山バレエ団のバレリーナってことで、文壇では有名な縁組みですね。辣腕編集者（『パラサイト・イヴ』とか『不夜城』とかを担当）の結婚披露宴ってことで、ゲストも300人の大所帯。有栖川有栖、生島治郎、伊沢元彦、いしかわじゅん、出渕裕、いのまたむつみ、打海文三、大沢在昌、景山民夫、菊地秀行、北方謙三、下田治美、田島照久、竹河聖、谷村志穂、茶木則雄、馳星周、花村萬月、乃南アサ、原田宗典、久間十義、広井王子、水野良、宮部みゆき、目黒考二……とか、なんだかわからないメンツ。なぜか江角マキコもいて、間近で見られてラッキー。
　挨拶は角川歴彦社長にバンダイの山科誠会長。新婦側では森下洋子が出てきて、いや、やっぱり美人ですね。めちゃめちゃ痩せてるけど。清水紘治もかっこよかったな。
　さすがにこの人数では立食なので、雰囲気的にはほとんど文壇パーティ。角川の編集者は30人以上いるし。有栖川さんは、徹夜で原稿書き上げて、披露宴会場で新郎にフロッピーディスクわたしたそうです。やるなあ。
　金屏風前に立つ新郎新婦の写真はこちら。余興で凄絶だったのは、松山バレエ団のプロによる踊りのあとに登場した、角川編集者４人組による白鳥の湖。たいへんなもん見ちゃいましたね。いやはや。おまけにビデオまで撮ってたり（笑）。

　披露宴後は、目黒考二（北上次郎）、茶木則雄、Ｙ田Ｎ子、打海文三の各氏と新宿に流れて池林房。なぜか麻雀することになって、関口苑生を電話で呼び出し、茶木・目黒と午前４時半まで。前半絶好調だったけど、最後の３局で崩れて１万ガバス負け。関口氏は５万ガバス以上沈んでたからよしとしよう。しかし北上おやぢには勝てないなあ。いや、あたりまえですけど。
　向かいのらんぷ亭で朝飯食って、始発で帰宅。こんなことしてていいのか。

　夕方起きて、小説トリッパーの原稿を書きつつ、横溝正史賞の下読みに着手。
　さすがに100冊紹介原稿だと、手元に本がないと書きにくいので、珍しく家で原稿書いてたら、だんだんそのへんに積み上げている雑誌の山が気になってきて、発作的に一年分を整理。不要書類の山を捨てまくり、数百冊の雑誌を分類したりしてるうちにどんどん時間がたつ。わかりやすい逃避行動ですね。

　トリッパーの仕事と横溝賞。
　あと、ひさしぶりにリンク欄を刷新しました。

　一週間遅れでトリッパー原稿を仕上げる。自宅の和室は爆発的にかたづいて、ゴロ寝も可能な状態に。って一年前にもどっただけだけどさ。

　講談社ノベルスから来月出る例のＳＦの推薦文を書くためにゲラを読む。原稿段階からはかなり修整が加わり、まだ不満はあるもののかなりよくなりました。かわいい女の子コンビが史上最強の戦艦（ワームホールとつながってて、戦闘総質量は11万トン（笑））だとか、そういう話。ヤマモト・ヨーコかエリアルかって話ですが、これをシリアスでみっちり書いてあって、インパクトは抜群。士郎正宗と野阿梓が合作したような感じ……って、小説技術的にはそこまで行ってないですが。タイトルは『プリンセス・プラスティック』。たぶん11月はじめに出ると思うので、読んでね。
　……と、だらだらゲラを読んでいるうちに時間が過ぎてゆく。新潮社の少女雑誌ニコラの名探偵相性診断チャート（笑）の仕事もしなきゃいけないんだけど、つい本の整理をしてしまうオレ。

　自宅から排出された一年分の本と雑誌の残りを仕事場に移動。不要本の山を放り込んだ段ボール３個を古本屋に持っていく。１万円くらいかと思ったら20,800円になってラッキー。やっぱりハードカバーは新しいうちに売るにかぎる。
　さいとうのアドバイスを受けつつ、寝る前にいいかげんにつくったYES/NOチャートと名探偵データを新潮社にファックス。フラメンコが得意で大森と同郷のＩ嬢からオッケーが来たので一安心。しかし女子中学生がメインの雑誌でメルカトル鮎とか紹介していいのか（笑）。
　ちなみに、あとは金田一少年とコナンと三毛猫ホームズと御手洗と鞠夫と犀川と京極堂。質問にイエスノーで答えていくと、計８人の探偵のうち、あなたに相性ぴったりの探偵はだれなのかたちどころにわかるという、そういう企画。ちなみに企画を立てたのはオレじゃないぞ（笑）。
　まあその昔、福武（当時）の女性誌〈ベネッセ〉で、真夏の恋大作戦チャート全16ページを好き勝手にやったときのことを思えばたいしたことないっす。考えてみればあのときの原稿ってHTML化にぴったりかも。

　と思って５年前のファイルをひきずりだしてHTML化しはじめて、はっと気がつくと２時間経過（笑）。せっかくだから読んでね。なんか前書きのファイルが行方不明なんであらためて説明すると、恋のパターンは４種類。美穂はリゾート系、章子はおたく系、冴子はドラマチック系、百合子はレズ系の恋を経験します。
　シナリオからシナリオへのジャンプも（場合によっては）発生します。ファイルはぜんぶ分割するのがスジだろうけど、めんどくさいのでシナリオごとの１ファイル。
　ゲタ（〓）になってるとこは、ほんとはハート、クラブ、スペード、ダイヤの機種依存文字が入ってて、それを集めると性格診断が受けられるという、ひと粒で二度おいしい（笑）女性誌にありがちなパターンになってました。
　が、いまとなっては、どこにどのマークが入ってたのか判別するのが面倒なのでパス。識者のコメント（笑）までもらってたという。コメントと診断のファイルはこれ。
　いやー、よくこんなもんつくったなあ。ちなみに全体の構成は女性誌おたくの同居人が担当。文責はすべて大森です。
　しかしいちばんえらいのはこんな記事をふつうの女性誌に16ページも載せた深津直美嬢かも。現・谷崎ナオミですね。ぱちぱち。
　たしか掲載誌には水玉画伯のイラストがついてて、山下は柳下がモデルだったような。ってそのまんまですが（笑）　掲載誌が発掘できたらそのうちイラストも再掲しようっと。

　とかゆってるうちに体育の日の朝８時になってしまったので、帰って寝ます。