【3月1日(土)】

 ってことで、「マジック・ザ・ギャザリング」プロツアー・パリ大会日本代表選考会予選である。デッキは二種類持ってったんだけど、結局、赤緑白で出場。
 初戦は白ウィニーと当たり、いきなり出てきたC.o.P: Blackを壊せず持久戦。なんと1デュエル目が終わらず時間切れ。いやはや。
 第二ラウンドの相手はなんとびっくりベニー松山氏。ジャンケンでベニーさんが勝って、「じゃ、後攻でお願いします」
「?」
 と驚きつつ森出してエンド。ベニーさんはドローしてからおもむろに、ニコル・ボラスをディスカード(笑) げげげ、そんなデッキには対策がないぞ。と思ったけど、激しくランド事故を起こしてくれたので一戦目は楽勝。
 しかしこの男らしくも凶悪なデッキの真価が発揮されたのは二戦め。こっちは7ターン目くらいまでノーダメージ。ベニーさんのパーマネントは土地しかない状態で、ライフも残り7とかそのくらい。
 しかし墓場と手札には着々とコンボのタネが。やがておもむろに動き出したベニーさん、まずShallow Graveでひっぱってきたニコル・ボラスでアタック(だからEbony Charm引けよ>おれ)。フライング・クリーチャーいないので攻撃は素通しで7ダメージ食らって、手札はすべてディスカード。さらにBurned Offeringをたたきつけるベニー松山。赤マナ一個と黒マナ7個出します。沼サクってLake of the Dead出して、もう一枚沼サクって4マナ。生命吸収を9ポイント。残った赤マナ1で稲妻。合計19ダメージ(笑)
 うーん、City of BrassかKarplusan Forestを一回でも使ってたら、この時点で負けだったんだけど、さいわいノーダメージ状態だったので残りライフ1で生き延びる。そしてベニーさんはこの時点で力つき、あと1ダメージが当てられないまま、Orderに殴り殺されたのでした。いやまったく男らしい。

 というような楽しいデュエルもあったものの、最終的には2勝2敗2引き分けで全然ダメ。やっぱり黒単で出るべきだったかな。慣れない色は使うもんじゃないっす。


【3月2日(日)〜4日(火)】

 リチャード・レイモンの直しを進めつつ、がしがし本を読む。柴田よしき『炎都』(トクマノベルズ)には仰天しました。いきなり京都沈没+妖怪大戦争だもんなあ。地震で陸の孤島と化した京都の街に跳梁跋扈する水虎や火車。鞍馬山の天狗は面白がってどんどん火の玉投げてくるし、水は涸れちゃうしさあたいへん――という天災パニック物。いやはやまったく驚いた。

 貫井徳郎『修羅の終わり』(講談社)は、『慟哭』系列の1200枚の大作。某所でS口苑生氏が「理解できない傑作」と書いてたけど、これは評価が難しい――というか、わたしが理解したこの内容ではたして正しいのか自信がない。つまり小説的な読みどころと新本格的な仕掛けの部分が著しくズレてて、ふつうの小説みたいなかたちで決着がつかない。逆に言うと、たとえば悪徳刑事物としてストレートに書けば『マークスの山』クラスの警察小説に簡単になる材料をほとんど道具のように使い捨てにしているとも見ることができて、これは見上げた本格魂なのかも。結末で読者を宙吊りにすることを意図していたとすれば、おそるべき小説ですね。これが折原一的な文章で書いてあれば「ふうん」で納得しちゃうんだろうけど、小説が書けすぎちゃうところに読者を悩ませる元凶があるような気がする。帯の惹句とか、苦心のあとがうかがえて、読み終えたあとにしみじみ見ていると笑ってしまいました。うーん、しかしもう一回読んでみないとなあ。

 井上夢人『メドゥーサ、鏡をごらん』は、『梟の大いなる黄昏』とか『神鳥』とかの系列の話かと思いきや、まさかこういう展開になろうとは。これもけっこう宙ぶらりん系かもしれない。メドゥーサがらみの話に迫力がありすぎるし。

 佐藤大輔『地球連邦の興亡1《オリオンに自由の旗を》』(トクマノベルズ)は、架空戦記がSFのサブジャンルであることを実証する新シリーズ。というか、スペオペは定義により架空戦記なんですね。まあ『遙かなる星』シリーズで宇宙開発を題材にしていた佐藤大輔にしてみれば、この方向に来るのは必然とも言えるけど、いきなり宇宙戦争物。で、はじまったと思ったらすぐ終わっちゃって戦後処理の話になるあたりがさすが。谷甲州系の「男の宇宙小説」って感じなんだけど、登場人物がけっこうえらい人だったりするのが違いでしょうか。ミリタリー系にはあまりそそられないので最初のほうの戦闘シーンはちょっとつらかったけど、後半は盛り上がりました。続巻が楽しみ。

 一方、「女のスペオペ」代表は、大原まり子『アルカイック・ステイツ』。未来史シリーズはコードウェイナー・スミスが下敷きだけど、今回の下敷きはヴァン・ヴォート、『イシャーの武器店』。デビュー長篇『機械神アスラ』の語り直し的な雰囲気もちょっとあったりしますが、予想を裏切る言語道断な展開はいかにも大原まり子らしい。男のスペオペが、設定とか物理法則とかに縛られてなにかと不自由になりがちなのに対して、女のスペオペはもっとわがまま。作者は神として宇宙に君臨するわけです。その意味ではコードウェイナー・スミスもじつは「女のスペオペ」の書き手かもしれないとちょっと思った。

 海外のスペオペは、森下さん推薦の〈銀河の荒鷲シーフォート〉シリーズ第一弾、『大いなる旅立ち』。体育会系後輩いびりの世界はわたしにとってほとんどSFなので(笑)、けっこう爆笑させてもらいました。ここまで徹底すると笑うしかない。碇シンジとかアンドルー・ウィッギンとかはこういう世界に放り込むべきだね。しかしこんなものがなぜ人気あるかね。謎。いや、面白いんですけどね。


【3月5日(水)】

 6時にミストラルでSFオンライン用マーズ・アタック座談会。その模様はすでにSFオンライン創刊号に掲載されちゃってるので(^^;)、ここを見てね。
 30分の大遅刻をなさった特殊翻訳家の人がいろいろ力説してます。ま、悪い映画じゃないんだけどねえ。終わったあとはみんなで飯食ってからうちの仕事場に流れ、わたしは和室で特殊翻訳家の人の謎の新デッキとデュエル。Breathstealer's CryptとPuzzleboxでクリーチャーはみんな捨ててね、みたいなデッキ。でもコンボ決まるまでの展開が遅すぎ。クリーチャー除去能力にも乏しいしなあ。やっぱりニコル・ボラス入れてリアニメートでしょ。青黒ならまずMindbombで2ターン目Shallow Graveで、それからぼちぼち吐息盗人の墓所が出てくると。うーん、つくってみるか(笑) でもまずニコル・ボラスくん集めないと。


【3月6日(木)】

 7時半、早稲田のスタジオハードで香山リカさんとエヴァ対談。例のソフトバンクのサターン版エヴァ2攻略本の仕事。香山さんはあんまりエヴァ好きじゃないみたいで、やや盛り上がりに欠ける内容でしたが(アニメには触れずにゲームの話だけに限ってくださいと言われてもなあ)、まあなんとかなるでしょ。なんかしゃべる仕事ばかりしている気がするな、しかし(笑)

 あーでも、アダルトサイト展望的な取材を受けた週刊現代のグラビアページでは、なんの断わりもなく、あたかも署名原稿のような体裁で文章が載ってて怒り爆発。ヲレはあんなおやぢな文章は書けないぞ(ってちゃんと読んでないけどさ)。せめて最後に(談)くらいつけてくれればいいだろうによ。文章売って生活してるんだから、ああいうことされるとすげえ迷惑なのである。思わず抗議の電話を入れようかと思ったけど、まあもう出ちゃったからいいや。相手が週刊誌のときは念には念を入れてチェックしなきゃだめってことですね。


【3月7日(金)〜8日(土)】

 レイモンの翻訳仕上げとSFマガジンの森下インタビュー原稿まとめ。SFマガジン5月号はなんかたいへんなことになってるらしい(笑)
 それにしても、「この十年のSFはみんなクズだった」説が一人歩きするのはよくないと言いつつ、けっこうストレートに反応する人が多いのは謎。あそこでゆってるのはもっと商業的な問題だと思うんだけどな。梅原説をとるか、売れなくてもいいんだと開き直るか、どちかでしょう。わたしは、「売れなくてもいいけど、もうちょっと売れてほしい」だが(笑)
 文庫で3万部売れれば文句はない、2万部切るとちょっと苦しい――というか、SF翻訳では食えないよね。SF作家ではもっと食えない。


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