【6月18日(火)】

 お昼に起きて「ジャイアント・ピーチ」@六本木ブエナビスタ。そうか、ロアルド・ダールの「お化け桃の冒険」が原作だったのか。どうせなら「チョコレート工場の秘密」にしてほしかったけどまあいいや。「ナイトメア」よりはちょっと落ちるけど、やっぱりヘンリー・セリックはえらいね。
 ABCに寄って評論社で出ている原作をさがしたけど見つからず、映画タイアップの絵本とダールの娘の書いたエッセイを買って、マクドナルドで原稿を書く。

 夕方帰って、8時ぐらいから死んだように眠る。


【6月19日(水)】

 午前4時半起床。朝からビルディで仕事。「ガメラ2」の試写が今日からだと判明したので、貫井くんちに逗留中の我孫子さんに電話して教えてあげる。論座は「ジャイアント・ピーチ」で書くつもりだったけど、なんか夏公開が年内にのびちゃったみたいなので(そういえばナイトメアのときもけっきょく一年のびたんだよな)、急遽「G2」に変更することに決定。
 一時の回の試写を東宝本社で見て(最前列に開田裕治夫妻がすわってました)、コリドー街のPRONTOで原稿を書いてNIFTY-Serveにメール送稿。5時に東宝まで引き返して、3時半の試写を見て出てきた我孫子さんをキャッチ。貫井くん、加納朋子さんもいっしょ。加納さんは映画を見終えてから、
「ガメラっていいひとだったんですね」と言ったらしい(笑)

 四人で第一ホテル東京まで歩く。今日は推理作家協会賞授賞パーティなのである。まだ一時間近くあるのに、ラウンジにはすでに関係者の山。今日のスペシャルなゲストは、関口巽のモデルになった人物(京極さんの古い友人)と京極さんの奥さん。しかしこのへんは公人なのか私人なのかよくわからないない。すくなくとも関口モデル氏は本人がけっこうそれをウリにしてるみたいなので(笑)半分公人のような気もする。なんか宅八郎を暗くしたように見えましたが、あんまりちゃんとしゃべっていないのでよくわかりません。
 会場は例によって大混雑。しかし『ソリトン』が受賞したというのにSF関係者は少ない。眉村卓、田中光二をべつにすると、柴野さん夫妻くらいでは。結局、人脈の世界だからなあ。まあ梅原さんの場合、セミナーでのSF原理主義発言が誇大に伝わってるような気もする……が、本人を前にするとあまり誇大でもなかったりするのでしょうがないか(笑)

 梅原さんの受賞挨拶の中に、
「三冊目の作品でこのような賞がいただけたということは、わたくしもまんざら才能がないわけではなかったと励まされる思いで……」
 とかなんとかいうくだりがあり、あとで「なんで三冊目なの?」と話題になってましたが、エニックス文庫読んでる人はやっぱり少ないだろうな。しかしあれがデビュー作であることを隠蔽しない態度は立派かも。階層宇宙シリーズみたいでおれはちょっと好きなんだけどさ。

 東野圭吾氏が来てるということで、宇山さんに紹介され、例の『どちらかが彼女を殺した』問題について語る。結末のサプライズをバラしているということでは、わたしも我孫子さんと同罪なんですが、WWW日記にネタが割ってあることを理由に、書評でそのことをバラしてもかまわないんだ的コンセンサスが生まれることを東野さんは心配しているらしい。まあそれは杞憂としても、知らずに読んだときに比べれば結末の効果が著しく減殺されることは否めないからなあ。とはいえ、そのことを伏せたままだと紹介するのがたいへんだし。個人的には、たとえば『殺戮にいたる病』の結末をバラすのとはレベルが違う問題じゃないかという気がするんですが。
 それにしても東野さんはそのまま二時間ドラマの主役が張れそうないい男である。

 一次会終了後は、三カ所に分かれて二次会。とりあえずソノラマ/角川共催の梅原祝賀会の場所がいちばん近いので、香山二三郎、西上心太、阿部・竹内のSFM/HMM両編集長とともにエルへ。ひさしぶりに来たら新人のおねーちゃんがえらく胸のあいた(布地と皮膚のあいだに5センチくらい隙間がある)ドレスを着てたので思わずまじまじ見てしまいました。っておれはおやぢか。まあ四捨五入して40だからしょうがない。
 エルの客は、ソノラマ、角川、アスキー第六書籍の各編集者が梅原さんを囲んでいる状態。あ、徳間の関さんもいたな。レコード業界のプロデューサー系ファッション(笑)
 梅原さんの二次会挨拶はいきなり、
「わたしも本当ならSF作家と名乗りたいのですが、いまのSF界はよそ者に侵略されていますっ! あんな前衛文学をわたしはSFとは認めません!」
 と飛ばす飛ばす。となりが阿部さんだったので、「どうですか、よそ者雑誌の編集長としては?」と水を向けたりする俺。しかし「OKAGE」が連載されたりするんだから、よそ者ばっかりじゃないよね。という話から編集長としばしOKAGE論争。
 とかしてると、新津きよみさんと柴田よしきさんが到着、竹内編集長がおなじテーブルに招く。まずいんじゃないかと思ったんですけど、西上/香山両評論家は柴田さんのことを編集者だと思ってたらしく、あとで気がついて
「あちゃー、名刺わたしちゃったよ」とか焦ってましたが、書評でけなした本の著者と同席するってのはたしかに気まずいかも(笑) かめちゃんと同席させるのがいちばん面白そうだけどな。わたしは読んでないから関係ないのである。ふふ。
 新津さんはさすがに強力で、言葉の端々に毒性の重量感がうかがえる。好きかも。
 そういえばカウンターには鈴木輝一郎氏も来てたのでちょっと挨拶したら、翌日インターネットメールが来ててびっくり。輝一郎ホームページができたら超パワフルだろうなあ。がんばってつくってください。宣伝ならやっぱりインターネットですよ>鈴木様。

 一時間くらいエルにいてSF者としての義理(?)を果たしてから、京極祝賀会会場の銀座・胡椒亭に移動(もう一個の宴会は短編賞の黒川博行さんとこなんですが、面識ないし受賞作読んでないのでパス。新潮ミステリー倶楽部から出る今度の長篇はかなりいいらしいっす)。
 こちらは評論家がほとんどいなくて作家と編集者の山。作家率が異様に高いのが特徴ですね。花村萬月氏がいたのは大沢さんのラインかな。新本格系作家で大沢オフィスに所属となれば、人脈的には完璧かも。
 小森健太朗氏は美人のフィアンセ連れで、この人がまた強力。ハンドバッグ持って踊ってそうな雰囲気で、カラオケの話を振ったらやっぱり小室系でした。小森さんはカラオケ行かないそうなので、今度ぜひご一緒しましょう。と小森さんに伝えてもしっかりガードされそうだな(笑)

 3次会は宇山さん行きつけのパスポート。前にここに来たのはなんのときだったのか、もはや思い出せない。笠井さんと隣同士になったので、最近の日本SF問題について議論。またしてもOKAGEの話題になる。しかし評論家として問題を指摘するより、はやく「無底の王」を出してほしいんですけど。
 笠井さんには、「大森望は新本格の内藤陳である」的なことを言われてやや心外。まあ最低でも2、30枚書かないと評論にならないのは当然であるにしても、「理屈抜きに面白い」派とは敵対してるつもりなんですが。そりゃ本格系マニアとはモノサシが違うけど、一応モノサシはあるつもりなので。まあしかし、SF以外の作品については基本的に好きなものしか書評しないから、必殺おすすめ人に見えるのかもしれない。ううむ。あとは本格系の教養が圧倒的に不足している分、歴史的視野に立って作品を分類することが不可能だって事情もあるな。
 書評はそれでいい(面白いものを面白いと推薦すればいい)というのが笠井さんの基本的な立場みたいだけど、大森がSF書評でやってることはそれと鋭く対立するような気もする。いや、いちばん鋭く対立するのは高橋良平か。

 あとの話題はやっぱり清涼院流水。原稿段階からかなり手が入ってどんどんまともになってるという話なのでちょっと心配。タイトルも変わるみたいですが、どうなることやら。どうせ売り出すなら、デビュー前にまず他人の本の推薦文を書かせて、メフィストでグラビア特集を組み、「清涼院, WHO?」をさんざん盛り上げてからどどーんと本を出すってのがいいと思うんだけどなあ。

 四次会はパスポートのとなりのビルのBeMAX(BMB系)。パーティルームはめちゃめちゃ広くて快適。懐メロ縛りに突入、京極さんは「安来節」で新境地を開拓(笑) わたしは法月さんと「恋する夏の日」をデュエットしました(謎)。綾辻さんは替え歌シリーズ。名作「バビル二世」とかね。水晶のピラミッドに住んでる人が「三つのしもべ」に命令するんですな。怪鳥アヤツジ空を飛べ、リンタローは海をゆけ、タケマル変身、地を駆けろ! 法月さんの新作「絶体絶命」も磨けば傑作になりそう。清涼院ソングをはやくつくっていただきたいものである。
 

【6月20日(木)】

 死にそうな状態で1時に起きる。眠い。
 8時間近く寝たんだろうがよ、おめーはよ。と自分に言い聞かせて起き、半分眠ったままWOWOW。会議のあと、八丁堀の桜川公園のベンチで2時間昼寝。すげー気持ちいいかも(笑) 
 近くのコロラドで書評用の本を読みかけたけどやっぱり眠いので西葛西にもどり、仕事をしかけたけど眠いのであきらめて家に帰って寝る。


【6月21日(金)】

 午前3時半起床。こんなことなら昨日WOWOWをパスして夕方まで寝てればよかったんだよな。24時間起きてたあとは12時間睡眠必須。
 ジョナサンに行ってアニメージュの原稿。ちょうどいい本が見つからないので、いまごろ「軌道通信」。やっぱり「アインシュタイン交点」だったかなあ。しかしアニメージュだからなあ。ううむ。
 ではこれからリトル東京のオフに行ってきます。その模様は次回。ぢゃ。


日記の目次にもどる

ホームページにもどる

リトル東京ページにもどる